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百八十七話

「そのお力はこの世界を含め我らの創造主様に由来するものでございます。トツカ様」


 健人が前に話していた神様って奴だって話しか。

 老人の話は……まあ、健人から教わった概要が大半だった。

 どうやら俺はオウルエンス達にとっては信仰以外の何物でもないようで、正直むずがゆい。


「神か……」

「トツカ様は我らが神の元へと向かっている最中なのでしょう。ケント様と同様に」


 え? いや、俺は元の異世界に帰りたいのが大半でそれ以外だと人間に戻りたいって感じだ。

 けどそれよりもまずカーラルジュを見つけてムーイの力の源を取り戻すのが先か。


「トツカ様はケント様と同様、目的があるのでしたら我らが神の元へと向かうのが良いと私どもは判断いたします」

「はあ……」

「それはそれとしてよ。雪一、もっと大事な話があるんじゃねえのか?」


 神って奴に会うのが俺の目的として勧められたけど、健人の言う通り優先すべき話があった。


「それでですね。壊滅した隣村で唯一の生存者であるラウを連れてきた訳ですが……」

「はい……壊滅したとの話は耳にしました。なんと……」


 村長の顔が暗くなる。


「後ほど隣村へとこの村の者たちで出来る事はしようとは思う次第です。その子に関してですが……」

「キュウ!」


 ラウが自身に注目が集まっている事に関してよく分かっているのか分からないのか両手を挙げて笑っている。


「トツカ様方の頼みとあらば手厚い保護をするようにいたします」


 お? 話が上手く行ったみたいだ。

 ラウを引き取って大切に育てて貰えるなら何よりとしか言いようが無い。

 村長の指示で他のオウルエンスが俺達の元にやってきて両手を合せて祈りをしてからラウを預かるとばかりに手を差し出して来る。


「ムーイ」

「う……うん」


 名残惜しいとばかりにムーイは恐る恐る、ラウをオウルエンスに差しだそうとする。


「キュウウウ! キュウウウウアアアアア! キュウウウ!」


 するとラウが嫌だとばかりに大声で泣き始めた。

 そして弱々しい手と足で懸命にムーイの腕にしがみついている。


「ユ、ユキカズ!」

「これは……その子はトツカ様方にとても懐いて居るご様子、きっと自身の状況を幼いながらも理解しているのでしょう。神獣様に助けられたと」


 俺とムーイの手から離れるのをラウが嫌がってるって事か?

