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二百話

「はい。神獣の申し子様、私はリイと申します。ラウの警護、この命を以って挑む所存です」


 いや、命を以って守られたら俺が困るんだけど?

 健人……このリイって人、メチャクチャ堅物な気がするけど大丈夫?

 ライラ教官とはまた別の真面目な感じがするんだけどな……。


「……それじゃ、よろしくお願いします。ラウも……あんまりワガママを言わないでほしいんだけどな」

「えー……おそらく、この子は置いて行くと歩ける様になったらそのまま村から飛び出して追いかけようとするでしょう。それほどまでに神獣の申し子様とムーイ様を慕っています。それで死んでも構わないと……」

「キュウウウ!」


 ってラウが拳を握って決意の目で頷いてる。

 わー……死ぬ覚悟って面倒だな。ライラ教官の気持ちが分かった気がする。


「これからよろしくなー」


 ムーイはラウと一緒に居られて嬉しそうだった。

 コレで良いのか? とは思うけど道中の仲間がこうして増え、俺達は改めて旅立つ事になったのだった。





「キャッキャ!」


 ラウが俺達と同行できてご機嫌な様子でムーイに抱いて貰って声を上げている。

 そんなラウをムーイは笑顔であやしながら俺達は聖獣とやらに会う為に道を進んでいく。

 こう……今までの道から道なき道を進んで迷宮フィールドを進んで行くのかと思ったけど、道のりは至って普通だ。

 この辺りは前にいた世界と変わらない……かな?


「案外平和な道のりなんだな」


 俺とムーイが歩んだ道のりを考えると驚くほど何も脅威が無い。


「凶悪な魔物が生息する地域はあるがな、そこを避けて行こうと思えば行けるがな」


 先頭の健人が俺の質問に答える。

 まあ……そうだよな。ラウやリイも居るしここで危険に顔を突っ込むのもどうかと思う。


「ただよ。雪一、お前はどうなんだ? 姿が変わってぶっつけでやっていけるのか?」

「んー……」


 いきなりここから健人も勝てない聖獣と変化して経験が浅い新しい体で勝てってのは厳しいのは間違い無い。

 ちなみに出発前にターミナルポイントに溢れてくるエネルギーを注ぎ込んで空っぽにしたのにまた溜まって来て、熱を持ち始めている。

 昨日も実は定期的に発散させてはいたんだ。

 力が溢れるってのもなんだか気持ち悪いもんだ。


「まあ……どれくらいの強さを持ってるのかって確認とか、この先の戦いを視野に入れるといろんな魔物を解析しておきたいってのが本音だな」

「ユキカズ! 戦うのかー? オレ、頑張るぞー!」


 カーラルジュに遭遇する前の俺とムーイの生活を思い出すと、ムーイに戦って貰うってのは当たり前になっていたんだよなぁ……。

 そういや前は少し稽古をしていたけど、カーラルジュを倒して起きてからせずにいるな。

 どうにも感覚がまだ掴みきれないんだよな……俺、どれくらい強くなってんだろ?

 ちょっとその辺りを検証すべきだな。


「ムーイの方は前と変わりない感じで良いのか?」

「うん!」

「神獣の申し子様がお休みに成られている間、村の近くに出没する大型魔物の討伐を協力して下さいました。とても力強い方ですね」


 リイがムーイの事を褒めている。

 そりゃあなー……ぶっちゃけ万全の状態のムーイって竜騎兵並に怪力と運動神経してるだろ。

 ん?


「なあ健人、ムーイって聖獣を相手にしたら勝てるか?」

「あ? あー……ここ数日の戦う様を見た判断だが、確かに俺よりかなり強いがアイツらに勝てるかっていうと分かんねえな」


 ムーイでも未知数か……どんだけ強い化け物なんだ?

