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百九十七話


「あ、そうだ。ユキカズ」

「ん? なんだ?」

「ユキカズってトツカって名前もあるんだよな」

「名字、家柄や家名を表す所だな。健人は大上だったな」

「うん。でな。ケントから聞いたんだけど、トツカってウサギの束って書くって言ってたぞ」

「まあ……うん。文字をバラすとそうなるな」


 ムーイは何を言おうとしてるのだろうか?


「そのな。思えばユキカズ、最初に会ったとき、パラボナラビットって魔物の耳生やしてただろ?」


 そういやあの時はそんな格好をしてたな。

 歩く目玉……ウォークアイに頭はパラボナラビットの耳を付けて。


「オレな。あんな感じの格好……今だといいなって思っててな。ユキカズに体のいじり方を教えて貰って、他に手が増えるみたいな所も便利だなって感じてたの」


 なんかムーイが恥ずかしそうに手をもじもじとさせながら呟く。


「ああ……そうか」


 ニュルッとムーイの元々ウサギっぽい感じだった耳が更に伸びてよりウサギっぽい感じに……と言うか、そういえば俺が寄生していた所為か、マシュマロみたいな不定型な感じの体型が人っぽい感じの形に安定してる気がするな。

 どっちかというと肉付きが良い感じな体型だけどさ。


「こう……パラボナラビットじゃないけどウサギって生き物とユキカズと繋がりがあるから、こんな感じで」


 ってムーイは自身の足をモフモフのウサギのようなそれでありながら肉球のある足へと形を変え、全身に体毛を生やし、顔もなんか俺に寄せてるのか可愛い感じに三頭身になる。

 前みたいな不安定な感じはもうしない。俺が寄生してた影響か……そういえば寄生して居るときは体格が一定だったもんな。

 姿の変え方を覚えはしてたけど。


 耳は長めの垂れ耳で……ムーイは巨漢な体格なので横に広い獣人みたいな外見になった。

 ただ……ウサギと言うにはやや不格好な感じか。肉球をウサギは持ってないし。

 けど愛嬌は十分ある外見な気もする。

 目は円らな感じでぱっちり大きめか。


「どうだ? ユキカズ」


 どうと言われても……ムーイはムーイだろとしか俺は思えないのだけど……なんて答えるべきなんだ?

 俺の影響を受けてそれっぽい要素を反映させたいって事なんだろうとは思うけどな。

 まあ、こんな感じの獣人って言われたらそうかもな? って感じとしか言いようがない。

 少なくとも元々はマシュマロの人型っぽい奴と言われてもピンと来ない姿はしてる。

 雑種の獣人って表現で通じそう。


「可愛い?」

「そうだな」


 可愛い方な外見なんじゃないか?


