二百七十九話
な……消えるってどういうことだ!?
と、それから何回か意味を尋ねたけれど声は全く答えなかった。
くっそ……思わせぶりな事を言いやがって。
次の戦いが迫っているって意味が非常に不吉で嫌らしい。
悠長にLv上げをして聖獣に挑むなんてさせてくれないって事か。
Lvでごり押し出来るだけの余裕があれば俺たちとしては楽だが見てるやつは面白くない法則……嫌な話だ。
そもそも俺の進化先がどれも微妙って所がどうなんだ?
やはり何かしら特化で進化していくのが良いと? どこかで壁に当たって結局優柔不断に進化を繰り返して手札を増やすしかないというのに。
それとも……もっと劇的な何かが既に手札にあるとか?
はあ……どうにも強くなった気がしないのはなんでなんだろう。
「お父さんとうしたっきゅ?」
「んんや? 何でもないさ」
ラウが考え込んでいる俺に小首を傾げて尋ねてくる。
あんまり心配させるのはよくないね。
「ラウはどう? なんかわかったかい?」
「神々の黄昏……実に傲慢な名を冠した代物のようっきゅ。これは作り手の自称?」
ぼんやりとした瞳になってラウは呟いた。
神々の黄昏ねー。
「ゲームとかだと有名だけどさ」
「ここでも神様ってか?」
「解読してもまだよくわからない。そもそもなんで神獣の力を持っているか、迷宮種を支配しているのかとかまるで分らんし」
「手だてはあるけど進化が満たせねーってのは面倒くせえな」
「それこそ聖獣の試練を乗り越えて知ってそうな神って奴に問い詰めたほうが早そうだ」
「ま、進化できねえってならそっちが良いだろ。いい加減フラフラせずにスライム系を伸ばしてムーイの力を引き出せば良いだろ」
結局そこが一番かなー……ムーイのお陰でいろいろと能力上昇が出来るならムーイの性能を極限まで引き出せば良い。
「神獣の申し子様ってのも大変ねー」
「聖獣様に挑んで勝利を収められるか……」
リイたちは戦いには加わらずに異常事態の報告が目的だ。
まあ……ムーイやエミール、健人と頑張って試練を乗り越えるのが近道だ。
「進化でどんどん伸ばしていくのは良いけど何処まで伸びるんだろうな?」
「さあな……スライム系の上位種ってどんなのがあったか」
キラーブロブコアとキラーヒュージブロブコアも実は進化先に存在した。
ただ……亜種進化なんだよね。
バリエーションって扱いかな。
単純に強くなりそうなスライム系の進化を選ばないとなぁ。
ちなみにハイスライムコア辺りからウォーターエレメンタルアイという水に特化した精霊系への特殊進化も派生先にある。
ただ……結局目玉はあるみたいなのがね。
これがスライム系のゲイザー枠である特殊進化のようだ。
「そりゃあ金属スライムじゃね? ねえの?」
「あるけど水銀かラーヴァスライムコアとかだぞ?」
「魔法に完全耐性のある強靭な金属スライムじゃねえの? 倒したら膨大な経験値をくれるやつー」
「ゲーム脳すぎるぞ!」
俺と健人の言い合いをムーイたち外野がキョロキョロと見合っている。
話に入り込めないのは分かる。知ってないと無理だよね。
後で照射を使って教えよう。今の俺ならテーブルトークのメモさえあればみんなにゲームをしてもらう事だって可能だからね。
某大作RPGを照射で再現して夢中にさせられるかな?
「スライムの上位と言ったら金属スライム。これ一強だろ。戦った事あるぞ、メタルリキッド」
「健人、一つ大事な事を教えてやろう」
「なんだ?」
「俺が進化しているのはコアであって実の方じゃない。そして金属装甲はムーイの耐性面が優秀なので不要だ」
全耐性を所持するムーイは生半可な攻撃を受け止めてしまうぞ?
