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二百五十四話


「小麦粉100グラム、砂糖20グラム、卵1個、ミルク100CC、それと兄貴が生成する重曹を少し、後……兄貴が入れる隠し味なんだな。虫さんは入ってないんで安心なんだな」


 お? エミロヴィアは生地の配合比率がパッと見て分かるみたいだな。


「隠し味は……バターと何か他にもあると思うんだな」

「なんで分かるんだぞ?」

「え? うーん? 植物さんにお願いして薬を作る時の組み合わせに似てるからだと思うんだな」


 あー……エミロヴィアの能力はいばらの魔女で、その魔女って所からなんとなく調合系の技能があるのだろう。

 つまりエミロヴィアもお菓子というか料理系は実は出来るのかも知れない。


「ユキカズの兄貴はこの後の焼くのも上手だからオデは真似出来ないんだな」

「練習すりゃ二人とも出来ると思うけどな」


 こんなの後は焼くだけだし。


「ふふ……皆さん、神獣の申し子様の作るお菓子に興味津々なのですね」


 子供達の朝食を作って居るカトレアさんが微笑んで居る。


「匂いに子供達も今か今かと期待してますよ」

「色々と作っていかんとなーパンケーキは主食に出来るし、簡単に作れるのが強みだ」


 ちなみにカトレアさんは生地作りをした段階で分かったのか先行で焼き上げてくれている。

 フライパンでドンドンとパンケーキを子供達が満足出来るだろう分をね。

 これにベーコンやハム、スクランブルエッグなんかを作ればブレックファストになる。

 ムーイに材料を作って貰ったので量は確保可能だ。


「さてと、やや豪勢に揚げ物でフライのポテトと……」


 併用でやっていたもう一つの菓子を作り上げる。

 エミロヴィアが能力で畑から採取した芋っぽい食べ物を揚げ物にしたついでに揚げるお菓子を作ったぞ。


「かりんとうと大学芋の完成だ」


 揚げた後に砂糖とか色々と鍋で加熱して出来たタレでコーティングして冷まして作ったんだけどさ。

 こんな代物も人里では作るのが簡単になった。


「おー……?」

「ユキカズの兄貴……これ……」


 ムーイが首を傾げ、エミロヴィアが困惑した様子でかりんとうを指さす。

 どうした? なんか変な事があるか?


「んーちっきゅ?」


 ラウ、それはかりんとうを見た人の一部が思うけど口にしては行けない事だぞ?

 試食とばかりにムーイに一本差し出して食べさせる。


「カリカリしてて甘くて、味が濃くて美味しいぞ!」

「そうなんだな? あ、ユキカズの兄貴、オデが分かる様にしなくて良いんだな」


 配慮するなってエミロヴィアが念を押してくるなぁ。

 そんなに困るのか?


「ふふ、エミロヴィアさんはこちらがよろしいのでしたね。昨日のうちにツテで用意させて貰いましたよ」


 カトレアさんがエミロヴィア用にと……ミミズらしき物が集まった容器をエミロヴィアに渡す。

 釣り用の餌とかかな?


