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二百十四話


「ただいまー」

「あ、ユキカズおかえりー」

「ッキュー!」


 村を飛んで行くとラウと一緒に散歩しているムーイを発見したので近くに着地した。


「良い子にしてたか二人とも」

「もちろんだぞーケントと一緒に近くに魔物がいないか見回りして少し倒したぞ」

「そりゃ何より」


 こっちには特に問題は無さそうで良い事だ。


「健人達は?」

「料理を食べるところに居るぞー」


 酒場とか定食を扱っている所にいるのか。

 リイは……村の中だからムーイにラウを任せたって所か。


「じゃあ健人の所に合流だな」

「おう」


 って事で健人に合流、この辺りの周辺調査の進行状況を報告した。


「目的の獲物は見つけきれなかったか」

「ああ、それとムーイ」

「なんだー?」

「お土産」


 ドン、っとスイートレッドベリィを出してムーイの前に置く。


「わー! なんか凄い果物だぞ」

「凄く甘い果物を見つけたから持って帰ってきた」


 エミロヴィアから貰ったってのは黙っておこう。

 じゃないと色々と面倒だし、俺……アイツの事を気に入ってるから逃げ延びて欲しいなーって思うし。

 ムーイがスイートレッドベリィを頬張る。


「んー! 凄く甘いぞユキカズ! ありがとー!」


 ふふ、エミロヴィアと似たような嬉しそうな反応。

 もらい物をそのままあげてるって所に罪悪感を覚えつつ、加工するためにムーイには覚えて貰わないとな。


「後でそれを使って色々と作るから楽しみな」

「わーい!」

「きゅー!」


 ラウもムーイにスイートレッドベリィを分けて貰って頬張っている。

 もうミルク以外も口に出来るようになってきたって事か、成長が早いな。


「で、話を戻すけど地形に関しちゃ把握出来た。後はターゲットの居場所を見つけるだけだから……健人とムーイの探知能力頼りに俺が先行して行けば良いかと思ってる」


 と、俺は少しだけ羽ばたいて浮かび、壁に向かって周辺の航空写真と地形だけを脳内で編集して映す。


「おー……凄い便利だな」

「こんくらいはな」


 記憶を元にムーイに昔話をする際にやっていた事だ。

 それと原理は一緒でわかりやすく地図を見せるのが好ましいだろう。

 で、マーカーを出しつつ目標の迷宮種が居そうな場所とそれまでの行程を道筋で表示させる。


「この道を使えば安全に移動出来ると思う。後は健人の鼻とムーイの気配把握で大雑把に居場所を特定、討伐に入る。二匹居るはずなんだけど両方とも見つけれて無いのが痛いな」

