二百三十五話
数日後。
そうして破壊されたと聞いた次の村へと俺達は到着した。
のだけど……。
「これは……」
俺達の前にはクレーターとしか言いようが無い場所が広がっていてここに村があったと言われてもピンと来ない状況であった。
山脈の合間にある村だったらしいのだが……これは一体。
俺もエミロヴィアから降りて周囲を見渡す。
「果てしねえな……」
「ッキュー……」
「ここまで何も無いと最初から何も無かったと錯覚しかねないですね」
健人とリイがクレーターと化している村を見て言葉を失っている。
ターミナルポイントの反応事態はあるのだけど水晶は砕け散っていて修復とかそんな次元には無い。
「かの村はオウルエンスの発祥の地とも言われていたのですが……」
一体どうしたらここまで跡形も無く消し飛んでいるんだ?
隕石でも空から降ってきたかのようで、犠牲者がどうのとかの次元じゃないぞ。
リイの話だと歴史有る村だったのかもしれないが、全く想像する事すら出来ない。
「う……」
ムーイが眉を寄せて口元を押さえている。
「なんだな……」
エミロヴィアも被害の状況から何も言えないけどどうしたら良いのかと言った様子で俺に視線を向けている。
「……これも迷宮種が起こした災害って事になるのか?」
ラウと出会った村の状況を思い出しつつ健人に聞く。
あの時はカーラルジュの被害で村が壊滅したというのを俺達は一目で判断出来た。
けれどこの状況を迷宮種が行ったと言われても分からないぞ。
こんな事が迷宮種には出来るのか?
少なくともこんなクレーターを作る奴となるとムーイの力の源を所持したカーラルジュ以上の化け物って事になるぞ。
迷宮種とはどれだけ強くなるんだよ。
「この世界の連中は恐ろしい程の異変が発生すると迷宮種が起こしたんだろうって話をするんだがよ。さすがにここまでやらかす奴の姿は想像出来ねえな」
健人もこの惨状に関しちゃどんな奴だって判断か。
「聖獣って奴が動いたとかは?」
「さすがに聖獣もここまではしねえだろ、高位のドラゴンが大技をぶっ放したとかならあり得るが……」
高位のドラゴンね。竜騎兵はこの世界には居ないようなのであり得なくは無いのか。
周辺にある足跡を確認する。
踏みならされた道以外にある大きな足跡……確かに大型の足跡が何個かある。
ただ、近くに生息する魔物である可能性もあるな。
大型恐竜みたいな足跡が何個もあって時間からの計測も判断し難い。
「単純なドラゴンってどれくらいの強さなんだ?」
「あ? 普通のドラゴンなら俺達なら勝てない相手じゃねえよ。けどこれはそんな次元じゃねえだろ」
「そうだな」
いくら何でもこれはあり得ない程の傷跡だ。
そもそもの話として色々とおかしい。
「なあ健人、これって本当に迷宮種がやったと言えるのか?」
「どういうこった?」
「ん? ユキカズ何かわかったのかー?」
「ユキカズの兄貴、わかったんだな?」
「いや、誰がってのは分からないけど迷宮種がやったってのは違和感があると思ってさ」
そうだ。
これを迷宮種がやったというのは違和感がある。
一体どうしてこんな事をしたのかと言う理由と結び付かない。
「ムーイに始まり、カーラルジュ、フレーディン、ザヴィンにエミロヴィア。今まで会った迷宮種を見るとさ、何か食事を得るために何らかの理由で村を襲撃するってのが自然の流れだろ。そこに色々と能力があるとしてな」
「う、うん」
「そうだな」
「カーラルジュの時だってアイツは自身の能力とムーイの力を使って襲撃していた」
ラウの居た村での被害を思い出す。
お菓子化した建造物なんかもあったが、奴の食性はおそらく被害者の感情に付随する代物だろう。
フレーディンが驚きを食性にしていたと言う話のように。
ムーイだってお菓子、甘い物が食性でエミロヴィアは昆虫食。
ここで言うとムーイが傷つくから言わないが、ムーイが村を襲撃したら建物はお菓子や果物となり、住民も同様な結果になるだろう。
