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二百四十二話


「なんとも不吉な感じでイヤなもんだぜ」

「それでエミロヴィア、力が増したってだけじゃなくて何か出来ることが増えたんだったか?」

「なんだな。植物さんを組み合わせて傷の手当てとか出来てたけど、それでもっと別の……ユキカズの兄貴達が薬をもっと作れるようになった気がするんだな」

「ほう。例えば?」

「水中で息が出来るようになる薬とか何だな」


 ほー……そんな薬をエミロヴィアは作れる様になったのか。

 レラリア国で作れそうな薬だけどパッと作れるなら便利だろうな。


「単純にエミロヴィアのパワーアップも出来て良かったみたいだ。ムーイも似たように力の源を手に入れたらどうなるだろうな」


 ちょっと楽しみだ。


「ピンと来ないぞ。これ以上、オレどんな力が使える様になるんだ?」


 まあ、一度構造どんな代物なのか本物を知れば何でも複製出来てしまう能力にどう拡張性を持たせろって事だよな。

 ……よく考えるとムーイって本当、恐ろしく強い能力を持ってるんだな。


「どうなんだろうな。ただ、俺もなんて言うかくっつけ方というかバイパスの仕方が見てて分かった様な気がする」


 ビクッと俺の言葉に寄生して居たエミロヴィアが反応する。


「な、何がなんだな?」

「こう、単純に出力を上げるんじゃ無くて力の組み合わせも大事なんだなってさ」

「だから何がなんだな!?」


 エミロヴィアも警戒してるな。こら、吐き出そうと抵抗するなって。俺は胃袋には居ないぞ。

 じゃあ試してやろうじゃないか。

 えーっとエミロヴィアの力の源と相性の良い手持ちの力の源は……。

 俺はフレーディンから手に入れた推定で、ラウを操る力を持っている力の源をエミロヴィアの心臓部にくっつかないように俺が間に入ってエネルギーの循環を行う。

 するとエミロヴィアの力の源が活発化をし始める。


「う……ユキカズの兄貴、オデに何してるんだな」

「おうおう。目玉の化け物が正体を現しやがったぜ」

「健人、正体とか心外な事を言うな。エミロヴィアが出来そうな事をやっているだけだ」


 実に心外だ。確認をしたら出来そうだって感じたからしたに過ぎない。

 出来る事は確認しておけば今後の役に立つだろう。


「エミロヴィア、ラウを見て変な気持ちにはならないよな?」

「ラウの坊ちゃんは大事なんだな」

「キュ?」

「うん。問題無さそうだ」

「うー……」


 ムーイが唸ってこっちを見てるが、今は実験だ。


「ってユキカズの兄貴! 何をオデに繋げようとしてるんだな!?」

「勘が良くなってきたな。鈍くさいってフレーディンは言ってたようだけど違うじゃ無いか。嬉しいぞ」

「ここで褒めるんだな!? ありがとうなんだなってたぶん違うんだな!?」


 食指を弄らずに力を意識的に循環させたぞ。


「エミロヴィア、何か出来そうな気はしないか?」

「よく分からない力が出せる気がするんだな」

「じゃあそれを使ってみよう」

「本当に大丈夫なんだな!? 何か植物さんを出すに近いけど別の事が起こるんだな」

「試しは大事だぞ」


 怯えるエミロヴィアを宥めて能力を実験してみる。


「わ、わかったんだな。えい!」


 エミロヴィアが植物を操作するように何か新しい力を発動させる。

 体内にあるエミロヴィアの力の源とデリルインの力の源、そして俺が近づけている子供を操る力の源が強くエネルギー循環を始める。

 ズモ! っと地面から……ウエハースみたいなのが生えた!

 ウエハースってのは日本だとシールのオマケで付いてくるので有名なお菓子だな。

 ……お菓子? エミロヴィアがお菓子を出す能力が開花したのか?

 便利だな。ムーイの補助無しでこんなことも出来るのか。


「なんだこれ? お菓子だぞー」


 ムーイがウエハースを折って頬張る。


「んー……お菓子だと思うけど……ちょっと微妙だぞ」

「キュー」

「もう少し練習だ」

「わかったんだな。えい!」


 更にエミロヴィアが能力を使うとジンジャーブレッドで作られた箱というか屋根が出てきた。

 壁はウエハースだな。


「骨組みだけだけどお菓子の家って感じだなおい」


 あ、健人の言う事は的確かも知れない。


「この組み合わせだとエミロヴィアの能力はお菓子の家の魔女になる感じだな」


 童話であるヘンゼルとグレーテルで出てくる魔女がまさにそんな感じだ。

 そう言えばアレの魔女は子供が好物だったのじゃなかったっけ?

