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二百三十一話


「キュー! キュ!」


 ここで砂嚢に収まっても一緒に行きたがったラウが挙手してる。

 君、入りたいの?

 サッとエミロヴィアが手を交差させて拒否してる。


「ラウの坊ちゃんそれは勘弁してほしいんだな」


 だよね。俺にさえ抵抗してるエミロヴィアがそんなことを容認はしない。


「キュー!」


 あ、ダダをこね始めた。

 リイとムーイに機嫌取りをしてもらう。


「後は俺がエミロヴィアの体を操作するとして……腹から魔眼かね。これは魔法ともちょっと異なるけど」


 ギョロリと腹から俺の腹の目を出して周囲を見る。


「こう、雪一が寄生するとそこから目って感じだな。ヤベェのに寄生されてる感が出て実にそれらしいぜ」

「うるせー! じゃあこんな事も出来るがやるか?」


 寄生方法を変更っと。


「ユキカズの兄貴、なにを――オゴ」


 グニュっとエミロヴィアの腹に寄生じゃなく口の方へと俺は出て咥えられる形での寄生を試みる。

 これでエミロヴィアの着ぐるみを着てる感じの姿に出来るだろ。

 ちなみに俺の下半身は伸び気味で管でエミロヴィアの力の源と繋げている。

 外側から見るのと中身は結構違うぞ。


「おーピンクのコピー能力を持つ悪魔がマンボウと合体した奴のカエル版って感じだな」


 全く否定できない。


「……腹でも似たようなもんだがな。敵側が大王なペンギンに寄生してるみたいな感じで」


 んっく……って、エミロヴィアが何度も飲み込もうとしてくるぞ。

 エミロヴィアがパンパンとしゃべれずに白目というか震えてる。

 息はできるはずなんだが……って滅茶苦茶涎が出てる。


「酸欠か?」

「いや……」


 グニュっと腹の中へと戻るとエミロヴィアがゼェゼェと息を荒げる。


「ユキカズの兄貴……それ止めてほしいんだな。兄貴の味でオデ……」

「ああ……」


 単純にエミロヴィアの味覚を刺激しすぎてしまうのね。

 口での簡易寄生はダメだな。


「後は実戦で確認って感じかね」

「それが良いかと思います」


 リイも同意か。


「とりあえず分離して……エミロヴィアだけでどこまでできるか確認だ。出るぞー」

「わかったんだな……おえ」


 ゴロンとエミロヴィアの口から出て着地っと。

 で、エミロヴィアはどこまでできるのかというと潜伏から俺が寄生してないと使用できないようだった。

 潜伏だが皮膚の色変えも不可能で、ブレスも使用できない。

 合唱も鳴くことはできるけど、それ以外は無理っぽい。

 こう……力の源による強化って相手の能力を得る以外にもあるんだな。

 フレーディンもそっち方面で強化すれば良かっただろうに。


「とりあえずこんな所だな。エミロヴィアが大きくなってみんなを運べるのが分かったのは収穫だ」

「それはよかったんだな。お役に立ててうれしいんだな」


 協力的なエミロヴィアには助けられそうだ。


「ユキカズ……」


 で、ムーイがラウをあやしてるけど恨みがましい視線を向けてくる。


「あむ」


 ってムーイは俺を持ち上げて耳を甘噛みしてきた。

 それってどういう意思表示だよ。


「ユキカズ食べたら寄生してくれる?」


 どうしてそんなに俺に寄生して貰いたがってるんだよお前。


「おい。ムーイに寄生するのってそんなにダメなのか?」


 健人まで俺に聞いてくる。


「ダメとは言って無いだろ。ただ連携や人員の話だ。一極化した場合と人が多い場合の連携って色々と違うだろ?」

「そんなもんかね。俺も居るんだしムーイとお前で一緒になって戦えば良いんじゃね? 実験は大事だろ?」

「うーん……」


 と、健人の勧めもあってムーイを見る。

 なんかムーイが両手を広げてカモンカモンしてるけど、それで良いのか?


