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二百七十四話


「むしろムーイの強化に力入れたほうが早いんじゃねえのか? 迷宮種の力の源集めてよ」

「そうなると今度は俺の体が耐えきれない。ムーイは好き嫌い激しくて力の源を受け取らないからな。無理強いするか?」


 健人がチラッとムーイの方を見てから俺へと視線を戻す。


「……マジで箸にも棒にも乗らねえな。お前」

「うるせー」


 ムーイを責めるって発想にはならない所は徹底してるな健人。

 良い女認定されたムーイは責められなくて羨ましい事で。


「んじゃカエルに迷宮種を狩って超絶パワーアップでもして戦ってもらうか? おい」

「お、オデも困るんだな。兄貴みたいになりたくないんだな」

「迷宮種故の力の源の相性があるからなぁ」


 相性の良くない力の源の接種は本人の人格に歪みが発生するっぽい。

 だからこそムーイもエミールも力の源を直接得るって事は避けているんだし。

 本能では欲しているらしいんだけどさ。

 俺を介することでそこは解決……してるのかな。


「難儀な生き物だぜ迷宮種ってのは、ムーイは物の本質を見極めるのが得意なんだろ? 実際どうなんだ?」

「うーん……我慢すれば性格は良いような気はするけどどっちにしても力の源を取り込み終えて馴染まないといけないと思うぞ」


 ああ、ムーイの力の源も解れてカーラルジュに取り込まれそうにはなっていたんだったっけ。

 エミールの中にあるデリルインの力の源もそれだ。デリルインの場合はエミールと食性で相性が良かった事や当人の意識が開放的でエミールの中に入って行ったのもある。

 協力的じゃない場合の力の源は馴染むのに時間が掛るみたいだ。

 結局、時間が掛りそうってのが大きい。


「あ、でもムーイもエミールもユキカズのお陰で出会った時より力の源は同じでも体は強くなってるぞ」

「なんだな!」


 ここはエミールも同意とばかりに力強く頷く。


「食事で地味に強くなってんだったか?」

「そうだぞーユキカズのお菓子食べるだけで強くなったぞ」

「オデも兄貴が寄生する時にあの手この手で虫さんの種類や味を受けて力が増したのが分かるんだな」

「寄生してるって事は消化して強くなるわけじゃねえんだな。味ってだけか」

「エネルギーを流し込んでるから疑似的に消化してるようなもんなんだろ」


 そういった意味だとエミールの虫を食べることでの強化は俺で代用できるって点で良いのかもしれない。

 ムーイもエミールも強くなってはいるそうだけど、ステータスで明確に判断できないのは辛い所だ。


「話が脱線したな。進化の方向性は定めてんのか?」

「ゲイザー系をそのまま上げて行って強くなれると思うか? ラビュリントスイーターが幼獣だからそのまま成長していくってのもあるが」

「無難ってのは分かるけどよ。後者の方はお前の本体だがどうしたら進化するんだよ」

「知らね。ただなー……」


 ムーイとキスした際に何かこう……ゾクっと本能みたいな何かがあったんだ。

 このままラビュリントスイーターが進化したらとんでもないことになったりしないだろうな?

