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二十八話

「よし!」


 フラフラと辺りを見渡しながら動かれると、こっちも行動がし辛い。

 どちらにしても仕留めた方が効率的だった。

 とは思うのだけど……なんだろう、登下校中のシマウマが人気のない道で何かに脅えるCMを思い出す。

 別に関係ないけど犯罪者な気分だ。

 えーしー。


「楽勝みたいだな」

「ですね」

「ブ!」


 ムキっとブルが力こぶを出すようなポーズを見せた。


「ブーブーブー」

「ん? どうした?」


 ブルがフライアイボールの死骸を何やら指示している。

 それから振り下ろす動作。

 武器を背負ってパンチ……。

 で、力こぶ。


「武器を使うまでも無い」


 首を横に振られた。


「楽勝」


 またもや振られた……細かい説明となると察するのが難しいな。


「Lvアップ」

「ブ!」


 それって感じか。


「Lvアップの影響で凄い楽?」

「ブー!」


 大正解って感じで跳ねる。

 ふむ……どうやら俺達は経験値汚染の影響でブル曰く、相当強くなったようだ。

 そりゃあ本来は魔導兵とか竜騎兵じゃないと倒せないと言われたオルトロスを二匹仕留めて流れ込んだ経験値があるわけだしな。

 パワーレベリングも良いところだろう。

 俺達がどれくらい強くなったのかも数値で分かればいいんだけどな……その点で言えばターミナルとかを見つけられたらいいか。


 ……そう都合よくあるわけないか。

 どこかで野たれ死んだ冒険者を探して死体からカードを見つけた方が賢明だ。

 いるか分からないし、認証の問題もありそうだけど。


 その後はフライアイボールの死体を茂みに埋める。

 水晶体辺りが錬金術か何かで使う素材らしいけど俺達が持っていける荷物はそんなに多くない。

 毒もあるそうだし、解体とかしていたら思わぬ敵に不意打ちされかねない。

 魔石を採取するのが精々だ。


「あのー……ここの茂みに薬草が生えてましたよ? 後、薬になるキノコもありました」

「おお!」


 フィリンが割と手慣れた様子で薬草……ムーンライオとナイトウェールというキノコを見せてくれる。

 ……確か買い取り金額が相当高い薬草類だ。

 栽培が難しいのが理由だったはず。


「本で調合で使うって読んだけどなんだったかなー……」

「ムーンライオは上級傷薬と魔法薬に、ナイトウェールは粉末にして散布すると睡眠効果に、生で食べるとお腹を壊すがスタミナがしばらく持続して眠れなくなるだったかと思います」


