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二百二話

 そうこうしているうちに、クリムレッドオルトロスの群れを倒し終わり、辺りは静かになった。


「いやーすげー楽勝だったな。やっぱお前等つえーわ」

「それは健人もだろ」


 Lv155もありゃオルトロスを倒すのはそこまで難しく無いだろう。

 あの頃の俺達ってひよっこも良い所だった。

 なんだかんだしっかりと育った人間……狼男なら勝てない相手じゃない。

 普通は竜騎兵が必要になるはずなんだけどさ。

 俺の場合は体が魔物扱いだからな……ムーイは迷宮種って魔物なんだし。


「力の源を取り戻す前の俺とムーイだったら死んでただろうな」


 それくらいの驚異的な相手であるのは間違い無い。


「そうなのかー? なんかユキカズが援護してくれたお陰で簡単に倒せたんだと思うぞ?」


 まあ……魔眼を使って相手の能力低下をしていたからなぁ。


「幻影を見せたり、防御低下の魔眼を掛けて毒液を吹き付けたりしたからだな」


 さすがにムーイや健人みたいに正面から相手を殴り倒すのは、見た感じだと俺の力では難しいと判断した。

 いずれは正面から戦って勝つような強さが欲しいけど俺ってなんだかんだこういうポジションに落ち着いてしまう。


「援護って大事だろ、デバフ要員がいるだけでこっちは楽に戦えるってもんだぜ」

「キュアアア」


 ラウも俺達の活躍にご機嫌な様子で応援してる。

 血みどろの魔物との戦闘を喜ばれるのは教育によろしくないと思うんだけどなぁ……。


「つーか、見てるだけでも効果あるって便利だな。失敗も無いみたいだし」

「匂いで敵の接近とか感知出来る方が便利だと思うがな」


 そりゃ見るだけで確認出来ると言っても姿が見えなきゃ話にならない。

 夜の闇程度なら温度感知でも何でも見る事が出来るけど結局物陰に隠れるとかされたら気付きづらいし魔眼の効果も薄くなる。

 魔眼も種類によっては視線を合わせないと行けないってのもあるし万能じゃない。

 匂いで気付ける健人の方が有利な時だってある。


「失敗は……相手が強いと当然あるだろうな」


 あくまで状態異常を誘発させる攻撃ってだけだ。


「オルトロス達は妙に掛かりが良かったから助かった」

「何にしてもこれで体の感覚ってのは掴めたのか?」


 うーん……パッと飛んで襲ってきた奴を返り討ちにしただけでまだ把握仕切れないってのが本音だなぁ。

 まだ何か出来るような気もする。

 そういや……この体に進化する際に媒介にカーラルジュを使った訳だけど、その影響でカーラルジュの呪いってどう見てもマイナス効果を受けてしまっている。

 おそらくその所為で可変部位に制限が掛かって、名残っぽい感じで尻尾と上半身が固定化されてしまってる。

 ……カーラルジュの力とかも使えるのだろうか?

 ぼんやりと意識すると何か手応えのような物を感じる。

 ピクっと健人の耳が跳ねた。


「おうおう、熱烈な歓迎なこって、そんなにもここに転がっている獲物が欲しいのかね」


 どうやら増援とばかりに魔物が来るのを感じ取ったみたいだ。

 俺も嗅ぎ分けられるほどに何かの匂いが濃くなっている。

 ただ、体の感覚を掴んでいる最中なんで何が出来るか確認する。


「魔石をサッサと取って退散するか歓迎に応えるとするかね。獲物次第だが……お前等が力を合わせりゃ行けるだろ」

「ちょっと待ってな」


 ブワッと尻尾が逆立ち全身の毛が続き……俺自身も分かる形で透明化していく。


「ほーあの野郎が使った姿が消える奴じゃねえか。そんな事も出来るのな」


 が、すぐにフッと解除されてしまった。

 体を巡る魔力が足りない。

 さっき大技とばかりに熱線を放った所為で使用する魔力が足りなかったみたいだ。


「ちょっと使用するには時間が必要だな」


 ドスドスンと遠くから振動が伝わってくる。

 近づいてくるのはマンイータージャイアントグリズリーか。

 巨大なクマ型の人の匂いに敏感で強めの魔物だ。竜騎兵が必要でオルトロスと初めて遭遇した際には出遭わなかったけれど、あの時よりも下の階層で遭遇するはずの危険魔物……と後で目にした異世界の戦士、クラスメイト達の戦闘記録にあった。


「人食い大熊のお出ましみたいだぞ健人、行けるか?」

「大物だこって、無理じゃねえが手を焼く相手だぜ? ヤバかったら逃げる面倒臭い相手だからよ」


 地道に削って仕留めるくらいに耐久性と逃げ足、攻撃力を持ってる厄介な相手か。

 ムーイの力を奪った状態のカーラルジュ程じゃないが……って所なんだろうけどな。

 大技の熱線は使ったし、俺自身の体がどの程度の強さなのかの感覚を掴むために戦ってるからなぁ……手こずるなら遭遇前に逃げるか?