「……」
健人がムーイの方をじっと見つめてくる。
「え、えへへ」
俺も見てるとムーイが照れ始めた。
うん……お前って本当、無駄がないとしか言いようがないほど強い可能性を秘めてるよ。
「スライム系の進化を進めればそりゃあムーイの操作反応は上げれるけれどムーイ本人以上の性能を引き出せるかと言うと……」
例えば人間って体が壊れないように力をセーブして活動している。そこを弄ってセーブを解除して戦えばそりゃあ相当な攻撃が出来るだろう。
戦士系の技能にオーバートラストやウォークライってスキルがその辺りの枷を一時的に外す代物だったはず。
ブルが力貯めして斧を振りかぶるのもこれの一種だ。
けどムーイはその強靭な自己再生能力とエネルギーの暴力によって常に100%以上の力で相手を叩きのめすことに匹敵する攻撃が出来ると思う。
必要なのはエネルギーと寄生している俺の耐久性能、スライムコアへの進化はエネルギー効率が上がるって側面が大きいな。
「だからスライム系特化で単純に強そうな進化を伸ばすのがグレムリンルートが行き詰った今すると良い進化だ。進化条件が強いスライムへの寄生とかならクリア出来てそうだし」
ムーイを強いスライムだって認識しているっぽいからね。
壁はそこまで無いだろう。
「ま……そうならそれで良いんじゃね?」
「きゅ? お母さん、もっとお父さんが強くなる方法無いっきゅ?」
「ん? えっとなーユキカズがー預けたムーイを苗床に進化するともっと強くなれると思うぞー」
……それをしたくないから進化してるんだよ。
とは何度も伝えてあるんだけどさ。
「それでいいっきゅ?」
「ダメ」
「ま……さすがにその手は俺もどうかと思うぜ」
「兄貴が嫌でムーイを大切にしてるって事なんだな」
「うん。だけどムーイと馴染めばもっと力が出せるんじゃないかって思っただけー」
手段を択ばなければね。
思えばパラサイトへと進化するときも最初は却下したんだった。
……ムーイの勘って当たるからいずれしなくちゃいけない事態とか来るんだろうか。
できれば無い方向で行きたい。
「何にしても雪一、お前とムーイのお陰でここのダンジョンも相当深い所まで行けて良い装備が見つかったのは収穫だぜ」
健人用に使えそうな槍が見つかった。
グローリーランスのプラス値8という代物でオプションに風属性が付いた代物だ。
ついでに俺の刻印付与で速度増加を施したので健人もかなり強くなれたっぽい。
それに近い装備もそこそこ見つかった。
エミールを魔法使いコスに、ラウを賢者コスにさせるくらいには色々と防具も見つかったし、遠征は成功の分類だろう。
「ま、そろそろ引き上げようか……なんか嫌な予感がするから町の方に早く帰りたい」
「そんな気配するか?」
健人の野生の勘すら発動してないとなると気が早いか。
まあ、神って奴が匂わせただけなんだけど早めに行動した方が良いのは間違い無い。
ラウも遠征で疲れが出るだろうし。
この短い期間に随分と成長したように見えるけどね。
「帰りもそこそこ戦って次の進化くらいは出来るだろうさ。Lvアップは早いんでね」
「ま、それで良いってんなら分かったぜ」
と言う訳で帰りがけに遭遇する魔物を仕留めていたらあっという間にLvが進化可能な所まで上がった。
ムーイの経験値補正は多くて助かる。しかもムーイ特化のスライム進化をしていると単純に強さもムーイに徐々に近づいてる感じがしてきた。
エネルギーを効率良くムーイに流せるようになってきたようだ。
スライムデビルコアから良さそうな進化として色違いの進化も何個か経由した所でゼラチンマスターコアと言う所まで進化出来た。
案の定、上位スライムへの寄生って要素が介在したんだけどクリアしていた。
他にも解析が必要であるはずなのにバグなのかクリア表示で進化可能だったのは何故だろ?
何にしてもこれがスライムのゲイザー枠並のステータスをした進化なので迷わず進化をした。
ゼラチンマスターコア Lv1
固有能力 ゼラチン寄生 宿主経験値&Lv強奪 魔力吸引 生命力吸収 粘液干渉 感覚・思考制御 増殖促進 超強酸 酸性強化 司令指示加速 宿主改造 遠隔操作範囲拡大 強雷撃 魔法反射膜展開 古の魔法 衝撃耐性(特大) 自動回復(大) 魔力回復(小) 水耐性(大) 魔眼
Lv40になった時……自己再生





