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二十話


「でだ。話は戻るがスタミナ回復力向上を取るなと言われるのはLvが30を超えた際に習得条件が満たせる『秘孔』というスキルが関わっている。これは1取るだけで大体……スタミナ回復力向上3を取った物に該当するのだ。しかも生命力回復力向上も同じ数字上がる」


 うわー……俺、スキル振り間違った?

 だから取るなって言われてるわけね。


「志願で兵役に就いた場合はLv20だ。そこそこの研修と実戦経験を行えば直ぐに手が届く数字だな」


 だけど取っても大丈夫でしょう。

 パッシブスキルっぽいし、取った分は無駄に――。


「しかも悲しい事にこの向上スキルは重複しない」


 更なる追い打ち!

 重複なし!


「ちなみに魔法が使えるようになった際はもっと悲惨だぞ。初級回復魔法にスタミナヒールという魔力を使って疲労を回復させるものがあってだな。自身に掛けるのが最も効率が良いと来ている」


 お願い……もはや俺のライフはゼロなので説明をやめてください。


「『秘孔』の上の効果があるスキルもあるのだが、それは更なるLvに達してからだな。そういう意味で向上系のスキルは魔力以外は推奨されないわけだ」


 ブルにもお勧めしてしまいましたが……アイツは確かLv30超えてなかったっけ?

 秘孔を取ってスタミナ回復力向上を取得したのだろうか?

 重複はしなくても秘孔で上がる分を越えれば効果は出るし。


「まあ、向上スキルから派生するスキルがあるから、完全に損というわけではない。ただ……新兵には勧められるものではないということだな」

「え、えっと……助言、誠にありがとうございます」

「ふむ、そう気を落とすな。そのスキルのお陰で倒れずに済んだのならば、結果的に正しい選択だったのだ」


 同情されちゃったよ。

 振り直しとかの要素は無いんですかね!?


「貴君は訓練校時代、寝る間も惜しんで勉学に励んでいたと記載されている。魔法使いを目指すのなら悪くはない使い方だ」

「魔法使いを目指している訳じゃないんですけど……」

「何、そうだったのか? 専攻している武器が無いのは魔法を使用したいからだと思っていたぞ」


 漠然と冒険者を目指していただけだし。

 と言うか魔法の使い方が分からん。

 いや、習得方法は本で知ってるんだけどさ。

 この世界って普通の人間が魔法を覚えるのって面倒な手順が必要なんだ。


 何でもダンジョンとかの深い所で稀に発見されるレアアイテム、マジックシードという物を入手して自身に付与させないと使えないらしい。

 まあ、魔法寄りの獣人とか亜人は別らしいけど、人間だとそれが必要って話。


 そんなわけでライラ上級騎士が悪くない使い方と言ったのは意味がある。

 睡眠時間を削って勉強していれば、マジックシードを入手した際に、ステータスに反映させやすいって事なんだろう。

 まずは魔法資質を得ないと始まらないって意味でだけど。


「どちらにしても貴君が志望する冒険者として大成したいのなら魔法は覚えて損は無いと思う。次の大遠征ではマジックシードを得る事を目標にすると良い」

「はい……」


 問題はかなりのレアアイテムで、まともに市場にも並ばないとか聞く。

 魔法を疑似的に使用する事ができるロッドとかが推奨されるくらいだ。

 使える魔法が限られている挙句べらぼうに高いのは変わらない。

 平然とそんな事を進言するというところでライラ上級騎士がブルジョアであるのが分かるよ。

 フィリン……君はとんでもない人と知り合いなんだね。


「魔法使いの前としてマジックシードを得られない者がなる職種が錬金術師や整備兵だ。それも頭の片隅に入れておいてほしい」


 何から何までありがとうございます。

 頭が上がりませんよ。ライラ上級騎士様。

 どこまでも付いていきますぜ。

 なのでこの話はそろそろやめてください。

 心が死んでしまいます。


「となると何を勧めるのが良いか……」

「一応、投擲修練を取ってます」

「ほう……相方に合わせた戦闘か。訓練校時代の記録に残っているな。とはいえ……自身の身を守るためにも何か護身術は覚えた方が良い。冒険者は甘くはないぞ」

「はい」

「さて……と大分、緊張も取れただろう」


 ライラ上級騎士が両手を絡めて口元を隠す。

 某巨大ゲリオンの司令みたいな感じだ。


「新兵フィリンに関してなのだが、君は何か話を聞いていないかね?」


 うわ、剛速球を投げてきたなー。

 とぼけた方が良いのか、それとも素直に答えるべきなのかな?


