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三百一話


「ま、偵察程度なら俺もしてやるよ。どうせ俺はLv上限だしよ」

「無茶するなよ? これが終わったら女と楽しいことをするつもりだろ?」

「変なフラグを立てさせようとすんな。おめーは俺を死なせてえのか」

「悪食に狙われたもんな? どうだった?」

「てめえ忘れちゃいねえからな? 悪食に悪ノリする寄生生物がよ」


 気にしてんだからいちいち指摘するんじゃねっての。


「手短に戦力アップとか出来たらいいんだけどよ」

「なーユキカズ? ムーイ、エミールの戦いを見て気になることがあるから聞いて良いか?」

「なんだ?」


 こういう時のムーイの好奇心は何かに使えるアイデアが出てくることがあるのが怖いな。

 エミールで何が出来るんだ?


「な、なんだな?」


 とはいえエミールは若干おびえてるんだけどさ。

 色々と俺がいたずらというか構う所為かなー……嫌がってる訳じゃないってエミールは言ってるけど。


「ユキカズ、前に空飛ぶ植物へ進化出来るって言ってたのあっただろー? それに進化してエミールの力を受けるとどうなるんだ?」

「ああ、フロートツリーだったか? パラサイトへの進化するかの所であった」


 サーベイランスアイからの派生進化にあったっけ植物の因子を得て浮遊する植物になるって奴。

 エミールのスキルはいばらの魔女で植物を呼び出す。知っている植物を生やしたり操作できる訳だから俺が植物の因子を持っていたら確かに何かが起こる可能性はある。

 よく覚えてたなそんな進化。すっかり忘れてたぞ。


「あ? んな進化出来るならカエルの奥の手をそのままさせりゃ強いんじゃねえの?」


 健人が名案だとばかりにぶっぱなす。


「フレンシア・アルノシェードか……確かにユキカズがその花粉を使いこなせるのならば今後の戦いにおいて有利になるのは間違いない。だが……下手をすれば塗り替えになり自我が消えるかもしれない」


 ヴァイリオ? かなり怖い事言わないでくれないか?


「なんだな……ユキカズの兄貴、やるんだな?」

「いや、ムーイはエミールの力を植物化した俺に施したらどうなるかって案で、健人のは奥の手に俺がなって任意変身できるかって事だろ」

「んー……それはうまく行かない気がするぞ」


 天才スキル持ちのムーイが直感を働かせるって事はうまく行かないんだろうなぁ。

 ただ、下手にLv上げとか行く余裕のない現状だと急成長とか出来そうな案であるのは間違いない。

 問題はサーベイランスアイにはパラサイトに進化する時に代わって以来使ってないので多少稼ぎに行かなきゃいけない。

 俺の機動力でダンジョンないし近隣の魔物を狩って進化してくるって手もなくは無いが……。

 いや……ヴァイリオから得た魔素というか力がまだ体内にあるのでこれくらいはすぐに進化出来るか。

 ターミナルにアクセスして、サーベイランスアイに変身……からのターミナルでフロートツリーに進化。

 ズズズ……と下半身の一部が植物の根っこに変化する。


「これで良いか? ああ、エミール。実験だ」

「わ、わかったんだな。少しだけユキカズの兄貴に何か掛けれそうな気がするんだな」


 エミールが俺に向けて手をかざすと……お? 何やら力が発せられる気配がする。

 ムーイのスキルを仮に受けたらこんな感じなのかねー?

 いや……ムーイに寄生した際の感覚にも似てるような気がするぞ? 気のせいか?

 その流れを抵抗せずに受け止める。

 ググっと少し力が増した気がする。進化したような……? 根っこが触手というかバラの蔓に変わった?


