表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
239/394

二百三十九話


「効きが凄く悪いけど――はあああ!」


 ガツ! っとムーイの持って居た剣が殻に深々と突き刺さったけどそれ以上刺さらなくなってしまった。


「ユキカズ、変えたのに途中で戻った。コイツ変化に凄い耐性あるぞー」

「キュルル!?」


 これには溜まらずデリルインが殻から体を出して転げ回る。


「一気に畳みかけるぞ!」

「おうよ!」


 健人も槍を構えて投擲、ザクッとデリルインに槍が突き刺さる。


「キュルル!? キュルルル!」


 っと、悶絶から即座に立て直して殻に入り直そうとデリルインがしたが、健人の投げつけた槍が身に引っかかって一部が外に露出している。


「なんだなー!」


 そこをすかさずエミロヴィアが……殻の中に舌を伸ばしてデリルインの身に引っ付く。

 いや……突き刺したって感じ?

 グニグニとデリルインの体の中に舌を進ませる。


「あ、なんだな……」


 サッと何かエミロヴィアが引こうとしてる。

 こんな所で遠慮してどうするんだよ!

 力の源を引きずり出すのに良いだろ!

 そのまま舌の操作を俺が奪い取って力強くねじ込ませる。


「ギュルルル!」


 奪われてなるものか! とばかりにデリルインは管から水と霧を吹き付けて、殻の武装もぶっ放してくる。

 が、狙いが正確じゃないな。

 どうやら魔眼が地味に効果を発揮してきているようだ。肉が固くなっていると同時に動きが悪くなっている。

 脈動に意識を集中して……ここだ!

 ズルン! っと力の源を毟り取る。


「キュルルルル!」


 そのまま離脱して距離を取るとデリルインは返せ! とばかりに体を出してこっちに張ってくる。

 迷宮種は生命力が高くて、心臓部分を奪った直後は動き回るよな。


「ご、ごめんなさいなんだな」


 おお……相手に謝るのかーエミロヴィアって本当、戦いに向いてない性格だ。

 俺はエミロヴィアに罪悪感が湧いてくる。


「ごめんなエミロヴィア、イヤだったな」

「ユキカズの兄貴、なんで謝るんだな? それとは別なんだな……オデこそごめんなさいなんだな」


 うーん……それでも申し訳ないと思ってしまうなー。


「キュルルルル!」


 そのままデリルインは守りの姿勢で戦うのを止めて水の刃と毒針、毒の雨攻撃でこっちに攻撃をする様になった。


「おい。力の源を奪ったんだろ? 随分とタフだな」

「だな、徐々に弱って行くはずなのに元気なもんだ」


 と、感心してると……なんだ? デリルインの殻の方にも名前が浮かんで来たぞ。


 マシンミュータント・コントロールフォートレス


 マシンミュータント?

 こっちも別の独立した魔物……なのか?

 デリルインとどんな関係なのか怪しくなったぞ。

 もしやコイツ、俺とエミロヴィアみたいな共生関係だったのか?


「これでも喰らえ!」


 大きく踏みしめたムーイが跳躍しつつデリルインの頭目掛けて剣を振り下ろした。

 ザシュッと良い手応えと共にデリルインは管を盾にして受け止めるが管が切り落とされる。

 けれど管は即座に再生……タフだな。


「おかしいぞユキカズ、コイツもう力の源が無いのに動いてる。動きすぎだと思うぞ」


 ムーイも異変を感じ取ってデリルインを指さす。

 確かにおかしい。


「そもそもコイツ、なんで神獣の力を感じるんだよ」


 で、健人と俺は毛が逆立つ感覚、異世界の戦士の力を感じてしまっているんだ。

 目で解析を行うと殻から高密度の力を確認出来る。


「殻がマシンミュータント・コントロールフォートレスって名前に変わった」

「んだそりゃ? 聞いた事無い名前だぞ」


 だよな。一体何なんだ?