「そっか、やったー!」


 ドスドスとムーイが喜びを体で表現している。

 オーバーな奴だな。

 で、ムーイは耳を持ち上げたり下げたり、近くに転がっている椅子を持ったりして確かめている。


「ジャンプするときとかもこの耳を調整すれば少し軽く出来ると思う」

「そ、そうか」


 器用な事が出来るな。


「って報告ーオレ、この姿でいるからよろしくなユキカズ」

「はいはい」

「じゃあそろそろ眠くなってきたから寝たいー」

「そうだな。なんかここが俺達の寝床になってるけど寝かせて貰うか」


 カーラルジュの毛皮の頭部分が激しく気になって踏みつけたくなるけどそのまま俺達は寝床に横になる。

 スタミナ回復力向上の効果でそんな寝なくても良いんだけど、ムーイは本来よく寝る。

 ムーイは横になって俺を後ろから抱きしめる。

 相変わらずお前は俺を抱き枕にするな。


「えへへ……起きてるユキカズと一緒ー」


 寝てるときも一緒に寝てたのが分かる一言だな。


「ユキカズーまた映像を見せながらお話してーこの世界に来る前の兵士になったって頃のお話ー」

「同じ話で良いのか?」

「うん」

「わかったよ」


 俺は社の屋根……天井に向けてお腹の目を開いて照射しながら前にも語った話をし始める。

 そういえば……エネルギー節約の為にこんな風に話をするのは大分やってなかったもんな。

 異世界に来た頃の話を思い出から再現映像として映して語って居るとムーイはその映像を微笑みながら見つめ続けて居た。


「ユキカズ、やっと……あの頃みたいになった」

「あの頃とは随分と場所も環境も変わったけどな」


 ムーイに戦って貰って色々と進化の模索をしていた頃が懐かしいな。

 今じゃ俺はあの頃よりよく分からない姿へと進化してしまっている。

 ……ムーイは、あの頃のムーイと同じ存在なのか、俺が都合良く弄って作り出してしまったのか、俺は確認出来ない。


「ユキカズ……オレな……」

「なんだ?」

「……ううん。なんでもない」


 けれど、今この時だけはあの頃の関係であると……思わせてほしいと願いながら俺はムーイが寝入るまで語って聞かせて居たのだった……。




 翌朝。


「んーこんな感じだよな」

「キャッキャ」

「うい……オッス、雪一。朝から元気じゃねえか。もう寝なくて良いのか?」


 ラウの子守をしつつ朝飯のお菓子をその場で作りながら今の体の使い方をなんとなくで色々と試していると二日酔いっぽい健人がやってきてふらふらと眠そうに声を掛けて来る。

 だらしがない奴だな。目当ての相手と良い事でもやったのか?

 酔い潰されて逃げられたとかの方がありそうだ。

 ラウはそんな俺の様子を楽しげに座って笑いながら拍手をしたり手を伸ばしたりしてる。


「大して疲れは無いしな。ムーイはまだ寝てるけど」

「そうか……お前が寝る前に鏡を前に何度か練習してた姿で寝てやがるな」


 健人はムーイの寝顔を見て呟く。

 俺が寝てる最中に色々とやってたのね。


「フフ……」


 なんか健人がムーイの寝顔を見て笑ってる。微笑ましいのは認めるけど何なんだ?


「ん……ふわぁああ……あ、ユキカズ、ラウ、ケント。おはよう」


 むくりとムーイが起きあがって背伸びをしながら欠伸をする。


「おはよう」

「キュウ」

「オッス」


 朝の挨拶って感じだな。


「あ、ユキカズ何かやってる。今度は何をしてるんだ?」

「俺の朝飯は村の人が差し入れてくれたからムーイの朝飯に、作った事の無いお菓子って事でカルメ焼きをちょっとな」


 お玉に砂糖……ザラメを載せて水を少し入れて熱線で下から炙りつつ、重曹……パラサイトを経験した影響で生成の仕方が分かったので作って見た。

 重曹って体に当たり前の様に存在する物だから毒生成でも作成出来るようなんだ。

 色々と重曹があるだけで作れるのを思い出した。

 ……自分の体で作ったのは気にしない。

 温度を125度前後に成るように熱して泡だって来た所を重曹を少し加えて高速で混ぜつつ膨らませた所で止める。


「おー……懐かしいもんを作ってんなー。理科の実験で作ったのを思い出すわ」

「ふわふわと膨らんで来るぞ。ユキカズ、甘い匂いがする」

「ああ。はい完成」


 サッと固まって来た所でお玉の底の部分を炙ってカルメ焼きを溶かし器に移動させてムーイに差し出す。

 ラウにもちょっと食べさせてあげるか。


「キュイイ」

「いただきまーす。んーサクサクしてるぞー」

「ほー……やっぱお前、手慣れてるなー。昨日は厨房でなんかやってたそうだけど何してたんだ?」

「ユキカズ、沢山お菓子作ってくれてな。チョコレートを作ったぞー」

「チョコって……この村にあったか?」

「それっぽい植物があったから再現したんだよ。一度ムーイが味を知ったら後は再現して貰えば良いからな」


 健人が感心したような声を漏らす。


「中々やるなー相変わらず」


 あんまり嬉しくない感心の方法だけどな。

 よくよく考えるとこんな所で菓子作りをしてるってのがおかしいんだし。

 ムーイがお菓子を食うことで強くなるし喜ぶからしてるってだけだ。

 そもそもの話、俺は普通に朝食を食べたしな。この村の至って普通の食事って事で差し出された肉料理だったけどな。


「まあいいや。で、お前等は目当ての魔物を倒して事が片付いたみたいだけどよ。今後は何をするつもりなんだ?」


 今後何をするか? か……そういえば当たり前の様に菓子作りしてたけど、俺の本来の目的を忘れちゃ行けないよな。

 ムーイに語って寝かしつけた事でもある。


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