「ユキカズ」

「なんだ?」

「寄生して戦ったりしないのかー?」


 ……ここでムーイが何かぶちかましてきた。

 そりゃあ元々がパラサイト系の魔物で進化した結果の体だけどさ。

 相変わらず寄生能力を持ってる挙げ句、俺自身の所持スキルに移動してしまっている訳だしな。

 というか……たぶんだけどそう言った戦いもこの体なら出来るけど……。


「もう出来ねえのか?」

「出来なくはないけど……」


 正直邪悪すぎて俺の好む手段じゃないんだぞ? こう……緊急事態だったからムーイに寄生して力の源代わりになっただけだし。

 流れ的にマンイータージャイアントグリズリー相手にその手を使って寄生、乗っ取りが出来るかって話だ。


「そっか、じゃあユキカズ! やろう!」

「ならやりゃ良いだろ。あの野郎の時も上手くやったじゃねえか」


 ムーイのリクエストがよく分からん。

 まあ、戦闘の申し子ってくらい、学習能力と戦闘センスを持っているから適切な行動を判断出来るんだろう。

 何せ……パラサイトの進化が見つかった段階で推奨してて、結果的にムーイの命を繋ぐのに役だった。


「ガアアアアアア!」


 っと一直線に近くの岩をなぎ払ってこっちに人食い大熊がけて来る。

 身の丈8メートル以上の大型の魔物だ。俺が乗っていたフィリン達が設計した魔獣兵よりも大型の魔物だぞ。

 嫌だけど実験がてらやっても損は無いか。そのお陰でムーイは助かったし、何かの役に立つかも知れない。


「……わかったよ。じゃあこっちに近づいてくる大物相手に仕掛けてみる」

「おう! やれ!」

「っきゅー!」

「神獣の申し子様の健闘を祈りますが……閃光弾や煙玉等を使いますかね?」


 リイが手持ちの道具から隙を作る機会が無いか模索している。ラウに危険が無いようにしてくれるだけで十分だ。


「え? あれ?」


 なぜかムーイだけ唖然と言うか首を傾げているが……どうしたんだ?


「何してんだムーイ、お前も手伝ってくれるだろ? お前がリクエストしたんだぞ?」


 俺は羽を広げてムーイに乗っかって問う。

 寄生を使うにはちょっとプロセスが必要だ。

 ムーイの時は運良く腹に大穴が開いていたからそこに潜り込んだ訳だけどな。

 パラサイトを経由しているのでやり方事態は魔物の本能で学んで居るし、サンドキラーシャークに寄生した際にもやった。

 こう、パラサイトの種類によってはやり方が変わるんだけどな。

 例えば……頭に飛びついて耳とか目とか鼻とか、そこから脳に神経を伸ばして操るなんてグロテスクな方法もパラサイトにはある。

 ブレインパラサイトって奴だ。絵的にヤバイ。完全に化け物のそれ。

 日本とかでもある食べ物の中に混じって、体内に入り込む寄生なんてのもある。

 これはサンドシャークにやったのに似てる。どっちかというとこの寄生が俺の進化したパラサイトだとスタンダードな方法だな。

 進化経由にあった魂に取り付くとか剣に擬態して持ち手を操るとかもパラサイトのそれだ。

 さすがにいきなり飛びついて寄生ってのは相手の魔物も容易く許してはくれない。


「まあ……件の人食い熊は人間を狙って食う訳なんで健人辺りを中間宿主として寄生して食わせりゃ楽だけどな」

「待てやコラ! 何言ってんだ!」

「寄生って本来そんなもんだ。まあ……無理矢理潜り込むって力業もあるがな」

「本当、化け物だなお前」


 うるせー。試しに寄生が出来るかって提案に賛同したお前が言うなっての。


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イラストの説明
― 新着の感想 ―
[一言] ムーイとしては自分に寄生(合体)して戦ったりはもうしないの?って聞いたつもりなんだろうけど、いや流石に緊急時の生命維持目的以外で寄生を仲間に使おうだなんて考えないよw
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