「殻の中に何かある。壊すのが良いと思うが……」

「くそ固くて手間が掛かる話じゃねえか」


 ムーイが一部脆くさせたのでそこから攻撃してエネルギーの中心点を暴き出すしかない。


「もう一度殻……コントロールフォートレスを弱らせるぞムーイ」

「うん!」


 ムーイが殻に向けて殴りつけると同時に手をかざして変化を施す。

 その変化に抗うように何か力が抵抗を示している。


「はぁああああ!」

「いくぜオラアアア!」


 ザクッとムーイと健人が同時に脆くさせた殻の部分を各々の武器で貫く。


「キュルルル――」


 けれどそれ以上刺さる様子は無いが、バキッと中に貫通したのは分かった。


「二人とも武器を抜け! 俺が侵入して暴く!」

「わかったぞ」

「任せたぜ寄生野郎」


 健人の悪態は気にせず俺はエミロヴィアから分離してデリルインの殻の中へと滑り込んで中身を確認しようとした。

 直後……殻から高密度のエネルギーが吹き出して、逃げるようにエネルギー状の何か……いや、異世界の戦士の武器等を破壊した時のエネルギーにそっくりの代物が出て空へと逃げ出す。

 コントロールフォートレスの名前も消失したぞ。


「逃がすか!」


 アレが力の本体か!

 逃げると同時にデリルインの力が抜けて動きが止まる。

 俺はそのまま飛び上がり逃げる、一見するとアザラシに見えるそのエネルギーに突進をした。


「――っ!!!」


 信じられないと言った表情のそれが突進すると同時に……何故か俺の体に吸い込まれて行く。


 第三神獣の力


 と視界に映ったが……一体。

 であると同時にコロンと機械のパーツが残って落ちる。


「キュルルル――」


 デリルインは弱り切った体で飛び上がった俺に向けて管を向けて……弱々しく広げて居た。

 もう何も力が残されていない。

 もしやお前はコントロールフォートレスに操られていた哀れな迷宮種だったのか?

 ……死に行くお前へのせめてもの情けだ。

 そのまま落下してデリルインの広げた管に触れてやる。


「ルルル……」


 ああ……と、表情はよく分からないけどデリルインはなんとなく幸せな顔な表情をしているように見える姿で……バチン! っと突如全身がはじけ飛んだ。


「うわ!」


 まるで裏切り者に価値はないとばかりに……こうしてデリルインは完全に絶命した。


「勝ったみてえだな。けど何なんだ……頭が弾けやがったぞ」

「知らねえよ」


 俺は昆虫変化モードから普段の姿になり謎の機械を拾って確認する。

 一体何なんだこれ?

 解析で分かれば良いけど何も反応しない。

 ただ……何か嫌な感覚というのはある。

 俺が人間だった頃、あの神を僭称したローブの奴が使役していた異世界の戦士の力の塊にそっくりの奴……そいつに体当たりしたらエネルギーが俺に吸い込まれて消えて行った。

 何か……俺の体に変化があったのか?

 特に力が漲るって様子は無い。迷宮種の力の源を収めているのもあるけどその辺りの感覚が非常に鈍いんだ。

 ただ、少なくともエネルギー体に体当たりする事で逃がす事はせずに済んでいる様なのは分かる。

 それにしても逃げるって所で非常に怪しい。

 まだ……あのローブの奴の計画みたいな代物が残されて居るような嫌な感覚を覚え始めた。

 あの頃のような強さを俺は持って居るのだろうか?

 今の俺は……似たような状況になった時に対処出来るのか?

 疑問は晴れない。

 未来への不安をヒシヒシと感じ始めている。


「何にしても脅威を一つ排除出来たな」

「ああ……けど、さっきのは一体何だったんだ」

「気になるなら寄生でもして調べりゃ良かったんじゃねえか? お前の特技だろ」

「健人……お前な」


 俺だって出来るとしても自ら戒めている事だってあるんだぞ。

 例えば寄生相手の頭を弄って洗脳するとかだ。

 頭を潰して楽にする事以外に俺はそこは禁忌としている。

 俺がデリルインに寄生して頭を再生させて蘇生をしたとして……果たして得られる情報があるのかと言う事がある。


「ここまでバラバラだと再生は……」


 全身が爆発四散している。

 つなぎ合せて蘇生させるのは……重要部位がどれかすら分からず難しいだろう。

 ムーイならここまで霧散しても再生出来る可能性はあるけれど少なくとも不可能だ。

 せめてもの情けは……デリルインの殻だった物の残骸くらいだ。

 それも装着していた武装が力なく朽ちている。

 強靱な殻の部分くらいしか使い道は残されて居ない。

 ムーイによって一部破壊されてしまっているんだけどさ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
イラストの説明
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