「迷宮種としての痕跡という代物が感じられない」
「言われて見ればそうだな。ここまで跡形もねえと迷宮種がやらかしたなんて言われてもピンとこねえ」
「匂いとか残ってねえのか?」
健人の特技は鼻の良さだろ、ここでその特技が使えりゃ判断に使えるだろう。
「あー……色々と匂いはするけどわかんねえよ。そもそもどの匂いが犯人かってのもあるしよ」
「そうだよな……ムーイとエミロヴィアは迷宮種の気配とか分からないか?」
「え……うーん? なんか、よく分からないぞ」
「オデは近くにいないと思うんだな」
まあ、ここがクレーターになって大分経っているしな。ラウの村の時とは異なるか。
そもそもの話として旅人が情報を伝えてくれた訳だし足跡だけでは判断しきれない。
「一概に迷宮種がやらかしたって決めない方がいい気がする」
「ま、そうなるか……これをやらかした奴が次に何処へ行ったのかってのを考えねえといけねえな」
チッと健人が舌打ちする。
「俺達の手に余るって事で聖獣様が出撃する案件だとは思うがよ」
「さすがに通達が行く次元だと私も判断します」
リイも健人の意見に賛成か。
ここの被害を目にした人はすぐにそう動くだろう。
俺達の出る幕では無いか。
「どちらにしても良い状況じゃねえ。早めに次の町に行かねえと」
「ケント、神獣の申し子様、一つよろしいでしょうか」
リイがここで挙手する。
「なんだ? リイ」
「この村には山の方で神殿があります。もしかしたらそこに何か手がかりが有るかも知れないので立ち寄って良いでしょうか?」
「生存者とか何らかの痕跡がるかもしれねえって事か」
「はい。可能性は低いですが行って見るのは良いかと」
リイの提案で山の方へと視線を向ける。
確かに山の一部に何か人工物っぽい代物が確認出来た。
俺一人なら飛んでいけるけどみんなで行く方が良い。
「そうか、じゃあ行こうか」
と、俺はエミロヴィアに寄生しやすいように体の部位を昆虫系に変化させたその時。
「ユキカズ!?」
「ユキカズの兄貴!?」
ムーイとエミロヴィアが両方反応を示して声を掛けてきた。
「どうした?」
「いきなり迷宮種の気配が出てきたぞ! 近くに居る!」
「な、なんだな……ううううう」
ムーイが周囲を見渡し、エミロヴィアは同意しながら涎を垂らす。
まあ、俺の姿が食指に反応してるけどそれ所じゃ無いからって事なんだけどさ。
何処にいるんだ?
と、周囲を見渡していると……ぞわっと何か背筋に変な感覚が走る。
なんだこの感覚……これが迷宮種の気配? いや、この気配は前にも感じた覚えがあるぞ。
これは……。
「ユキ――」
「兄貴――」
バッとムーイとエミロヴィアが同時に動き一方向へと庇うように立った。
「おいおいおい。いきなりだな! リイ、ラウ。注意しろよ!」
健人が一歩遅れてリイとラウに注意した。
直後、バシュ! って音が響き何か細いビームのような物が上へと通り過ぎて行くのを俺の視界が捉えた。
「く……」
エミロヴィアの後ろ姿で俺はムーイを確認する事が出来ない。
「ムーイ、大丈夫なんだな」
「大丈夫だぞ」
「どうなってんだ?」
覗き見るとそこにはムーイの右腕と右足の一部が一刀両断されて落下する瞬間だった。
「ムーイ!」
今大丈夫って言ったけど大丈夫じゃねえだろ。
「ふん」
ポトッと落ちたムーイの右腕がすぐに形を崩して体に戻り、ムーイの右腕がすぐに生え、足は即座に繋がった。
「おー……」
なんかちょっと感心してしまった。
ムーイの体ってマシュマロみたいな訳で結構頑丈というか伸びたり縮んだり、切れてもくっついて再生するんだよな。
回復魔法無しでくっつくので便利な体をしてる。
俺が寄生してた頃は神経まで繋げてたんで切れたら再度繋げないといけなかっただろう。
俺自身にもダメージがあったはず。





