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二百二十九話


 どうしても俺がエミロヴィアかムーイに寄生する形になるのか?

 今の俺じゃザヴィンの操作が難しい手前確かに悪くない選択ではある。

 俺を通してエネルギーが巡回する訳だし、合意の下でやるわけだから……。


「はあ……これも俺の進化が悪かったのとムーイとエミロヴィアへの教育問題って事なのかな」


 エミロヴィアは加入したばかりだってのに抵抗が無さすぎる。

 まあ……命を救ったって所が大きいのは分かるんだけどさ。

 俺だって、ブルに助けられた時にうれしいような不思議な気持ちになった。

 ブルみたいに颯爽と助ける人になりたいもんだ。

 寄生して命を繋ぐことをしなければ二人とも変な認識を持たずに済んだ訳だし。


「わかったけど……連携を考えるとエミロヴィアが良いかね」


 ムーイは単純に強いし、それなら手数の意味もあってエミロヴィアに寄生して一緒に戦うのが効率的だろう。


「わかったんだな」

「うー……」


 頷くエミロヴィアとは反対にムーイが抗議とばかりに唸る。

 お前の直観力があるのは否定しないけど手数は大事なんだぞ?


「ユキカズの兄貴、オデの胸に穴を開けて入るんだな?」

「その方法だと開けるとき痛いぞ。幾ら痛み止めをしたとしてもな」


 寄生のため相手の体に潜り込む時……如何に気づかれないようにして入り込む訳だがエミロヴィアサイズで入り込む場合、胸だとこじ開けて入らなきゃいけない。

 結構痛いはずだ。

 頭に乗っかって首から操るって手も無くはないが出力を効率よく繋げ辛い。

 本気でやる場合は体内が良いだろう。できれば力の源がある辺りに潜り込むのが良い。


「じゃあどうするんだな?」

「そりゃあ……」


 俺はパッと体の変化出来る部位を昆虫系の魔物に変化させる。

 前にいたずらでやった手段だ。


「あ、あぁああ……」


 ダラダラとエミロヴィアが涎をたらし始め、抗うように顔を手で覆う。


「ユ、ユキカズの兄貴、そ、その手はや、やめてほしいんだなぁああああ……オデ、おかしくなっちゃうんだなぁああ」

「胸こじ開けるよりもこっちのほうが良いんだよ。我慢しなくて良い」

「雪一、お前すっげー気色悪い姿してんぞ」

「エミロヴィアは虫が主食だからな。寄生ってこういう所があるだろ」

「ああ……食い物に擬態して潜り込むってか……化け物」

「うるせえ。寄生しろって言ったのはお前だろ!」


 健人って本当、汚い言葉でやりとりしてしまってしょうがない。

 基本的には本当は丁寧に相手したいんだぞ。


「うー……」


 ムーイが唸りながら睨んでる。

 お前もエミロヴィアみたいに唸らない。


「なんといいますか……大丈夫なのですか?」

「ああ、その辺りは大丈夫だ」


 なんとなくだけどな。寄生魔物の本能って奴。

 酸に基本的に耐性を持ってるみたいでなー。


「ッキュ」


 ラウが健闘を祈るとばかりに親指を立ててる。それ、誰に教わった?

 女好きの狼男からか?

