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百八十四話


「おーこんな感じなんだな。ちょっとオレだけだと自信無いぞ」


 ムーイは自分の体を何度も確認するように見つめ腋とか足の裏とか確認している。


「服装は……ユキカズ、どうしたら良いんだ? 服って着るんだろ? 着たらユキカズ見えないよな?」

「マントをローブみたいにして広げやすくしとけば良い」

「腹から目を開くか……鎧とか着た場合、腹の部分は丸出しにする感じか?」

「一応な、何よりダンジョンクラブの甲殻とかに変えて防壁にも出来るんだよ」

「あんまり防具の必要性は無さそうな感じだな」


 魔物故の部位毎への変化で対応するって奴だ。ただ……あくまで分析した魔物と、俺とムーイの防御力が重要な形な訳であんまり狙われて良いところじゃない。

 戦闘中は滅多に腹の目は開かないようにしないと行けないし。


「よーし、ラウ。どうだ?」


 小さなラウをムーイは抱き上げて健人や俺がやったようにあやす。


「ッキュー! アー!」


 肌触りを同族に似せた影響か、ラウは昨日よりも機嫌と元気が良さそうだ。

 赤ん坊の生命力って凄いな、大分回復しているようで何より。


「よーしよし」

「そんじゃこれから、オウルエンスの次の集落へと行くぞお前達」

「あいよ」

「行くぞー」


 カーラルジュの追跡をしなきゃ行けないが、アイツが次は何処へ行くのか。

 それも頭の片隅に入れつつ俺達は健人に案内されるまま村を出る。

 村から出る際にムーイは何度も振り返るように誰も居ない村を確認して……ラウを優しく撫でて、旅立った。




「次に俺達が向かう村がカーラルジュに襲われる可能性は?」


 しばらく歩いた所で健人に尋ねる。


「無いとは言いがたい所だな。ただ、道を俺は知ってるし、件の奴が村の場所が分かって居ても来るのに多少時間は掛かるから追い越せるはずだ」


 何より、と健人は続ける。


「俺が依頼でここまで来た時にはその魔物とは出会ってねえ。何処にいるのか完全に把握は出来ねえけど大丈夫だろ」


 とりあえず問題は……無いか。


「おっと、魔物のお出ましだ」

「みたいだな」


 健人が前に一歩踏み出すと岩の影からマジックキャノンピッポという、カバによく似た魔物が現われてこっちに口を開けて構えようとしている。


「アイツは巨大な魔弾を口から吐いて来る。十分注意しろよ」

「わかったぞ。けど……」


 ムーイが背負ったラウへと顔を向ける。

 無茶な動きは出来れば避けたいか。もしくは前にもやった通り、ラウを疑似砂嚢に収めて戦うか。


「しょうがねえな。俺が攻めるからお前等……」


 近接以外は何が出来るんだ? って顔を健人はしてくる。


「俺を舐めるな。魔眼を使ってやるよ」


 俺は目を見開き、こっちに狙いを定めようとして居るマジックキャノンピッポと視線を合わせる。

 麻痺凝視の魔眼で良いか? 確かマジックキャノンピッポって見た目と違って動きが速いはずだから鈍足の魔眼も手だな。

 ググ……っと凝視を行う。


「グ……!?」


 ビクっと麻痺凝視の魔眼の効果が発動してマジックキャノンピッポが痙攣する。

 が、即座に立て直す。


「おお……中々やるみたいだな。こんだけ猶予があれば近づきやすいぜ」


 立て直すまでの時間で健人が素早く近づいたので肉質を軟化させる為に脱力を引き起こす魔眼に切り替える。

 健人は槍で眉間を貫き、爪で叩きつけ、肉を切り裂いて仕留めた。

 経験値が流れ込んで来る。

 健人の分もあって手に入る経験値は減っているけど、楽に戦えたな。


「想定より柔らけえな」

「麻痺の魔眼の後に脱力をおこす魔眼に切り替えたからな」

「へー……視線が合う限りは便利そうだな。一体だけか?」

「まさか」


 と、ムーイの体から何本か手を出して先に目を展開させる。


「あんまり動かずに力を貯められるなら魔眼をある程度は出し続けられるな。近づかれても熱線でどうにかなる」

「ほー中々便利じゃねえか」

「あんまり乱用すると魔力が減るから限度があるけどな」