 組み合わせに納得が出来てしまう。


「キュー!」


 ラウが目をキラキラさせている。

 夢があるもんなーお腹いっぱいのお菓子が並ぶ光景って奴。

 同様に目を輝かせそうなムーイはお菓子の家を複雑そうな顔をして見ている。


「魔法でお菓子の家を出せるってファンタジーだな。術者はカエルと目玉の化け物だが」


 健人の奴はもう少し言葉を選んで欲しいもんだ。


「ユキカズが能力じゃなくて作ってくれたら素敵だぞ」


 お菓子の家を作るね……菓子を作る人の夢みたいなものだとは思うが、量を考えてくれ。


「それに建物をお菓子にするのは難しく無いぞー」


 まあ……ムーイの場合、魔力が続く限りは建物をお菓子に出来るもんな。

 特に不思議でも何でも無いから興奮はしないか。


「こんな事も出来るようになるんだな。驚きなんだな」

「楽しい方法ではあるだろエミロヴィア、ラウの顔を見て見ろ」

「キュー」


 すごーいとばかりにラウはお菓子の家の骨組みを見て目を輝かせている。


「こんな感じだな! 本当はユキカズが作ると最高なんだぞ」


 で、ムーイが骨組みに手をかざしてデコレーションをして完成した。

 突如異世界の森の中に出来るお菓子の家、エミロヴィアと俺、そしてムーイの合作だ。


「な、なんか嬉しいんだな……確かに、こういう能力ならオデも嬉しいんだな!」


 エミロヴィアがポンポンお菓子の家の作成を行う。

 周囲にお菓子の家が何戸か生えた。


「……お前ら何やってんだ」


 いち早く冷静になった健人が指摘してくる。

 うん。わかってる。かなり変な事をしてるのって。


「実験の結果の迷走。結構面白くないか?」

「迷宮種って連中がとんでもない力を持ってるってのはわかったけどよ。さっさと問題の究明をしろよ」

「そうだな……」


 俺はエミロヴィアの力の源に反応させていた子供食いの力の源を遠ざけて、寄生を解除して吐き出される。


「デリルインの力の源を貰うのと一緒にユキカズの兄貴に色々とされちゃったんだな」

「悪いな」

「ユキカズの兄貴といると驚きの連続なんだな」

「キュー」

「ほら、ラウーお菓子の家を食べるかー?」


 と、ムーイはラウにお菓子の家を食べさせて楽しそうにしている。

 あんまり食わせすぎない様にな。

 歩ける様になったと言っても赤ん坊なんだし。

 ちなみに何故かお菓子の家を俺はヘクセンハウスと命名したくなった。

 ヘクセンハウスって何?


「あのー……」


 あ、リイが言葉に困ってる様子だ。

 話を戻すのが良いか。

 組み合わせを実験するのを止めて軽く咳をする。

 エミロヴィアの体でな。

 すぐに思考が脱線するけどエミロヴィアは能力から考えると魔女のコスプレさせると似合いそう。

 とんがり帽子とか見つけたら被せてあげるかな?

 糸で縫って自作するのも良いかもしれない。


「デリルインには何か仕掛けられて居て、マシンミュータント・コントロールフォートレスが操っていたって事みたいだ」

「脱線したがマシンミュータントね。確かに迷宮種が村を壊滅させたってのには違和感があるから納得の理由だな」


 確かにな。違和感の正体は迷宮種ではなく、迷宮種に何か細工をしたマシンミュータントって奴だと思うと納得出来る。


「で、このマシンミュータントから……異世界の戦士の力が抜け出して逃げだそうとしていた。そこに突撃したら力が逆に俺の方に吸い込まれて機械の残骸みたいなものだけ残った」


 一応機械のパーツは拾っているけど調べようが……いや、機械系に強い魔物に進化とか解析が出来れば出来るか?

 ありそうだよな。寄生系統の魔物に。

 ドラゴンパラサイトとかは騎竜に寄生出来るんだろうし互換性はありそう。

 この機械の解析をする意味でも今後の進化で出来る様にした方が良いかもしれない。


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