 名前的に迷宮を食らうものっぽい所が不吉だ。

 迷宮種を食う化け物に進化とかしたくない。


「ここはラウの不思議パワーで質問するってのはどうだ?」

「定義が広すぎてわからないっきゅ。そもそもお義父さんしか確認できないものっきゅ」


 最初からわからない質問すんなって感じか。


「まあ……とりあえず寄生中も変身は使用できる。状況次第で適した変身はしても良いと思うんだ。手札は大事だろ?」

「言わんとしてることは分かるような気はするがどういうことだ?」

「ゲイザーは確かに使いやすい変身ではある、汎用的だからな。だけど魔眼とか小細工が通じない場合もあるだろ」


 魔法の効きが悪いとかな。

 避けられるので当てられないって事は生憎、この体になる前から滅多にない。

 俺を選んだ神獣の加護って奴だ。

 魔眼自体はラビュリントスイーターでも使用可能なのでゲイザーとは別の姿でもある程度問題は無い。


「ムーイの体をより効率良く使うって方法で考察しているものがあったから今はそれをして見ようと思う」

「おー! ユキカズ、ムーイの体をもっと上手く使えるのがあったのか」

「前に進化先で相談した事あっただろ?」

「いつも相談してくれたぞ」

「そうだな。思えばムーイは昔から寄生案を言ってたな……」


 パラサイトの話が出た段階でそれが良いって言ってた。

 恐ろしい話だけどその頃からムーイは俺に寄生して欲しいと思って居たんだろうか。


「沢山相談した所為で分からないかと思うが俺がピンと来てる奴にこれから進化しようと思う。その為にはまずメガパラサイトに一旦戻ってLv上げをして進化だな」

「わかったぞー」

「ムーイの経験値増加を使えばあっさりと進化Lvまでは行けるはず、そんじゃ行ってくる」

「おうおう。頑張ってくれよ」


 そんな訳で方針を定めた俺は休憩を終えてムーイに寄生したまま戦いへと赴いた。

 ゲイザーではなくメガパラサイトなので魔眼と魔法は減衰してしまったけれどこれも実験の為だ。

 ムーイの怪力で戦い自体は苦も無く出来た。と言うかあんまり変わらず戦えた。

 力の源によるエネルギー供給は変わりが無いしラビュリントスイーターの部分はそのままだからだろう。

 そうして周辺の魔物を倒して経験値を稼いで日も沈んで来たので町に戻りがけのターミナルポイントで確認した所、あっさりと目標進化Lvに到達した。

 この伸びは非常に懐かしいなぁ。

 まだ寄生とか覚える前にムーイにLv上げを手伝って貰って居た頃と寄生してどうにかやりくりしていた頃を両方思い出した。

 あの頃は必死だったなぁ。

 何より、メガパラサイトだとゲイザーよりもLvの上がりが非常に早かった。


「よし、サクッとメガパラサイトの進化Lvに到達! 進化を選ぶぞ」

「ムーイを苗床にするんだな」

「何!? そうなのか?」


 健人がやらせん! って態度を見せる。

 エミールやラウ、リイとレルフィさんは……あ、特に反応が無いな。


「ムーイの姉貴、ユキカズの兄貴の事だからそれはしないと思うんだな」

「きゅ、お義母さん。お義父さんがそれをするのは最後の手段っきゅ。お義母さんを大事にしてるから補充出来ると言ってもしないっきゅよ」

「えー……」

「付き合いは短いですが神獣の申し子様はその辺り大事にする方ですよ」

「みんなの無事を最優先って感じだもんね」


 そりゃあ仲間は大事でしょ。

 みんなと仲良く冒険してるんだし。


「ラウやエミール達の言う通りだ。クリサリスにはならない」


 カーラルジュに使って無理矢理進化した奥の手ではあったけどコレの所為で面倒な事になったのも事実なんだ。

 強くはなれたけど呪われてしまったし、変化や進化に制限が掛かった。


「じゃあ何になるんだー?」

「そりゃあコレだよ」


 っと、俺はメガパラサイトからの進化先で存在した進化を照射して見せる。

 それはスライムコアだ。

 進化条件はLv30で液状生命への寄生が条件だった。


 ◆スライムコア

 液状生命を操作する寄生種。

 本体を攻撃されない限り戦い続けられる。

 進化条件……Lv30 液状生命への寄生


「スライムコアかー」

「なるほどな。ムーイは確かに元々そういった迷宮種なのは分かってるぜ」

「メガパラサイトの頃に進化候補にあったんだよ。ムーイを上手く使って戦うにはこっちも良いかと思ったけど手堅くギガパラサイトを選んだんだ」

「特化か無難な上位進化で後者を選んだんだよ。あの時にムーイをスライム系なのかって定義するのは危険だったからさ」

「ま、良いんじゃね? ムーイに特化したらすぐに本体とも寄生できたりしてな」

「そうだと良いけどな」


 そこまで話はうまくないと思う。


「と言うかスライムコアって寄生生物なのか? じゃあ元々のスライムにコアは無いと? 外側からのって考えると謎なんだが」

「細けえ野郎だな。まあ……この辺りは生物の授業で考えるとミトコンドリア辺りがスライムコアに該当するんじゃねえの? 単細胞のスライム単体でも活動出来るけどスライムコアと寄生や共生する事でより上位の個体に至れるってな」


 あー……日本での生物の授業ね。なんか教科書で見たような気がする。


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