 そもそもとしてムーイの強さって俺のいた異世界でどの辺りかって判断だよな。

 少なくとも……俺が操縦するバルトより小型で強さはあると思う。

 ただ……まあ、ムーイは経験が不足してるから攻撃が単調ってのは否定出来ないかも知れない。

 学習能力が高いけどさ。

 けれど、そのムーイの攻撃を受け止める程の相手だったら根本的に厳しいか。


「何にしても俺自身がどれくらい強いのかを確認しなきゃ行けないか……何より、進化したばかりでLv低いしな」


 魔物を倒せばすぐに上がっていくとは思うけど、まずは色々と上げて行かなきゃこれからの戦いで足を引っ張りかねない。


「前みたいにユキカズがいろんな姿になるんだな!」

「不変部位って制限が付いて前ほど姿を変えられないけどな」


 この呪いみたいな状態を少しでも変えておきたいもんだ。


「んじゃ、ちょっと寄り道してくのが良いかこの辺りは安全な場所が多いが……もう少し北に行けば大型魔物やそこそこ手こずる魔物がいるぜ」

「この子の安全をできる限り確保しつつ皆様が戦えるようにしましょうか」


 寄り道を許可してくれるとはありがたい話だ。


「まー……ちょっと移動して戻ってくるってだけなら俺が飛んで来れば良いからそこまで警戒しなくても良いような気もするけどな」

「え!? ユキカズ! あの時アイツに攻撃喰らったの忘れたの!?」


 カーラルジュの奇襲を受けた時の事をムーイは言ってきた。

 痛いところを指摘してくるなー……けど、ここで引くほど俺は弱いつもりはないぞ。


「あの時と俺の強さは違うだろ。アイツは隠れる能力が高かったし、俺もそこまで強く無かった。けど今はアイツを逆に吸収したようなもんだろ」


 所持しているカーラルジュの因子って代物が奴の能力まで模倣してくれるかまでは分からない。この法則だとムーイの力まで俺の体は得ている事になるけどさ。


「でも……」

「ムーイ。心配しすぎだ。そりゃあ俺はムーイに寄生してたけど、俺だけだって戦える」


 うん……自分で言ってて悲しいな。

 ムーイに出会ってから文字通り寄生しっぱなしでここまで来ちゃったからなー。


「カーラルジュの時だって最後は俺がやっただろ?」


 やるときはやるって事を見せてくれる。


「どっちが保護者かわかったもんじゃねえな」


 健人うるさい。


「うー……」

「心配するなって、次は同じような事はしないから安心しろ」


 同じ失敗をしないと俺は言いたいけど……クラスのみんなを助けられなかった事、ムーイが死にかけた事が脳裏を過ぎる。

 今度こそ……同じ失敗をせず、犠牲を出さずに誰かを助けられるように俺はなりたい。

 その為の挑戦だってあって良いはずだ。

 俺の人生、ずっとムーイと一緒という訳にもいかない時だって来るはずだから。


「何より俺は目が良いし、飛び回れるんだから斥候としては適任だと思うぞ?」

「えー……私たちの中で神獣の申し子様が最も重要な方ですので斥候は困るのですが」


 リイが困った様な声音で俺に釘を刺してくる。


「とは言っても……俺達ってこれからこの世界を守っている聖獣へ喧嘩を売りに行く反逆者ってポジションなんだけど、その辺りどんな認識?」

「お話は聞いています、聖獣様に挑むのでしょう? 特にこちらの教義に反する事は無いですよ。聖獣様と戦い、命を奪うことも認められていますので」


 あ、そうなんだ……じゃなきゃ協力とかしてくれる訳ないもんね。

 とにかく、俺が重要なポジションだってのは分かるけど多少の危険を覚悟で行かなきゃこの先を乗り越えられないだろう。


「過保護に俺を守ろうとしなくて良いから、ムーイもさ。今はラウを守る事を重視」

「わ、わかったぞ」

「そんじゃ、手始めって事でやって良きゃ良いんじゃね? 雪一も力が漲ってるみたいだし、勝てそうな奴に襲いかかってみな」

「言われなくてもやるよ。んじゃちょっと寄り道してっと」


 俺は羽を広げて飛び上がり、健人達が指さした寄り道をする地域へと飛ぶ。

 うん……村でも多少は飛んで移動していたけど羽を広げるとなんだか気持ちが良いような気がするな。

 ムーイに寄生してから飛ぶなんて事は出来なかったんだから格別だな。


 こう……人間ではなくなってしまって良いと感じる所はこの飛べる所か。

 意のままに空を飛べるってのは中々に爽快だって今だと分かる。

 ふわっと地上にいるみんなが大分小さく見える所まで羽ばたく。

 飛べる頃は高高度を飛ぶと強敵が襲いかかってくるからそんな高い所まで飛べなかったんだよなぁ。

 俺が勝てない危険な魔物が空を飛んでいたら急いで地上に戻らないと。


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