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二百二十三話


「――」

「あ、ヤバイ」


 意識が戻ったっぽく暴れようとしているので頭を潰そうとしたんだけどすぐに再生し始めた。

 なのですぐに分離した。

 ぐたっとザヴィンは動かなくなる。

 俺に収められている力の源から流れるエネルギーで再生力が上がってしまっているっぽい。

 エミロヴィアはこの辺りの操作を完全に俺に任せているというか力が弱いからどうにかなったけどザヴィンは押さえ込めるかかなり怪しかった。

 迷宮種ってしぶといな。

 フレーディンも力の源を持たせっぱなしだったら時間経過で蘇生するのは間違い無い。


「ユキカズ?」

「片手でちょっと動かす程度なら問題ないけどしっかりと寄生すると蘇生するっぽい。完全に頭を潰しても再生し始めた。時間が経過するとこりゃあ復活するぞ」


 潰しきれば良いのかも知れないけど肉体の再利用って運用だと洗脳でもしないと難しいぞ。

 寄生によるパワーアップを最大限使いこなす便利ボディにするのは無理か。

 薄いバイパスで繋げるのが良いのかも知れないけど、そうすると今度は出力が出ない。

 難儀な問題だ。


「そっか! じゃあオレに寄生するんだな!」


 カモンカモンとしているムーイの額を手で小突く。


「却下」

「えー……それ以外いい手がないぞー?」


 まったく、寄生された経験があるのになんでそんな嫌がらないのか。


「俺が強くなればザヴィンを暴れさせずに操作できるようになるかもしれない。その為に出発だームーイ」

「おー!」


 という訳で俺達は近場で魔物を相手にLv上げを行う事にした。

 周辺の探索は既に飛んで終えているのでどこら辺に魔物がいるかは一目瞭然だな。

 ついでに飛んで確認しながら行けば良いだけだし。


「ユキカズと一緒ー懐かしいなー」

「まあな」


 この辺りで出て来るのはワインレッドクイーンパンサー、ジャスパーグリーンブレードウルフ、スマルトホーンディア、タンジェリンオレンジディノイクスか。

 なんて思って居るとタンジェリンオレンジディノイクスの群れと遭遇した。

 小型恐竜みたいな魔物だな。近いのはラプトルだけどやや体格が大きい。


「ギャッギャ!」


 威嚇気味に俺達を取り囲みながら鳴き声を上げ、敵意を見せている。

 一斉に襲いかかるって算段だな。


「ユキカズ! やるぞー!」

「ああ」

「ギャッギャ!」


 タンジェリンオレンジディノイクスが俺達に向かって一斉に飛びかかる。

 あ、後方に一回り大きいタンジェリンオレンジディノイクスが居る。群れのリーダーだろう。

 と、思って見るとしっかりと名前にタンジェリンオレンジディノイクス・リーダーって名前だった。


「とー!」


 ガスッとムーイが懐かしい素手での殴打でタンジェリンオレンジディノイクスを殴りつける。


「ギャ――」


 ボキィ! っとヤバイ音が響いて一発でタンジェリンオレンジディノイクスは絶命した。

 ああ、懐かしい……ムーイとのレベリングの日々。

 やっぱりお前は強いよな。


「喰らえ!」


 パラボナラビットの耳に模した耳で器用に二匹のタンジェリンオレンジディノイクスを掴み、両者の頭をぶつけ、上に放り投げると同時に蹴りを加える。

 竜騎兵用の剣を使わなくても強くなったなー。

 俺の出る暇が無いんだけど?