「ユキカズ……オレは?」

「ラウを守りながら進まないと行けないだろ? 疑似砂嚢に入れるにしたって過負荷が掛かるから、ここは健人に任せて行けば良い」

「うん。でも何か……こう、動かないといけないような気がして落ち着かない」


 今までムーイが前で戦って居たからなー……黙って見てるってのが気になるんだろう。


「ラウを守る大事な役目があるんだ。いざって時は守るんだぞ」

「ッキュアー!」


 ラウも機嫌が良いのか元気な声を出している。

 余り物怖じしないようで何よりだ。


「わかった。絶対に守るぞ」


 ムーイは本当、優しくなったよなー。

 何も知らなかっただけで根は良い奴なんだって思える。


「抱えて守るってのが一番だけど過激に動くなら件の疑似砂嚢作戦も悪い手じゃないと思うがな。精々乗り物酔いする程度だろ。固い物とかにぶつからない範囲なら」


 ムーイの体はかなり伸縮自在な構造をして居るから健人の言いたい事は分かる。

 ラウを柔らかく包んで衝撃を逃がす事は……出来るかも知れないけど、それでも無茶は避けるに越した事は無い。


「本当、かなり便利な奴に拾われたなお前……」


 ちょいちょいとラウを健人は指であやす。


「……」


 ムーイがそんなラウに申し訳なさそうに見つめて居るようだった。

 そんな訳で俺達はフィールド型ダンジョンを進んで行った。

 時々、俺達よりも遙かに大型の竜騎兵が必要な魔物に気付かれない様に潜伏したりと適度に逃げ隠れしながらの進行だ。

 幾らLvが上がって居ても戦うのは厳しい相手ってのは居るようだ。

 なんて思いながら健人の指示通りについてきていると……。


「お前等はあのクラスの魔物とは戦えないのか?」

「昔のムーイなら余裕で勝てるかも知れないな。今でも時間を掛ければギリギリ行けるかも知れないが……」


 健人が戦闘を避けた大型魔物ダークグランドワームという魔物は俺の解析でも若干手に余る解析速度だったので間違い無い。


「そりゃあ頼りになるこった」

「健人も戦おうと思ったら出来る相手だろ?」

「ま、かなり手間取る事この上ないがな。あんまり時間を掛けたくねえからさっさと行くぞ。援護を任せるぞ」

「ああ、その代わり魔石はくれ、エネルギー消費は抑えられるけど魔力消費が増えるから」


 後方援護で魔眼を使うか……安全圏からの援護は割と良くやっているから得意っちゃ得意なんだよな。

 ただ、俺自身の魔力消費が増す。


「あいよ。燃費が悪いこって」

「しょうがないだろ」


 ムーイの心臓代わりにエネルギー循環をしつつ肉体制御をして周辺警戒をしながら魔眼で援護をしてるんだぞ。

 これで一緒に技名を叫べとか言ったら健人を熱線で焼いてやるぞ。

 半覚醒状態にはなれても寝る事が出来ないんだから……今でも色々ときついのを気にしないようにしているんだ。

 正直……下手に眠ってムーイが死んだらたまったもんじゃない。

 眠れない……疲れはムーイの体に押しつけているから大丈夫なはずだけど、こんな状態が長く続く訳じゃないのは分かる。

 休まず動き続ける心臓って凄いと思う日が来るとは思いもしなかった。


「ユキカズ、オレがまだ元気だった頃も時々やってくれてた奴だよな」

「あの頃よりも強くなって色々な魔眼が使える様になったぞ」


 昔のムーイが強すぎて援護で魔眼を使う意味が殆ど無かったのが大きい。


「うん! ケントと会うまでオレ、ユキカズの目に助けられてるぞ!」


 我が事の様に喜ぶムーイだけど、結局俺って魔眼で援護しかしてないってのは変わらない。

 一応チャージして切り札とも呼べる高威力熱線とか使えるけどさ。

 今の俺はムーイが居るからここまで色々と出来る様になったんだ。

 ボリボリと魔石を頬張ってエネルギーと魔力を回復させて、俺達の旅は続く。

 その途中。

 ちょっとした水場に差し掛かった所で、俺にとって非常に助かる魔物名が表示された。


「健人、本来は無視する類いの魔物なんだろうが、そこにいるゼリーリザードを仕留めてくれ」


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