「はぁ……はぁ……力が凄く減るんだな。入れても入れても入っていく植物さんなんだなユキカズの兄貴。ど、どうなんだな?」

「なんか、少し力が増して進化したような?」


 で、ステータスを確認するとミュータントローズって植物系の目玉がある魔物へと進化してはいた。

 が……エミールが魔力の放出をやめるとフロートツリーに戻る。


「一時的に進化は出来るみたいだ。ただ……ミュータントローズはそこまで強い魔物じゃないから今のままの方が強い」


 劇的な変化や強化にはつながらないみたいだ。

 単純にエミールが強くなれば俺への強化に使えなくはないかもしれない。

 けどフレンシア・アルノシェードになるのは無理か。


「よくわかったぞーという事はエミールにユキカズが寄生した時に使えばもっとうまく使えるんじゃないかと思う」


 そうポンポン運用法が閃くムーイは実に戦いの申し子って思ってしまうなぁ。


「オデの力が持たないんだな」

「でもユキカズの尻尾と目、それと蔓を出して相手を縛り付けたり毒を使えるから知ってると何かの役に立つかもしれないぞ」

「かー実に化け物だぜ」


 健人、お前は会話に入らないでくれ。


「うーん……それよりも抜本的な何かが出来れば良いと思う。こう……俺が保管している力の源をそれぞれ組み合わせて新しい力を出すみたいにさ」


 エミールで実験した際にやったじゃないか。お菓子の魔女って感じで。


「新しい力の源もあるし、組み合わせ次第で能力が変化するだろ」

「えー……」

「なんだな……」


 そう返答するとムーイもエミールも渋い。

 まあ……わかるよ? 町に襲撃してきた連中から得た力の源ってだけで良い印象は持ってないってさ。

 しかも食性の変化という影響も大きい訳で。

 ムーイは潔癖な所があるから力の源を欲しない。

 エミールは手伝っただけで素直に受け取らないし。


「今回のMVPにエミールがいるから譲渡だな」

「嫌なんだな。オデやクコクコの姉貴達を食べたいって襲ってきたアイツみたいになりたくないんだな」


 ああ、厄介かな迷宮種の食性。

 強くなる代わりに守らなきゃいけない者たちが美味しそうと感じてしまうか。


「ふふ……力を欲する迷宮種故の悩みか、世話をしているからこそ苦労するなユキカズ」


 ヴァイリオ、俺たちのやり取りを微笑ましいって思いながら見ないでくれない?

 力の源は時間を掛ければ消化できるみたいだし、それまで我慢すれば食性も落ち着きそうではあるけれどフレーディンの例から付け焼刃でバランスが著しく崩れる可能性もある。


「ここは年長者って事でオウセラに渡せれば良いんだがなー……」


 少ししか話してないけど少なくとも迷宮種の大先輩だろ?

 ラウとムーイがセットだけど。

 うまい組み合わせとかスキルで理解して使いこなせそうではある。

 ……考えておこう。

 俺がそっと力の源を渡すって手もあるし。





「それは避けた方がよくねえか? 味方ではあるだろうけどラウの自我が消滅とかありそうじゃねえか」

「きゅ?」


 確かにありそうな代償だよなー。


「下手すりゃオウセラでも耐え切れず暴走とか、仕留めた迷宮種が復活だってあり得るぜ?」

「ムーイがそんな事させないぞー」


 そりゃあ肉体はムーイであるんだろうけどさ。

 オウセラが出ている時は乗っ取られているような状態だったじゃないか。

 とは思うが、あんまりよくないのも事実か。


「結局、俺がしばらく預かるで良いか」


 どうもどんどん俺の中に迷宮種たちの力の源が溜まって行ってるなー……まあ、俺は迷宮種じゃないから乗っ取られるって事は無いから良いんだけどさ。

 あまり出力を上げすぎるとムーイは元よりエミールとだって寄生出来なくなる可能性が増すんだが。


「どうにかムーイたちの食性に影響を与えずに処理出来たら良いんだけどさ」

「処理が出来なくはないが……今できる事ではない。まあ、仮にすぐに出来てもいざという時に困る事態になりかねんだろう。今は持っているのが良い」

「あ? 処理出来んのかよ」


 健人がヴァイリオに顔を向ける。

 そこでみんな揃ってヴァイリオに視線が向かっていった。

 あー……そうだった。俺は昨日解析でわかった事だけどみんなは知らないことだったか。


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