二百二十八話
「まあ……竜騎兵用の剣よりも高性能な武器とか防具があったら確保はしておきたいか」
俺もムーイも体の形状がコロコロ変えれる所為で防具って概念がやや薄いけどあるに越したことはない。
「他に迷宮種が近くにいるかもしれねえから調べながらな」
「後は買い出しなどですが……神獣様とムーイさんがいらっしゃれば食料は基本問題ありませんからね」
「そこのカエルも組み合わせれば食事はマジで困らねえだろうぜ」
ああ……肉は魔物を狩って、野菜はエミロヴィアに出して貰い、他の必要な代物はムーイに変化させて俺がデザートを作る。
……確かに食事は困らない編成だ。全く無駄なことをしているようにも見えるけどさ。
「ユキカズの兄貴たちに喜んで貰うために頑張るんだな」
「あー……うん」
ちなみに俺はデフォルトで鑑定が出来るので料理が食べれるか毒が入っているのかとかの判別はできるぞ。
エミロヴィアも自らの能力で食料確保が出来る事には不満は無いようだ。
「あとはあれだぜ。ユキカズ、サイとマンイータージャイアントグリズリーをどうするんだ?」
サイってザヴィンの事か。
「ザヴィンは正直……使いづらい。Lvを上げればどうにか出来るかと思うけど……現状だと無理」
本気で力を出すと蘇生しかねないし、操るために洗脳状態にするのは俺のポリシーに反する。
つぶすのは良いけど超えてはいけないラインだと思うのだ。
「別に俺はムーイやエミロヴィアを洗脳して連れているわけじゃないんだからな」
「かといってマンイータージャイアントグリズリーでこの先、戦えるのか?」
「移動用と割り切ることはできるけど……さすがに大分厳しくなってはいるか」
上手いこと生命維持はさせられるマンイータージャイアントグリズリーの方は扱いやすくはあるけど戦闘面で不安は残る。
ザヴィンは生命維持も出来ず徐々に腐っていくだろうなぁ……いや、定期的に俺が力を流せばいいんだけど。
それも限度はある。
「マンイータージャイアントグリズリーも長期運用は限界が来るか……」
「ザヴィンを苗床にしちまえよ」
「ポンポン出来る手立てじゃねえよ」
カーラルジュの時は緊急手段だっただけでまた出来る訳じゃない。
「正直……素材にでもして武具とか何かに有効活用すれば良いんじゃないか?」
ザヴィンの皮膚はあれで結構頑強なので皮装備でも性能は高いだろう。
健人が扱うには良いだろうし、武具にした際に優秀な効果のある代物にだってなるかもしれない。
「わかったよ。んじゃ村の連中にちょっと聞いてみるかね」
「神獣様、本当によろしいので?」
「ああ、マンイータージャイアントグリズリーもそろそろな……また必要になったら戦闘中に魔物に寄生して確保する」
って事でザヴィンとマンイータージャイアントグリズリーは解体処理を行うことに決まった。
それから俺のLv上げをするために少し遠征してから出発しようと決まった訳だけど……。
「で……そのカエルも戦わせるんだよな?」
「ま、任せてほしいんだな。頑張るんだな」
「って言っちゃいるが、こいつに迷宮種の力の源でも与えんのか?」
そりゃあ、ムーイがいらないって言うし仲間として戦うなら与えてパワーアップしてほしいもんだが。
「オ、オデいらないんだな! 大丈夫なんだな。ユキカズの兄貴は気にしてくれてるけど貰うのは悪いんだな」
エミロヴィアもなんか力の源に関して遠慮している。
「ムーイがいらないみたいだから遠慮はしなくても良いが、本能的に求めるはずなんだよな?」
ムーイを含めた迷宮種って力の源を奪い合っているらしいのだけど、ムーイとエミロヴィアの反応からして怪しい。
「確かにその感覚が無いというのは否定しないんだな。けど、オデは何もしてないのに貰うのは嫌なんだな」
何より……と、エミロヴィアは小さく零す。
兄貴の力の源には触れるのが怖いんだな……と。
まあ……食性は元より思考とかも影響を受けかねないのか。
力の源を集めた迷宮種は体つきが変化するし食性も変化する。
フレーディンがあんな暴挙に出たのもそういった影響がないとは言い難い。
こう、エミロヴィアってこの辺りは義理堅いというか、大人しい個体なんだろう。
ザヴィンの力の源はムーイ向けだと思うけど……フレーディンが触れたって事で嫌がるし。
「どんくさいみたいだしどうにも不安だぜ。あ」
ポンっと健人が閃いたって顔をしている。
非常に嫌な予感!