「ギャギャ!? ギャー!」


 あ、勝てないと判断したのかタンジェリンオレンジディノイクス・リーダーが撤退の声を上げる。

 悪いな逃がすと近くの村が困るんだ。

 って事で逃げる先へと回り込んで魔眼でフラッシュを放つ。


「ギャ!?」


 魔眼が上手く効果を発揮してタンジェリンオレンジディノイクスは目を回し始めた。


「どんどん行くぞー!」


 ゴスゴスとムーイが敵無しとばかりに出て来るタンジェリンオレンジディノイクスを倒して行った。

 もちろんリーダーは早々に仕留めた。

 今の俺とムーイなら勝てない相手じゃない。

 もう少し大型の魔物がいないか後で偵察して探すか。


「トドメー!」

「ギャギャ――グギャ――!?」


 ってムーイが手をかざすと最後の一匹のタンジェリンオレンジディノイクスが飴細工に変貌する。

 うん……結構エグいよな。

 ムーイの固有能力。お菓子作りの材料を生成する能力では本来無いのだ。

 ムーイの話だと相手が魔力で抵抗したら失敗もあるそうだ。抵抗できるほどの魔力を出すのが難しいと思うんだけどね。


「んー……ユキカズのお菓子よりやっぱり下ー」


 ペロペロと飴細工にしたタンジェリンオレンジディノイクスを舐めると感想を漏らした。


「そういやムーイ」

「なんだー?」

「変化させて美味しくなったって例はあるのか?」


 前にも聞いたような気がするけど確認だ。


「えっとなー強い奴を変えると味が良くなるぞ。だけどユキカズのより美味しくなった事は無いぞ」


 ある程度差はあるけど限界はあるか。

 何にしても便利な力だな。

 劣化コピーになると言っても便利なのは変わらない。


「そうか」

「ユキカズーなんか前にユキカズと穴に住んでた頃を思い出すなー」

「ああ。あの元拠点はどうなってるだろうな」


 飛んで行けばそんな時間を掛けずに行けそうではある。

 けど帰るつもりはない。


「ユキカズ、あそこに何時か戻る?」

「……たぶん、戻らないだろうな」


 俺の目的はみんなの世界に戻る事で、ムーイも連れて行く考えだ。

 まあ……ムーイをみんなが受け入れてくれるかなんて分からないけど、あの仮拠点に戻る未来はない。

 元々強くなったら移動を予定してたんだ。

 ムーイが便利すぎたお陰で拠点が拡張してしまっていた訳で……結果的にカーラルジュが来たお陰で旅に出られたとも言えるか。

 じゃなきゃ何時までも俺はぐだぐだとあそこでムーイに頼んで戦って貰って居ただろう。

 今は色々と刺激に満ちた行動のお陰で、出会う魔物の解析はドンドン進んでいる。


「オレ……あの頃みたいに一箇所で行動するのも好きだぞ。みんなで過ごすと楽しそう」

「まあ……安定を望むと自然とそうなるだろうな。ただ、今は目的があって行動してるから難しいな」


 兵役中、俺は一箇所に止まるってのは中々無かった。

 現代風に言うなら転勤族な感じか。

 けど、そう言った生活ってのも将来はあるかも知れない。

 冒険者なんか一つの村や町を拠点に周囲の迷宮に挑んで日銭を稼ぐとかあるそうだ。

 元の異世界に戻った時に、そんな生活が出来たら楽しいだろうなぁ。

 ……しっかりと兵役を終えれたらだけど。


「いつか、またそんな時が来るだろうさ」

「そっか、わかったぞー」


 ふと思ったが、現状俺って行方不明扱いなんだろうか? MIAって奴。

 この辺りの翻訳はしっかりと出来てるんだ。日本に居た頃の軍関連の専門用語は多少知っている。

 Missing In Actionの略でMIA。日本語だと作戦行動中行方不明。

 戦死の場合はKIA。Killed In Action。

 戦死は確認……グレーゾーン何だよな。ライラ教官達は俺が臨界を迎えるのを見届けていた訳だし……。

 そうなると俺の階級どうなってんだろ?

 死亡扱いだと二階級特進で曹長か……原隊復帰で戻るので伍長のままかね。


 何にしても今は強くならなきゃな。

 聖獣って奴とまともに戦えるくらいにならなきゃいけない。

 ムーイに頼れば楽勝……とは言い難い相手だろう。

 どうもムーイの直感は俺がムーイに寄生すればより強力になるって感じて居るみたいだけど、健人達との連携も考えないと勝てる相手にも勝てない。

 出来れば俺とムーイが別々に動けて相手を翻弄できるのは理想だ。

 一人が強ければどうにかなるなんて幻想だと俺は想う。

 異世界の戦士の力を振った藤平やトーラビッヒが良い例だろう。

 俺とブル、フィリンやライラ教官が力を合わせれば勝てる所にまで出来た。

 正面からの激突ってのは選択肢の一つでしかない。

 手札は多いに超した事は無いのでムーイの案は最終候補だ。

 それを言ったらムーイに寄生して異世界の戦士としての力を発動させるのが最高出力となる。


 ただ……その分、ムーイの体を蝕む危険性を孕んでいる。

 普通の人間よりも頑丈だし侵食率を下げれると言う長所があっても侵食率の進みが早いので長期で使用するとムーイの体の体積が減ってしまう。

 生命保護優先までになった時、ムーイが片手サイズになっちゃいましたじゃ笑えないぞ。

 ……侵食した分、俺の体積が増えるようだけどそれってつまり俺はムーイを喰らっている事になる訳で。

 そんなつもりで一緒にいるわけじゃない。


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