「ありがとうなんだな」


 ふむ……釣り用のワームって疑似餌があったよな。

 アレってグミっぽかった。エミロヴィア用に作っても良いかもな。


「ユキカズ。これってかりんとうって言うお菓子なんだな。皮の部分の焦げ具合がカヌレと同じ意図的に焦がすのが良いと思うぞ」


 かりんとうを持ってムーイが分析してる。

 たしかに意図的に焦がして茶色にはしてるのは共通だな。

 カリッとした食感を楽しむお菓子なのは共通だ。


「ふわああ……相変わらず雪一の近くだと甘ったるい匂いがしやがるな。ガキ共が目をキラキラさせてたぞ」


 健人が欠伸をしながらやってくる。


「甘ったるくて悪かったな。ムーイの飯用に色々と作ってるんだよ」

「ほー……って雪一、お前よりによってかりんとうなんて作ったのかよ」

「悪いか? 量の割にカロリー高いから栄養補給には良い代物だぞ?」

「常食するとやべえお菓子だろ」


 そんなん常食するなって話だと思うが。


「ったく、まあこれを作ったらどうなるか見物だぜ」

「……」


 一体何を見物にしてるんだか……ちなみに子供達はムーイと一緒に楽しくお菓子を堪能していた。


「とりあえずムーイ、お菓子作りはこんな感じだがこれで良いのか?」

「うん! また教えて欲しいぞ」

「わかった」


 何やらムーイもお菓子作りに興味を持ったようだった。




 後日……。


「やっぱり想像通りの事が起こりやがったぞ! 雪一!」


 って健人が俺に文句を言ってきた。

 何をムーイがしでかしたのかというと……。


「田畑に使う肥料がかりんとう貯蔵庫に変貌してしまったか」


 肥料に使うはずの場所がかりんとうの山となってしまっていたのだった。

 うん……まあ、かりんとうから考えるネタではあるけどさ。


「ムーイ」

「どうしたんだユキカズ?」

「さすがにこれはどうかと思うから元に戻そうな?」

「ダメなのか?」

「うん。子供達の教育に良くないし、別の使い道があるからさ」

「そうなのかー? 子供達にお願いされたんだぞ?」

「アイツらが犯人か。ったく、しょうがねえな」


 まあ、ムーイは物をお菓子に変える際、食べるのを目的にするけど味が劣化するから好んでやらないんだよな。

 基本は材料に変えるのが目的で俺が作ったのを食べる。

 子供達に頼まれたからやっただけでムーイが好んでやった訳では無いというのは良かったのか?


「似てるけど食べられない物だし要らないのなら変えても良いと思ったけどダメなんだな」

「非常時とかなら良いんだけどな……」


 さすがに肥料になる前の段階のものを考えると良くない。


「エミロヴィアは分かるよな?」

「植物さんのご飯がお菓子になると植物さんが食べれないんだな」


 ああ、植物を操れるエミロヴィアからすると肥料は植物の食事って認識ではあるのか。

 ……肥料に群がる昆虫を食べるとかも考えて居るのかと思ったが違うようだ。


「なるほど、植物はコレを食べるって事かー」

「なんだな」

「わかったぞー」

「えー……」


 ここで子供達がかりんとうの山を前に抗議の声を上げていた。


「折角ムーイが菓子に変えてくれたのに元に戻すのかよ」

「お前等……」


 さすがの健人も呆れと説教の声を上げる。


「あらまあ」

「神獣の申し子様達と一緒だと面白い事が起こるねぇ」

「貴方たちは……」


 カトレア達とリイがそんな子供達に各々感想を述べていたのが印象的だった。


「そんな悪い事をしてると君達が拾って来た木の実で作ったお菓子、どんぐりチョコレートを食べさせてやらないぞー?」

「チョコレート!? ムーイが時々くれるアレ?」

「液体かりんとう!?」

「腹下した肥料!?」


 子供達ー? それ以上言うと本気で食わせてやらんぞ。


「雪一……とうとうどんぐりみたいな渋い木の実でチョコレートを作れるようになりやがったのか」

「そんな難しくなかったぞ? アエローで砂糖を抽出するみたいなもんだ」

「いや、割と本気でどんな仕組みであの薬草が甘くなるのか分からん」

「ユキカズ凄いんだぞー。木の実ならなんでもチョコレートに出来るな!」


 そこまでじゃないと思うけど一度コツを掴んだら案外チョコは作れる様になった。

 植物油なら応用で出来る気がする。まあ、魔法加熱をする過程を挟むんだけどさ。

 原理はしっかりしてる分、ムーイの能力よりも遙かに格下だ。

 ムーイは水からチョコレートだって変化させられる訳だし。

 同様にムーイは水をワインだろうと牛乳だろうと変化させられる。

 どんだけ万能なんだろうな。

 なんて感じにかりんとう騒動は意識をそらせて終わらせたのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 神だ…(お菓子の)神がそこにいる…。
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