「ならよ。昨日みたいに雪一、お前がエミロヴィアに寄生すりゃいいんじゃね?」
「えー!?」
ここでムーイが声を上げる。
「ケントもそう思うのか? ユキカズ、またエミロヴィアに寄生するのかー?」
「いや……そんな手を当たり前のようにするのはエミロヴィアからしても嫌だろ」
幾ら迷宮種に寄生すると力の源が循環し始めて力が増すと言ってもさ。
「きっとユキカズの兄貴はオデの体をオデよりも使いこなせるんだな」
「お前は何を言ってるんだ?」
ムーイみたいに寄生されることを受け入れるな。
なに? 迷宮種ってデフォルトでそう言った直感持ってるの?
「良いんじゃね? この案。ザヴィンは抑え込むのがきついんだろ? そこのカエルは合意してんだから問題ねえ事になるな。上手くすりゃ乗り物代わりにも出来そうじゃねえか」
そんな話をしてもなー……というか嫌がらないエミロヴィアはどうなんだよ。
「嫌なら我慢しなくてもいいぞ?」
「大丈夫なんだな。ユキカズの兄貴が望むならオデの体を使ってほしいんだな」
「ユキカズ! エミロヴィアは良いのにオレはダメなのかー?」
まだ良いとか悪いとか言ってないだろうにムーイが間に入り込んで詰め寄ってくる。
なんでお前は寄生されがってるんだよ。
「とりあえずムーイとエミロヴィアはそこに座れ」
「なんだな?」
「実験かー?」
ムーイとエミロヴィアが揃って俺の指示通りに座る。できれば正座させたいが今は良いだろう。
「違う。良いかお前ら、どうもお前らは激しく勘違いしているようだから言うが、俺が寄生するって言うのは良いことじゃないんだぞ? 体の中に異物が入り込んで悪さをするようなものだし、俺だからいいものをほかの奴に同じことをされたらどうなるか分かったもんじゃない」
「ユキカズみたいのがいっぱいいるのかー?」
「なんだな?」
「いや……俺もそんな居たら嫌だけど……」
ただ、パラサイトが迷宮種に寄生して進化したら俺と同種になりそうじゃないか?
そう易々と迷宮種の体に寄生して進化出来るやつがいるかはわからんが。
「でもユキカズはそんなことしないとオレ、信じてるぞ。ユキカズ以外には寄生されたくないぞ」
「オデも! 助けて貰ったんだな」
「オレが先に助けて貰ったんだぞ!」
ムーイがなんか張り合ってる。張り合わんで良いから。
「俺は助けてもらってねえぜ!」
「それは何の主張だ健人?」
健人も悪乗りするな!
「オデはあの時、兄貴に殺されてた身……ユキカズの兄貴がオデを苗床ってのにしたいなら……しょうがないんだな」
「いや、そんな真似しないからな? どんだけ俺を外道だと思ってるわけ?」
ダウナーにならんでくれない?
そんな上げて下げる真似してどうするんだ。
俺はそんな汚れてない!
寄生能力を持つってこんな疑いされるのか……覚悟は持っていたけど辛い。
何より信頼が痛い……その信頼を裏切る真似なんてしたくない。
ムーイも別にそれで良いみたいなことを言ってたけど、迷宮種は揃いも揃って純粋すぎるだろ。
腹黒い奴も居るけどさ。
極端すぎないか?
「うん」
「なんだな」
なんか空気が悪い二人なのにその辺りは視線で分かってますって顔しないでくれない?
「とにかくよ。良いからどっちか寄生して見りゃいいだろ。これからの戦いで上手く戦うには良さそうじゃねえか」





