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二百五十九話


「なるほど……その様な事が起っているのですね。この村では今の所そのような現象は起っていませんが警備を強化しようと思います」


 町長からの手紙を受け取った村長が事情を説明してくれる。

 何もないのは良い事なのだろうとは思うけど……。


「そう言えば……旅人の話で聖獣様が一体何者かに討伐されたとの話が流れております。神獣様が倒されたのでしょうか?」

「いえ、まだ挑戦してないですが」


 聖獣が倒された?

 健人みたいに誰かが挑んだって事か? それとも件の事件で聖獣がやられたのか?

 割とのんきな質問なので返答に困るぞ。


「ではもしかしたら勇敢な者が聖獣様に挑んで勝利したのかもしれませんね」

「はあ……ただ、倒されると挑んで神に会いたい俺は困るのですが……」

「ご安心を、聖獣様が認めるか仮に聖獣様を倒したといても聖獣様はしばしのお時間の後、神のお力で再度降臨する能力を持っておられるのです。再臨した聖獣様に挑戦するのが良いでしょう」


 ……そんな能力を持ってるのか。分身とかそんな感じなのかねー。

 俺とかも実は死んでも復活とかあるのか? いや、あの声の主の事だからきっと俺にはそんな能力は与えてない。

 何にしても復活能力持ちの聖獣なのね。知らなかった。

 とにかく手紙を届ける事が出来たし次の村へと行くかな?

 なんて考えて居るとオウルエンスの神殿みたいな建物がこの村にもあるようだった。


「神獣の申し子様、私たちの始祖を奉る神殿に興味がおありですか?」

「きゅー? お義父さん気になる?」

「少しね。オウルエンスの神殿は敵の襲撃を受けて半壊しているようでしたので」

「なるほど、では案内致しましょう」


 そんな訳で村長の案内で村の神殿に入る。

 神殿内はオウルエンスの神殿と似た作りをしていて、案内された先には先祖の像が安置されている。

 オウルエンスの神殿では大きなフクロウの像があったけどこっちは……アナグマらしき像が鎮座している。

 破壊された様子は無いが時間の経過による劣化は多少見受けられる。

 ここも何か隠しアイテムみたいなものがあるのかな?

 トランセンドシードが見つかったり。

 なんて思いながらしばらく像を見ていた所……ラウの持って居た玉から光が発せられて像の眉間に照射される。

 するとカッと目が光り……ゴゴゴと同様の玉が出てくる。


「これは……」

「わかりませんが私どもの先祖が神獣の申し子様方へ献上品をお送りしたと言う事だと思います」

「はあ……」


 で、トランセンドシードも後で出てくる。

 一応貰っていくけど良いのかなー?


「こう言った神殿は各地にあるのでしょうか?」

「そうですね。各種族の発祥の地にはあると思います」

「じゃあ神獣の眷属の村や町なんてのもあるのか。俺の場合は最後の神獣だそうだが」

「えー……神獣様によりますが、最後の神獣様は人種の眷属はおりません。大きな目が特徴の魔物が眷属と言われております」


 ああ……やっぱりその辺りになるのか。

 眷属の人種がどんなのか気になったけど居ないのは少し安心……なのかな?


「きゅー」

「そう言えばラウはオウルエンスの神殿で色々と見つけたっけな」

「そうっきゅ? ちょっとあの時の事は曖昧なのっきゅー……」


 ラウが頭を軽く掻きながら答える。

 曖昧って大丈夫なのか?


「ラウが持ってるその玉はその時に見つけたものだけど……大丈夫なのか?」

「大丈夫っきゅ! これを持ってると頭がスッキリして元気になるっきゅ」


 本当に大丈夫なのかちょっと不安なんだけどな。


「次はこちらです」


 村長が案内したのはオウルエンスの神殿にもあった壁画だ。ただ、こっちの場合はアナグマが主人公っぽい。

 内容は似た感じで仲間と共に何かを成し遂げた壁画だ。

 で、目視してると%が出現して、前回の神殿時と合算して70%になった。

 これって他にも神殿で分析すれば真相が開示されるって事なんだろうけど……。


「神獣の申し子様、本日は私共の村へと来訪し拝見して頂き誠にありがとうございます」

「こちらこそありがとうございます。何かと物騒な話があるのでご注意を」

「はい」

「ところで……」


 俺は村にいる子供の一人に視線が向く。

 どうにも気になるそのアナグマっぽい人種の子なのだが、毛並みの一部が随分と綺麗な銀色の所がある子がいるのだ。

 顎周りもふわふわの銀色でね。


「この村に健人という奴の子供が居ますか?」

「神獣の申し子様はケント様の事をご存じのようですね。はい。村の者と仲良くしている者がおり、子供がいます。とても働き者で少々無茶が過ぎる気概がありましてよく心配しておりました」