 まあ……ラウは置いて行かれたくないとばかりにムーイの口に入ろうとしたもんな。

 嫌な理解をされている。どいつもこいつも教育を失敗したかと不安になるぞ。


「遠慮するな。今回は実験だしやめないぞ」

「ううう……も、もう……我慢、でき――」

「ホレホ――」


 レって早く手を出せよーって挑発しようとした直後――いきなり視界が暗くなって景色が変わり、ゴクリって嚥下音が時間差で聞こえた。


「お……」


 健人やリイ、ムーイも眼にも止まらぬ驚く速度でエミロヴィアは舌を伸ばして俺を飲み込んでいたそうだ。


「ユ、ユキカズ!?」

「んっぷ……ないん!? だなああああ……!?」


 で、あまりの速さに驚いてムーイが声を上げる。

 エミロヴィアは我慢できなかったことに絶叫を上げてる。

 取り返しのつかないことをしてしまったって反応だ。


「すげー早業、反応しきれなかった」

「し、神獣の申し子様、ご無事でしょうか」


 俺はエミロヴィアの体内に入り込めたので触手を展開して寄生する。

 前回寄生した時と同じくエミロヴィアの体が変化して視界が、エミロヴィアの視線も流れ込んでくる。

 寄生場所は異なるけど内臓からの方が移動はしやすい。


「ゲ……ゲ……ユ、ユキ……兄貴、ごめ」


 エミロヴィアが胃袋をひっくり返して吐き出そうとしてる。

 おお、そういう所は実にカエルっぽい。


「大丈夫だ」


 そこを抑え込んで焦るエミロヴィアを落ち着かせる。


「はい。寄生完了……エミロヴィア? 調子はどうだ?」

「あ……ユキカズの兄貴、だ、大丈夫なんだな?」

「ああ。気にするな」

「そ、そっか……あ……ああ……」


 すりすりとエミロヴィアは無意識にお腹をなでる。


「今までで……一番の味なんだな。美味しかったんだな。ごめんなさいなんだな」

「そうか……」


 俺の味に関する感想か。


「余韻をしばらく楽しんでて良い。ちょっと体を確認させて貰うぞ」

「わかったんだなー……」


 気持ち悪くなっていないなら良い。そんな訳で確認っと。

 なんかエミロヴィアの体がカッと力が増したようだ。

 ムーイに新しい菓子を食べさせた時と同じ反応だ。これ。

 この方法で寄生するだけでエミロヴィアの体は成長するっぽい。

 ドクンドクン……と、俺の体の中にあるエネルギーが大きく循環している。

 前回寄生した時よりも出力が出てるな。

 呆けているエミロヴィアの代わりに体を操作。

 毛皮を被ったカエルって感じだけど何人かを乗せて移動も出来そう。

 四つん這いになって確認。


「リイとラウ辺りは乗せられそうだな」


 出力的に問題なさそうだ。

 まあ、ムーイも同じことが出来るだろうけどエミロヴィアの方が四足で歩きやすい。


「さて」


 手を握ったり開いたり、背伸びをしてと。

 四つ足で歩くのは問題無く出来る。神経接続は前回より丁寧に繋げたから違和感も殆ど無い。

 問題無くエミロヴィアに寄生できた。


「とりあえずリイとラウ辺りは背中に乗せて移動出来る様にはしてみたいから背に乗って見てくれないか?」

「承知しました」

「ッキュー」


 俺の頼みでリイとラウが背中に乗る。

 カエルっぽいエミロヴィアだから背中に乗りづらいかも知れないが、できる限り腰掛けやすいようにする。

 俺の毛皮部分が表層にあるから引っかけはしやすいか。


「乗れましたよ」

「キュ」

「んじゃちょっと移動な」


 てくてくと手足を動かして移動を確認。

 特に重さは感じない。問題は無く動けそうかな?

 力の源によるエネルギー循環も問題は無い、エネルギー以外の栄養素的な欠乏は大丈夫そうだ。

 俺からの供給もある。

 懐かしいな。ムーイに寄生した時と似た感じだ。


「乗り物としては問題無く使えるみたいだ。エミロヴィア、助かる」

「なんだなー……」


 まだエミロヴィアは俺の余韻に浸っている。

 そんなに美味く感じてしまったのか?


「ま、最悪ラウを乗っけて移動出来りゃこの面子なら大丈夫だろ」

「それを言ったらラウ位なら俺が持てば空だって飛べるけどな」

「キュー!」


 ラウは軽いからなーそれくらいなら高速で飛び回れる。

 機動性だけなら負けないぞ。


「で、そのカエル。植物を生やす能力があるみたいだけど、ほかに何が出来る訳?」

「それだけありゃ良いとは思うけど能力確認は大事か。ちょっとターミナルで確認してみる」


 俺はターミナルポイントにアクセスしてステータスを確認する。

 今回は俺のステータスは除外でエミロヴィアの能力確認っと。


 宿主 迷宮種エミロヴィア Lv?

 所持スキル いばらの魔女 インセクトグロウ 貯蔵 伸びる舌 潜水 吸盤 水属性無効 言語理解 動体視力 潜伏 毒生成 自動回復(小) ブレス 世界の断片 巨大化 合唱 ??? ……


 ほう……これがエミロヴィアの能力か。

 ムーイよりも表示される能力が多いな。


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