二百四十九話
「……なるほど、少々変わった方々だとは思っていました」
「なるほどねー……神獣の申し子が監視付きで面倒を見てるって事ならこっちは下手に騒ぐ真似は出来ないね」
「二人とも暴れるような奴じゃ無いから安心して欲しい」
ムーイもエミロヴィアも大人しいのは二人とも理解してくれている事を祈るほか無い。
健人のイイ女と言うのがどれほどのものか判断仕切れないけどさ。
「私からも安心だと保証しますよ。神獣の申し子様が激戦の末に一週間ほど寝入った際にムーイさんは村の者たちと良くしていましたので」
「よろしくだぞ」
「よろしくなんだな」
リイはエミロヴィアに関してよく知らないからな。
正直なのはリイの長所ではある。
「ええ、お二人とも子供達への態度から悪い方では無いのは分かって居ます。どうかあの子達と仲良くして下さい」
「もちろんだぞ」
「なんだな」
本当、二人は大人しい迷宮種で助かるよ。
で、俺達は旅の経緯と目的に関して簡単に説明を行った。
「なるほど、ケントもやっと聖獣様に再戦するチャンスが来たって所なのね」
「おうよ。とはいえ、何かと物騒な出来事が起こってるみてえだから先にこっちに来たって所よ。何も無くて良かったぜ」
「そうね。町や村がそんな事になってたら確かに恐い話よ」
「いざって時になったらお前等は一目散に逃げて欲しいもんだぜ」
「あの子達を置いて逃げたりはしないけどね」
「そうね」
「……ガキ共と一目散に逃げてくれよ? 本当に」
健人がいつになく真面目な視線でカトレア達に注意している。
一応この辺りは気にしてるんだな。
藤平だったらどうなんだろ? さすがの藤平も関係を持った女が居る町に危機があった際には心配するよな?
こんな反応した際に藤平だったら、どう答える?
……うーん。さすがに藤平もシャウトはしないと思いたいな。
何か「ガキなんてまた産めば良いんだよ!」とか言ってシャウトしそうで恐いな。
さすがに低く見過ぎだ。藤平はもうこれ以上悪さはしないのだから辱めるような考えはしないようにしよう。
「わかってるわよ」
「ええ」
なんとも不安って気持ちは分かる。
俺もブルとかフィリン達、ドーティスさんの村が襲撃を受けたらと思うと心配してしまう。
……割とブルとドーティスさんは恐いな。あの二人は逃げる優先順位、もの凄く低そうだ。
まあ、余計な寄り道だとは思ったけど健人の心配も分からなくも無いから良いとするべきだと再認識だな。
「状況として聖獣様が動いて居るから安心だとは思うけど、ケントと神獣の申し子様はどういった方針で行く予定なのですか?」
「ここが無事だって分かったから……まあ、すぐでも良いけど件の聖獣がいないとかだと無駄足になるし、事件を放置しておくのも良くねえな」
「まあな……」
「ここは町村との繋がりも大きい町ですので情報を集めてからでも良いでしょう」
その辺りが無難かな……何より聖獣を相手に何処まで戦えるのかってのもあるし。
「懐かしいわねーケントが昔、聖獣に挑んでボコボコにされたのを思い出すわ」
「うるせー」
そういえば健人は聖獣に挑んだっぽい話はしてたんだったか?
なんかその辺り曖昧にはぐらかされた気がする。
挑んだのに挑んでないとか言ったとか? どうだったか忘れたな。
「まともに動けない程にボコボコにされて私たちが介護してやっとの事動ける様になりましたからね」
「神獣の申し子様も挑戦するそうですけど、ケント、勝てそう?」
健人が俺の方を見てくる。
「どうだかな。潜在的には勝ち目はあると思うけど、アイツらがどんな隠し玉を持ってるか分かったもんじゃねえからよ」
健人も何処まで聖獣を追い詰めたかにもよるけど相手が本気だったかもあるか。
「俺とムーイ達に任せて見学か? ハーレム狼男」
「妙にトゲのある言い方しやがるな。そこまで甘える気はねえよ」
「じゃあ何か妙案でもあるのか?」
少なくとも健人が戦力になるような案というのがあるなら聞いてみたい所だ。
「それこそ武器や防具をしっかりと固めて挑むしかねえよ。あー……何処かで竜騎兵でもありゃ良いけどよ。つーかよ、雪一、お前寄生した大型魔物を改造して俺が操縦出来る様にしろよ」
「無茶言うな」
頭潰して魔獣兵に改造しろってか?