「何の事を仰っているのか全く分からないのですが」

「ふむ……口は固そうだな」


 何をメモっているのですかね?

 返答次第じゃ殺されそうで怖いですね!


「新兵フィリンはアレで頑固者でね。話によると君と交流があると聞いたので尋ねたのだ。昨夜、彼女なりの話を聞き、多少なりとも理解はしたつもりなのでね」

「ああ、そうですか。それって彼女の要望を叶える方ですか? それとも拒む方で?」


 するとなんか不敵に笑われた。


「強さというのは時に大きな障害となるというのを私は昨夜知ってしまったのだよ。守るだけがすべてではない。より高く飛べるように促すには見守る事も重要なのだな。あの方もそう私に言っていたから反対はしないつもりだ」


 なんか遠い目をしてますね。

 つまり応援する方向になったのか。


「要約すると新兵同士で仲良くしているそうだから、良くしてやってくれ。研修先が重なったのは同じ部隊に分けられたという意味だ」


 ああ、そういう意味ですか。


「但し、己の立場は理解するのだぞ。場合によってはトーラビッヒの蛮行が生ぬるいと感じる事態にまで至るかもしれないぞ」


 目を怪しく光らせないでください。

 こう、貴方はフィリンの父親か何かですか?


「しかも貴君はオークと仲良くしているそうじゃないか。いろんな意味で不安でね」

「ブルは悪い奴じゃないです。俺は彼を信じています!」


 ほぼ脊髄で答える事ができた。

 偉い人だったとしてもブルの悪口は認めない。

 あんな身を呈して誰かを助けられる奴が悪いとは思えないし、ブルの悪口は気に入らない。


「ほう……まあ良いだろう。確かにいつまでも禍根を残しては前には進めんからな。とはいえ、何かあったら……楽に死ねると思わない事だ。彼にもそう伝えておけ」

「ええ」

「では話は終わりだ。退室してくれ。貴君は相棒が出るまでその場で待機だ」

「はい。失礼しました」


 俺は一礼してから部屋を出て……ブルと交代した。


「ブー」


 それからしばらく待っていると唐突に部屋の扉が開いてライラ上級騎士が俺を手招きしてくるので近寄る。


「アイツはなんて言っているんだ? 全く分からんのだが……」

「ボディランゲージで察してあげてください。こっちの言葉は分かってるんで、『はい』と『いいえ』くらいなら分かるかと思いますよ」


 上級騎士になっても言葉は分からないのか。

 結局ライラ上級騎士はブルとの会話を諦めたっぽく、俺にどんな戦い方をしているか聞いてきた。

 その後、俺達は新兵らしく運動をさせられた。


 楽しかった。

 と小学生の夏休みの宿題みたいな感想を抱いた。




 二、三日はそんな感じで時間が過ぎ、仕事以外は模擬戦をする事になった。

 ライラ上級騎士が代表としてギルド内の兵士全員が仕事以外で模擬試合をするのが日常になったっけ。

 俺が専攻する武器を決めかねているとライラ上級騎士は刃を潰した短剣を支給してくれた。

 他、無難に剣術を叩きこむ事にしたようだ。


 ブルとの連携も視野に入れた戦い方まで模擬戦でさせられたぞ。

 あの怪力のブルが手も足も出ずに負けたのは驚きだった。

 アンタ何Lvだよ。


 渡された短剣を技を込めて投げつけても余裕で避けられる。

 その際に、相手が避けられないように工夫する気概は認めるが総合的に技術不足って注意された。


 その後……剣の素振りの訓練もした。

 なんか研修で部隊配属されてから兵士としてやっとまともな戦闘訓練をした気分だった。


 自主練習としてブルと組み手もした。

 戦闘に関しちゃブルはやはり俺よりも強いのが分かる。

 腕力に物を言わせた戦い方だけど、俺の攻撃はまともに入らない事が多かった。

 ああ、早く強くなりたいなー。


 自由時間には近隣の魔物を退治する仕事をした。

 ダンジョンに行くかどうしようかと悩んでいたのだけど、この辺りのダンジョンは魔物が強いそうで、入る許可が下りなかったぜ。


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