 ああー……前者は高い薬草で、後者はハンティングゲームの眠り効果のあるキノコみたいだとか思った覚えがある。

 なるほどなるほど。


「この二つは調合すると魔力回復の効果がある薬になったと思いますが……」


 今の俺達に魔法が使える人はいないんだよねー。


「とは言え、何かの役に立つかもしれないから確保していこう」

「はい」


 なんて感じに警戒しつつ進む。

 やがて……。


「宝箱があるな」


 フライアイボールの群れとは反対側に向かったわけだけど、やや広めの場所に出る。

 辺りを見渡す限りだと魔物の影は一応、ない。


 そんなフロアの端の方にポツーンと宝箱が置かれている。

 確かダンジョンで見つかる宝箱って階層の形状が変わると突如出現したりするんだったか。

 どんな法則なのか実のところよくわかっていない物も多い。

 ダンジョンが生み出すとか、時空間のどこからか流れ込むとか色々と言われている。


 とりあえず……今は宝箱のチェックか。

 ミミックだったら嫌だな。

 後は罠か。

 道中でもそこそこ罠があったっけ。

 キノコ型の罠が目立った気がする。


 幸いにして上手く解除というか切除して持ってきたけどさ。

 混乱効果のあるオオコンヒューマインダケっていう平べったいキノコ。踏むと上に胞子が飛び散って吸うと意識が混濁する。

 見えるものがちぐはぐになって、下手をするとそのまま昏倒してキノコの苗床になってしまう恐ろしいキノコだ。

 上手く切除して調合に使用する予定になっている。


 訓練校時代に学んだ知識が色々と役に立つね。

 ちなみにブルがキノコをよく見つける。

 やはり豚だからだろうか。


「移動前に話しましたけど……鑑定をしてみますね」

「ブー」


 フィリンとブルが揃って宝箱をチェックする。


「これは罠のワイヤー? いや、蝶番……? 無造作に設置されていて、固定はされてませんね」

「ブー……? ブー」

「箱は木製、10階以降のダンジョンで見つかる宝箱の法則からすると重要度は低め扱いになるはず」


 なんて様子でフィリンとブルが宝箱を重点的にチェックした後、俺の方を向いた。


「たぶん、罠は無いと思います」

「ブー」

「了解……とりあえず草で結った紐を蓋に引っかけて離れて開けてみよう」


 そんなわけで俺達は紐を引っかけてから離れて引っ張った。

 ガタっと音を立てて宝箱が開く。


 ……特に煙や矢等が飛び出す気配は無い。

 どうやらタダの箱だったようだ。


 近づいて中身を確認する。

 中身はー……鎖?


「なんで鎖? ハズレかな?」

「いえ、これは……」


 フィリンが徐に鎖を取り出して掲げる。


「フックですね。道具屋で見た事があります。ほら、先端に加工された魔石が引っ付いています。投擲修練を所持するユキカズさんが使用すると良いかもしれませんよ」

「へえ……」


 鎖を持って投擲スキルで先端を投げる。

 すると草むらに向かって鎖が飛んでいって、草に引っ付いた。

 強く引っ張っても取れない。


「手元にある輪の一つ、色が違う奴を捻ってみてください」

「あ、うん」


 言われるままに色の違う輪を一回転させると引っ付いていた鎖の先端が離れる。

 そのまま手繰り寄せる。


「本来は縄で作られた物で戦闘用ではないですね。金属製の鎖となると別の用途に使えるかもしれません」

「うーん……そこそこ優秀に見えるけどなー」


 箱を開けて強引に罠を発動させる時にでも使うか。

 縄であるはずが鎖に意味を見出すとしたら深い階層だからとかかな?

 レアアイテムじゃないけど、良い物が出る微妙にゲームっぽい法則的な感じ。

 いざって時にアクロバットに使用できたら良いな。

 武器にするには些か心もとないか?

 ……?


「これを何か重たい物を引っ付けてブルに振りまわしてもらえばモーニングスターにできそうだなぁ」

「確かにそういった使い方はできそうですね」

「ブ?」


 腕力のあるブルに全部頼り切った戦い方になりそう。

 とは言え、色々と使い道がありそうなので持っていこう。


「後は箱か……中に入ってやり過ごすとかに使えないかな?」

「少々小さくないでしょうか?」


 確かに、一人なら辛うじて入れるかもしれないけど三人となると無理だ。

 鎧の代わりには……ならなそう。


「じゃあ薪代わりに使わせてもらおう」

「ブー!」


 任せろ! といった様子でブルが力の限り木箱をピッケルで割る。

 バキバキとまるでポテトチップスみたいに割っていくけど、木材ってそんな柔らかいっけ?

 オルトロスの牙が強力なのか、はたまたブルが怪力なのか。


「後は……大型の魔物に気を付けて道を選んで行きましょう」

「そうだね」


 ダンジョンの構造なのか道幅が広い所と狭い場所がある。

 狭い場所にはオルトロスのような大型の魔物が入りこみ辛い。

 上手く利用して魔物をやり過ごすのは得策だね。

 そんなわけで鎖を携帯して通路を進んでいく。


「ところでダンジョンって一階毎にどれくらいの広さがあるんだっけ?」

「ここは大迷宮ですからね……地図が無い状態で彷徨うとすると……端から端まで測定しようとして一カ月以上彷徨った例もあるみたいですよ」


 うげぇ……当ても無く彷徨うのは些か現実的ではないな。


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[一言] ナイトウェールの生、媚薬として出てきそう
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