そんな竜騎兵の再現とか出来る訳ないだろ……とは思うけど、うーん……進化先にそういった魔物が居ないとも言えないか。
「ま、白兵戦でできる限り聖獣の動きの邪魔はしてやるよ。足手まといとは絶対に言わせねえぜ」
「はいはい」
「と言うより重要なのは雪一の能力で聖獣を解析出来るかもあるだろ、お前の強さが鍵なのは否定しねえよ」
「まあ……俺よりもムーイの方が強いけどな」
「ユキカズの方が色々と凄いとオレ思うぞ」
「なんだな」
ムーイが居れば勝てる相手であってほしいがそこまで甘くは無いかね。
ムーイとエミロヴィアが俺を褒めてくれるけど……俺がカギか。
その場合、ムーイに寄生出来る位には強くならなきゃ始まらないと思うぞ。
手段を選ばないなら……ナンバースキルを発動とか、出来そうではあるけどそんな方法で勝っても良いとは思わない。
聖獣に勝つために使って良い事と悪い事はある。
……寄生した大型魔物にナンバースキルを発動とかしたら良いのか?
ただ、あくまで試練という体裁を保って居るんだし、なんか認められない気がするな。
下手すれば永遠にこの世界に閉じ込められかねない。
だって見張られているんだし、その手は禁じ手だと思うべきだ。
もしもこの手を使わざるを得ない場合が存在するのは……それこそ、聖獣では無い何か明確な敵を相手にした時だと思う。
『へえ……その辺りは弁えているんだね。ご名答、そんなつまらない奴だったら処分してるよ』
く……ここで答え合わせをしてくるなっての。
だが想像通りナンバースキルで聖獣に挑むのは推奨されないのが証明された。
他の手を模索して行かねばならないと言う事だ。
「色々と俺もやっていくっていう方針を変えずに行けば良いだろ」
「別に良いけどまた変なの拾ってくるんじゃねえぞ」
それはエミロヴィアの事を言ってるのか?
良いだろ。エミロヴィアは良い奴なんだからな。
パタタと飛んでエミロヴィアに抱きかかえられる様にホバリングして持たせる。
うん。察する能力が高いぞ。
「なんだな?」
「ムーイもエミロヴィアは良い奴だぞ! 変では無い!」
「わざわざ言う事がそれか」
「リイ、神獣の申し子様は素直な方なのですね」
「ええ……ケントとはまた違う形で頼りになりますよ」
期待にはできる限り答えたいとは思う。
この先を考えるとやはりもっと強くならなきゃ行けないか。
まずはムーイに寄生出来る様な強さが必要……か、一体何処まで行けばムーイに追いつけるんだろうな。
「んじゃまーた俺がこの辺りの偵察でもするのが無難かね」
空が飛べるアドバンテージはとても大きい。
何よりこの辺りの地形把握、町や村を消し飛ばすような奴の痕跡探しから何まで俺が一番適任だ。
「ムーイもそんなに心配しなくて良いからな?」
「うー……」
やっぱり心配してたか。
なんて言うか一体何時から俺の方が心配されるようになってしまったんだろうか。
まあ、カーラルジュに攻撃された時からなんだろうけどさ。
こうした索敵でエミロヴィアと出会って色々と知る事になった事を考えると……まあ、悪い話じゃないと思いたい。