「キュー?」


 ラウはそんなムーイに肩車して貰ってご機嫌斜めだったのも良くなり、ご満悦のようだ。


「ユキカズ、オレにも寄生してくれるんだな。ちょっと待ってなーユキカズが入りやすい様にするー」


 ってムーイがお腹に手を当てると腹に一本の横筋が出来てグバァっと開いた。

 ……こう、前に寄生した時はカーラルジュが開けた穴から入った訳だけどムーイの体って本当、自由変形出来て便利な形してる。

 たださ……そのまま俺を食おうとしてるようにも見えるんだよな。

 俺を取り込むために開かれた穴って感じでさ……。

 エミロヴィアみたいに俺が望む形で擬態からの潜入ではなく……ムーイが俺を取り込む形で。

 一筋の可能性を考えてリイの方を見る。


「えー……神獣様の望むままにがよろしいかと、聖獣様はとてもお強い方ですので神獣様でも方法の模索はしておくのも手です」


 言葉を結構選んで来たなー。

 まあ、どうも一回やらないとムーイが甘噛みから本当に噛みついて来そうだしやるしかないか。

 エミロヴィアと仲を悪くされても困るしな。


「はいはい。わかったよ」


 やれば良いんだろうって事でムーイに近づく。


「えへへー」


 そんな良いもんじゃないというのに。

 って訳でムーイに寄生だ。

 前にもやったようにムーイへ寄生を行う。

 力の源のあった所はそのままに少しだけ前方に寄生して俺の中にある源とバイパスを繋げる。

 ドクン……ドクン……ドックン!

 ものすごいエネルギーが全身を駆け巡った。

 今までの比じゃないぞ。力の源が生み出すエネルギーが何倍も出てないか?

 う……こ、これは……。


「おおお! ユキカズから凄い力が流れて来て漲るぞー!」


 ムーイの体から大量の魔力があふれだし、両手を上げてムーイがアピールをする。


「……く……うううう」

「ユキカズ? どうした?」


 ドクンドクンとムーイの力の源は元より、ムーイの体を巡回するエネルギーが俺を通って所持している力の源へと循環していく。


「わ、わるい」


 ズルン……と強引に寄生を解除して抜け出す。

 ジュ―ッと皮膚が焼け、触手が一部溶けている。

 そのまま俺は傷の治療を自らに施す。


「キュ!?」

「神獣様!?」

「ユキカズ!?」

「ユキカズの兄貴!?」


 みんなしてぐったりしている俺に声をかけてくれる。


「おい。大丈夫か?」

「ああ……死にはしてない大丈夫」

「ユキカズ、どうしたんだ?」


 ひりひりする全身の痛みを治療しつつ心配そうなムーイの方へと視線を向ける。


「えっと……おそらくムーイに寄生すると凄いエネルギーが発生はするんだ。ムーイもすぐに分かっただろ?」

「うん」

「ムーイ自身の力の源が元々強力だし、カーラルジュの力の源やほかの源を俺が使えないけど所持している」

「そうだぞ。だから全部まとめるとすごい力が出るんだと思うぞ」

「エミロヴィアに寄生した時に生産されるエネルギーからの計算をしてもムーイのを合わせてさらに増してる。なんの効果は分からないけど単純な足し算以外にボーナスがなぜかかかってる気がした」


 これは間違いない。

 総合計は単純な足し算じゃない。ムーイの全身からエネルギーが満ち溢れているようだったし合わせてムーイは力を増していてすごいことが出来そうだった。


「ただな……俺の体が耐えきれないって感じなんだ」


 そう、流れるエネルギーに俺の体が耐えきれず触手と全身がエネルギーで焼かれてしまった。

しかも強化されたムーイの体に圧殺されそうになった。


「邪悪な寄生の化け物が身の丈に合わないエネルギーを受けて焼かれる展開か?」

「そうだよコンチクショウ!」


 結果や経過はともあれ、そういった邪悪な奴の寄生を振りほどくためにエネルギーを振り込んで爆発させるとかあるだろ。

 それに近いことが俺の体で起こったので間違いない。

 ムーイに寄生するとエネルギーが多く発生しすぎて俺の体が耐えきれないんだ。


「えー……ユキカズ、俺に寄生できないのか?」

「そうなる。制御するために内包してる力の源の回路を切ったりはしたんだけどそれでも流れてくるエネルギーが多くて無理だった」


 一体どうしてこんなことになるのかまるで理解できない。

 力の源が無くなっているときはムーイに寄生できたというのに、今はムーイから流れるエネルギーで全身が焼かれてしまうぞ。


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