 やはりそうか。

 本当、あいつ各地で種ばらまきまくってやがるようだ。


「あの子もケント様のお陰で村の者たちとも打ち解けて無茶をする事も減って安心している所でございます」


 頑張り屋な人で健人が色々と気を使って無茶をするのを抑えるようになったと言う話のようだがそこから肉体関係にまで至るのは本当にどうなんだ?


「そうですか」

「きゅー……怒ってるっきゅ?」

「節操がなさ過ぎじゃないかなーと思うくらいにはな」


 各地で女を作ってるのかあの狼男! 子供を何人こしらえたら満足するんだ?

 ったく、健人以外も異世界の戦士ってこういう奴がいるのか不安になるぞ。

 本当、祈るばかりだ。


「お義父さんはいないっきゅ? ボク、兄や姉、弟か妹居たら嬉しいっきゅ」

「君はまだ赤ん坊でしょ? 何処で誰から聞いたのかな?」

 教育によろしくない話題だぞ。


「きゅ?」


 親代わりでラウを育ててるけど……俺は健人みたいな節操なしじゃないのでね。

 俺が見たいのはブルの子供かな。

 きっと良い子に育つ。それとブルの弟や妹ともっと知り合いたい。

 飛野はきっと大丈夫だよな……?

 なんか飛野が一人生き残ったから出席番号順にクラスメイトの名前の子供達とか作って無い事を祈るばかりだ。


『う……なんか悪寒が』

『ブヒャ……』

『ブルさんはともかくヒノさんどうしました?』

『ブルトクレスじゃないけどなんか背筋がぞわっとしてさ』

『ブルさんみたいにユキカズさんの気配を感じ取れるようになったのですか?』

『どうだろう……そう言えばルリーゼ様ってブルトクレスの妹なんだよな? 父親が色々とヤバイらしいけど』

『はい。異世界の戦士だったんじゃないかと言う話ですね』

『アサモルトの姉の子供とこの前あったけど、確かにみんな似た銀色の部分あったね』

『ええ、皆さんの綺麗な特徴です。ちょっと羨ましいですね』

『こう……件の父親だけど女好きなのは果てしないなと思う』

『ヒノさんはどうなんですか? 同じ異世界の戦士として』

『うーん……俺はさすがにちょっと。藤平がハーレムとか夢見てそうだったなーとは思う。ライラ上級騎士様へも色目を使ってたし』

『確かにそんな方ですね。ヒノさんはその辺りは?』

『どうしたもんかなーって思ってる。みんなの分まで生き残らないと』

『結婚して家庭が出来たら子供にはユキカズさんの名前とか使うんですか?』

『いやー……確かに考えるけどそれもどうかとは思う』

『それが良いと思います。逆にユキカズさんは難しそうですよね』

『だね。アサモルトは上位互換だって言ってたけど、その辺りは信用出来る奴なのは分かるよ。ただ……アイツの場合告白される側かもな』

『……』

『フィリン?』

『ブルさんじゃあるまいし、ユキカズさんは聞き流しますよ。ヒノさんこそ告白される側では』

『いやいや、兎束程の活躍してないからね。全然さ。何にしても遠く感じる話だなー』


 何にしても近隣の村へと情報収集に出るのは大事だ。

 足の速い俺だからこそできる手って奴だし他にも神殿があれば分析が完了するだろう。

 そうすればあれが何なのか明確にわかるはずだ。

 ……とりあえず次の村へと行くか?

 そう思いながら空を見ると日が大分傾いている。

 このまま飛んで行ったら夜になるだろう。

 暗視も俺はできるので暗くても問題は無いが……ラウの事を考えると帰るのが無難か。

 幼い子を連れた長期移動は避けるに越したことはない。

 村のターミナルポイントにエネルギーを入れてあるし、結界の強化は多少できただろう。


「それじゃ失礼します」

「神獣の申し子様の来訪、誠にありがとうございました」


 なんともむず痒いな。

 異世界の戦士を断って兵士から始めた身からするとどうにも慣れない。

 そう思いつつ俺はラウを連れて飛びあがって帰路に就いたのだった。


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