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二百二十二話


「ムーイの戯れ言は程々にマンイータージャイアントグリズリーの方も早く取ってこないとな」


 じゃないと死肉として野生の魔物に奪われかねない。

 俺が操作しないと延々と眠っているような状態だし。

 手を伸ばして牽引してくれば良かったと今にして思う。

 ……牽引ってなんかイヤだな。

 俺は一体何なんだ?

 やっぱり俺は化け物になってしまったと突きつけられて憂鬱だ。


「むー……」


 なんかムーイが抗議してるけど気にしない。


「ラウ、今回の事は気にするなよ?」

「ッキュ」


 ラウの方はもう機嫌は良くなったようで素直に頷いてくれた。


「そんな訳だから健人とリイもゆっくり休んでいてくれ。ムーイはラウと遊んであげて」

「あいよ」

「わかったぞー」

「神獣様は働きづめなので休息をして頂いた方が良いかと……」

「そこまで疲れちゃいないから気にしないで良いよ」


 って事で俺は羽を広げてマンイータージャイアントグリズリーを取りに戻る。

 歩きよりもやっぱり飛べるってのは便利で良いもんだ。


「……」


 で、マンイータージャイアントグリズリーの体を取りに戻ると、エミロヴィアはずっとフレーディンの墓標の前で佇んでいた。

 今は声を掛けるのはやめておこう。

 という訳で足早にマンイータージャイアントグリズリーの体を俺は持ち帰った。




 少し経った後、みんなの無事を祝う為に村で厨房を借りてお菓子作りを行う。

 戦勝会でもあるか……一応。

 今回は若干不機嫌なムーイへ、チョコレート菓子作りを行う。

 駄菓子を作ろう。某宇宙船の名であるお菓子を作った。

 ピンク色にしたチョコと普通のチョコを溶かして山形の型で成型し、冷やして完成だ。


「おー……懐かしいもんを作ってるな。異世界であの菓子を食うとは思わなかったぜ」

「ユキカズの世界のお菓子ー! これって何なんだ?」

「月へ行く宇宙船の名前を模した菓子。確か地球へと戻るモジュールを模したものだっけ?」

「そうなのかーでもチョコレートを固めただけなのと何が違うんだー?」


 ……まあ、一口チョコって所には何の違いも無いかも知れない。


「むしろ雪一、お前イチゴチョコレートをどうやって確保したんだよ」

「そこはスイートレッドベリィを調整して再現した」


 イチゴ味な要素があるからできる限り近づけたに過ぎない。

 イチゴ味のチョコレートとかもこれから再現できるぞ。

 それこそ、細長いビスケットにチョコレートをコーティングしたお菓子だってできるし、それのイチゴ味もできる。


「そんでムーイ、今日は前に作ったキノコのチョコもあるぞ」

「わーい! やっぱりユキカズが作った方が美味しいぞー!」


 モムモムとムーイがキノコのお菓子を食べてる。本質は同じクッキーにチョコレートなんだけど、ムーイの中では別お菓子らしい。


「おやキノコか。タケノコは作らねえのか?」

「言うと思ってタケノコの方も作ってる」


 クッキー部分に独特の加工を施してチョコレートでコーティングした代物だ。


「ミルクとビターチョコレートの構造も再現してるぞ」

「チョコレートの量はやはりキノコの方が多いなー!」

「やめろ! 争いになる!」


 異世界に来てまでキノコとタケノコの争いを見るつもりはない!

 クラスメイトは元より世間でもしょうもない争いを見聞きして覚えている。


「ここまで再現とか、やっぱすげえな。異世界菓子職人」

「兵士! 冒険者志望の兵士だから!」


 俺は異世界で菓子作りをしにきたんじゃない!


「菓子を作って大成功って感じになる話じゃねえの? お前の人生。お菓子チートで異世界無双しろよ。その方が絶対上手く行くから」

「おい。健人、お前はこんな体で菓子職人って本気で言う気か? というか黙れ」


 今の姿はマスコット姿だが、その正体は他人の体に寄生する化け物となってきてんだぞ。

 魔物化したときの最初の姿なんてフライアイボールだった訳だし。

 これが異世界で菓子職人になる話だったらとんだ笑いぐさだぞ!


「できてるなら良いじゃねえか。便利に手を何本も生やすし熱線や冷凍光線完備って菓子作りの為に人間辞めたと言われても納得してやるよ」

「そんな理由で人間辞めたわけじゃねー!」


 何その謎の理由で人間辞めさせられる設定。

 勘弁してくれ!