 ただ……このままラウを俺達が引き取って良いわけでも無い。


「ううううう」

「ヨシヨシ……」


 ムーイが駄々をこねるラウを宥めようと試みているけど、ラウは懸命にムーイの腕から離れるつもりはないとしがみついたままだ。


「心を鬼にしてラウの為にラウはこの村で幸せに成長して貰うのが良いと俺は思うんだけど……」

「まあ、そりゃあこれからお前等は相当の激戦に挑む訳だしな」

「キュウウ……ウウウ」


 赤ん坊の力って思ったよりあって、自分の体とか片手で支えられる程あるって聞くけど、ラウはムーイが支えたまま、そのままムーイの体をよじ登り始める。

 その表情は真剣そのもの。

 うーん……。

 とりあえず早くラウをオウルエンス達に預けて話を進めないと……。

 と、思って居るとよじ登ったラウがムーイの口に腕を突っ込み始めた。


「ヒャ、ヒャウ……な、何を……」


 そのままラウがムーイの口の中へドンドン腕を入れて進もうとするのでムーイが引き出す。


「キュウウウウウウ!」


 抱きかかえるとラウがまたも泣き出してしまった。


「ユキカズ、ラウは何が何でも離れたくないって言ってるんじゃないのかー? きっと前にやったオレの疑似砂嚢に入ろうとしたんだと思うぞー」


 いやいや、さすがにそれは無いだろ。


「ちょっと待ってろー」


 健人がラウを抱えてムーイの背中にラウをくっつける。

 するとラウは迷わずよじ登り、ムーイの口元へと目指して上がって来る。


「ムーイの言ってることが正しいかどうかはわからねえけど、ラウはお前等しか頼れる相手は居ないとか思ってるみたいだな」

「ユキカズ」

「……ムーイ、ラウの為なんだ。名残惜しい気持ちは分かるけどラウもすぐに落ち着く、預けるんだ」


 ラウの為だ。このまま連れてカーラルジュとは戦えない。


「……わかった」


 ムーイは勇気を振り絞るようにオウルエンスにラウを無理矢理預ける。


「キュウウウウウウウ! ウウウウウ!」


 オウルエンスの村人の腕から逃れる様に懸命に暴れるラウだったけど、そのまま連れて行かれる。


「……」


 ムーイはその後ろ姿を何処までも見つめて居た。

 辛いのは痛いほど分かる。けど、やっと繋いだ命、危険な所に行くのは得策じゃない。


「確かにお預かりいたしました。あの子は何があっても大切に育てますので、どうかご安心を」

「よろしくお願いします。それで隣の村を壊滅に陥れた犯人に関してなのですが……」


 俺は健人と一緒に村長へ経緯の説明をした。


「災厄となりうる魔物の来訪ですか」

「ああ、隣村をぶっ潰した魔物がいる。この村に来るかはわからねえけど、雪一達はそいつを追いかけて俺と出会った訳だ」

「なるほど、村の偽装を突破して襲い来る魔物……」


 魔物の襲来に対する相談だ。兵役時代だと国というかギルドへ指示を仰ぎ、冒険者がかり出されて対処に回る訳だけど、この世界だとどうなるんだ?


「そのような魔物の襲来に対して私たちが出来る事はそう多くなく、戦える者が相手をするので精一杯……隣村の者たちも腕に覚えのあるものは居たはず」


 猛者がいたけど返り討ちで壊滅してしまったと……となるとここもそこまで安全かと言うと怪しいか。

 出来ればカーラルジュにここを見つけられない事を祈るばかりだ。


「守護聖獣様が来て下さるのを待つより腕に覚えのある旅人や猛者に頼るのが限界でしょう」

「守護聖獣?」


 なんだそれ? なんか凄そうな魔物とかかな?

 って疑問に思った所で大きな爆発音が周囲に響き渡った。


「なんだ?」


 ビリビリと何か魔力的な力が振動しているのが分かる。


「緊急! 村の外に魔物が現われ、村の結界を攻撃して居ます!」

「何!? 一体どんな魔物だ!」

「それがこの辺りでは見た事の無い魔物です! 目視し辛く微かに見える姿では二尾の尻尾を持ったタイガー系の魔物に酷似した魔物でした。攻撃の威力は鋭く、結界も長く持ちません!」

「臨戦態勢! 村の防衛装置の出力を上げろ!」


 ざわざわと村の喧騒の声が響き渡る。


「……雪一、ムーイ。どうやらこっちが準備する前に先方が来ちまったって所なんじゃねえの?」

「ユキカズ」


 平和な村へ脅威となる魔物の襲撃が起こったんだ。

 元の異世界の冒険者だったら金を貰わないと儲けには成らないしシビアな所はある。

 冒険者ってのはそう言った善意だけで回らない所があるのは百も承知だ。

 だけど今は状況が違う。

 もっと力を付けて挑んだ方が良いんじゃ無いかって考えは確かにある。

 だけどここで逃げたら、この村の人たちはどうなる?

 一緒に逃げて守り切れるか? 何処までも逃げ続ける事になるんじゃないのか?

 なら……今、出来る事を尽くすしかない。

 俺はもう後悔をしたくない!


「行くぞ。奴だったら……雪辱戦だ。何が何でも倒すぞ!」


 アイツによって、ムーイは殺された、滅ぼされた村を見た。ラウは大切な家族を失った。

 コレは俺達の雪辱戦だ。

 奴を倒すのには力が足りないかも知れない。

 けど……何が何でも戦わないといけないんだ!

 じゃないと、この村もラウも守れない。


「うん!」

「やってやるか」

「ユキカズ様……神獣様の加護を持った方々の助力、感謝いたします」


 村長が俺達が立ち上がると感謝の言葉を述べる。


「お前等は非戦闘民の避難を優先、何が何でも逃げ延びろよ。それこそ守護聖獣様に報告しやがれよ」


 健人が村の者たちへと指示を出す。

 俺達が勝てないとしても時間を稼ぎ、一人でも生存者を多くさせるために動いて貰う。

 じゃないといざって時にもっと被害が出る。


「ユキカズ……絶対に、守り切るぞ!」

「ああ! 何が何でもな!」


 俺達は武器を手に、村へと襲撃に来た魔物の元へと向かったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 頑張れ!
[気になる点] 今ならユキカズ製即席お菓子のミスディレクションが使えるんじゃ?
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