「すっげえわかりやすいな。なんだかんだ言って兵役経験ある奴と冒険者紛いで戦いがメインだった俺とは行程が違うぜ」


 健人の場合は斥候とか味方がやってくれた事なんだろうな。

 俺も兵役経験はそこまで長い訳じゃ無いけど……まあ、色々と座学で学んだ事は未だに役立っている。

 ちなみに偵察中にエネルギーが溜まりすぎて困ったが、その際はカーラルジュの能力である潜伏能力をフル状態で発動させて飛んでいた。

 高圧力の魔眼は目が痛いからなぁ……撃った後しばらく焼けた目の回復をさせないといけない。


「ここまで精密な地図、助かりますね」

「リイは危険だからラウと一緒に留守番をしてて貰いたい所だけどね」

「私が居る場合、足手まといになりかねないのは承知しています。ラウと一緒に留守番ですね」

「きゅー!」


 ラウは付いていきたいとばかりに抗議してるけど今回はさすがに譲れない。


「ま、日が暮れてるし早めに休んで明日出発って事になるけどさ」


 幾ら俺が照明代わりになると言っても夜の闇は馬鹿に出来ない。

 まだ件の相手を見つける事すら出来てないんだから明日の捜索だって討伐というよりも斥候だ。

 二匹とも見つけたい所ではあるな。

 それと溢れるエネルギーでできる限り村のバリアをブーストしておくか。


「ラウには後で件の相手と戦ったらムーイと健人の勇姿を俺が見せてやるから大人しくしてるんだぞ」

「きゅ!」


 それでもラウは不満そうなご様子。

 足取りはおぼつかないけど周囲を歩き回っている。

 何処へ行くかわからないから目が離せないな。

 駄々を捏ねるお年頃って事かね……赤ん坊の成長は早いもんだ。


「あいよ。ま、周辺の雑魚散らしはしたし処理した魔石や肉で村の連中にも感謝されてる。明日は本腰入れて行くぜ」

「おー!」


 って事で俺達は明日に備えて早めに休む事にしたのだった。

 とは言いつつ……俺はスタミナ回復力向上の所為で短時間睡眠で良いわけだけど。

 ……ムーイに寝る前に複製して貰ったスイートレッドベリィでお菓子の試作品を色々と作っておこう。


「ん?」


 なんか遠くで音がしたような? ピリッと何かする。

 気になったので音がした方角へと顔を向けると……村の酒場で何やら賑やかな音色が響いていた。

 ああ、村の人たちが楽器とか使っていたのかな?

 神獣の申し子って認識の俺が来訪したって事で祈られたし、就寝してるけど祝う感じで。

 リイの村でもそこそこ手厚い祝いが催されたもんな。

 という事で色々と菓子作りを俺はしていた。


 まさかその所為で非常事態を事前に防ぐ事が出来なかったとは微塵も思わずに……。




 翌朝、ムーイと仲良く寝ていたはずのラウが……姿を消した。


「おーい」

「何処行きやがったー?」

「ラウー」

「ラウさーん」


 っと俺達は村の中を探して回る。

 もちろん村の人たちにもお願いして捜索して貰って居る。

 朝頃、菓子作りを終えて寝ているムーイの元に戻った時、既にラウはおらず何処へ行ったのかとなった。

 夜泣きとかしなくなって一安心と思っていた所だったのが痛い。

 最初は置いて行くのをすねて隠れているのかと思ったけど出て来る様子も無く。

 健人の嗅覚を頼りに探したのだけど村の広場でフッと匂いが消えてしまっていたのだ。

 一体何処に行ったのか……。

 俺も空を飛んで村の中を必死に目で確認するのだけどラウの姿が全く確認出来ない。

 温度センサーで何処かに隠れてないかまで使用したのに見つからないとはどういうことだ。


「ラウもやんちゃな盛り……って訳じゃ無いんだろうが、こりゃあ大変な事になりやがったぞ」

「そういや昨日……夜中になんか変な音を聞いたような気がするんだよな」


 もしかしたらアレが何かの合図だったのではないだろうか?


「ラウさんの話を村の方々に聞いたのですが、昨夜……村の子供達が夜間に出歩いていたとの話です」

「出歩いていたって夜更かしって訳じゃねえんだろ?」

「はい。どうも子供達は覚えが無く、大人が見つけて注意した所で気付いたとの話で……」


 ……なんか嫌な予感というか空気が漂ってきたな。


「ラウ以外で行方知れずの奴はいるのか?」

「今の所は見つかって居ませんね。ただ……」


 ふと、嫌な感覚が脳裏を掠める。

 この村に入る前に遭遇した迷宮種、フレーディンとエミロヴィアだ。

 ラウの様子がおかしかったが、もしやフレーディンの何らかの力でラウが連れ去られたと考えるとあり得る。


「匂いが途切れてるのはそこで袋でも何でも良いから入れてガキ共と操って村の外へ運んだって所か。ご丁寧に痕跡を消せば出来なくはねえな」


 面倒くせえ事をしやがって、と健人が愚痴る。

 よりによってなんでラウが? と考えた所で狙いがムーイならば十分にあり得る。

 ラウを人質にムーイから力の源を奪うって考えか。


「アイツらがラウを連れてったって事か! うー!」


 ムーイが耳を立てて怒りを露わにする。

 俺もイラッとするがここは冷静に対処しないとカーラルジュの二の舞だ。

 エミロヴィア、お前もこれに関わって居るなら容赦はしないぞ。


「アイツらが犯人なら絶対に許さないぞ!」

「こりゃあ急いで探さなきゃいけねえな」

「そうだな……ムーイ、急いでアイツらを探すが気配が分かるか?」


 健人はムーイの気配がでかすぎて探知仕切れないのでムーイが頼りだ。


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