「俺に気色悪いコーラ飲ました事を忘れたとは言わせねえぜ」

「忘れたって言ってやるぜ」


 健人の挑発に乗ってやる。

 飲みたい言うから再現してやったんだろ。汚いって所は否定しないが使えるもんは使ったに過ぎない。


「ぐぬぬ……」

「仲良く喧嘩してますね。ケント」

「仲良くねぇ!」


 リイの指摘に健人が言い返していた。


「ユキカズのお菓子ー!」

「キュー!」


 ラウも食べたいって目をキラキラさせているのでリイに聞いた所、大丈夫だそうなので少し食べさせる。

 赤ん坊に定番のたまごボーロだ。

 カリッとした食感と溶ける感じの味わいが独特だな。

 実は菓子の中で俺が食うのはちょっと苦手な味だけどラウの為に再現した。なんかこう……独特の癖が苦手なのだ。

 少しは元気になってきたかな?


「さてと……偵察でもしてくるか。話によるとまだ近場に迷宮種が居るんだったか? ムーイ、出かけた先でエミロヴィア以外の気配あった?」

「無かったぞ? てっきりオレ、アイツが全て集めたと思った。たぶん、見たって人はフレーディンの姿が変わって見間違えたとかなんじゃないかー?」


 ああ……なるほど、フレーディンを別の個体と見間違えたって感じか。

 ありえるな。


「そうかもしれないが調査はしておくべきだろう。ついでに変身バリエーションの為に経験値稼ぎしてくる」

「ならオレも行くー! ユキカズと戦いたいー」


 ムーイが挙手して居る。

 あんまり今回は暴れられなかったもんな。まあ……ムーイが居るなら俺が見てるだけで良い訳だけど。

 そのくらい、ムーイの方が強いわけで。


「問題を解決した後なんだし、少しくらい休憩しときゃ良いんじゃね?」

「そこまで疲れちゃいねえよ」

「おー若いって良いもんだねー」


 健人が何か寝言を言ってる。

 言うほど疲れるもんか?


「先ほども述べましたが神獣様は働き過ぎかと存じ上げます」


 なんかリイにまで言われてしまった。俺ってそんなに働いてる?


「お昼寝するか? それでもオレは良いぞー」

「キュー!」

「そこまで働いてるっけ?」

「はい。正直、働き過ぎです」


 リイに断言されてしまった。

 うーん……? スタミナ回復力向上の効果で睡眠時間が短い自覚はある。

 トーラビッヒの所に比べりゃそこまでって感じなんだが。

 まあ……アレは完全にブラックというか潰しに来てるよな。

 周囲に休めと言っておきながら俺は休んでないのは良くないと。


「今後の事を考えたら少しでもLvを上げておきたい。だから少しムーイと見回りしてくるよ。その後、疲れてたら寝る」

「分かったぞー! おー!」


 なんかムーイが不機嫌っぽかったし暴れたりずにストレスが溜まっているのかも知れない。


「おうおう。元気な事で、んじゃ俺達は村で休んでるよ」


 そんな訳でムーイと二人で狩りに出かける事にした。

 村の人たちに話を聞くと昨日の見回りで健人やムーイが大分チラしてくれたけど次に行く街道辺りで魔物の出現報告が多くて困っているとの話だ。

 丁度良いので討伐するとしよう。


「やったー! ユキカズと一緒ー!」

「ムーイとだけ出かけるのは久しぶりに感じるな」


 ラウを拾ってから健人と出会って……あれからそんなに経ってないのに長い時間を感じてしまうもんだ。

 で……俺はどうやって戦えば良いのかねー。

 ザヴィンの体にでも入り込んで戦えば良いのか?

 まあ……練習って事では良いかもしれない。

 って訳で俺はザヴィンの体に入り込んで動かすことにした。

 地味に装甲が分厚いサイっぽい生き物って感じ。

 入り込む為に穴を広げて潜り込む事にした。

 ……よく考えるとグロいな。後で風呂に入りたい。

 俺が出る度に実質死ぬに等しいので長時間持つか怪しいな。

 かといって力の源を入れておくと意識を取り戻して暴れられかねない。頭を潰しても再生しそうで恐いな。

 よく知らない迷宮種の体に寄生するってのは、本当……運用が難しいもんだ。

 で、俺が寄生するとやっぱり独特の変化なのか上半身に毛皮が生え、尻尾が露出する。

 一発でバレる見た目してんな。

 エネルギーが大きく循環していく。


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「便利に手を何本も生やすし熱線や冷凍光線完備って菓子作りの為に人間辞めたと言われても納得してやるよ」 ↑好き
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