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百七十四話


「ムーイは物を変える能力のお陰でどんな代物でさえも使える物に変える事が出来るだろ」

「んー……変えない事も大事なんだとユキカズと出会って知ったぞ。不味いからって別の果物に変えていたらこの味をオレは知らなかったんだと思う」


 確かに素材の味を生かすって意味だと間違いは無いか。


「今回ユキカズは途中の経過を大分省略したのは分かるぞ。これを一から作ったら……」

「もっと味が良くなるだろうな。生憎そこまで時間を掛けていたら目的を達成出来なくなるからな……」


 別に俺は菓子職人って訳じゃないぞ? 忘れがちだけど異世界の戦士で兵士な訳だし。


「だよなー」

「まあ……いつかゆっくりと菓子作りが出来る様になった時にな」


 ここまで美味しそうに食べてくれる奴がいたら作るのも悪い気はしない。


「キャラメルはチョコレート程じゃ無いけど色々と応用レシピが多いからな。これからは作れるお菓子がどんどん増えるぞ」

「例えばなんだー?」

「蒸しパンのキャラメル味とかだな」

「おー! 楽しみだぞー」


 誤差でもムーイは楽しんでくれるな。

 そういえば昔……みんなに配った三層ケーキがあったっけ、あんまり混ぜすぎずに作る奴。

 いつかムーイにもアレを食べて貰おう。

 ……そうだよな。いつか、みんなの元に戻った時、そこにムーイも一緒に居て楽しいお菓子パーティーをする。

 なんて夢を見ても、良いんだよな。


「ユキカズユキカズ、そんでキノコをオレが作れるお菓子ってなんだ?」

「ああ、まずそこに生えているキノコを持つ」

「おう」


 ムーイは地面に生えているここぞとばかりのキノコ、白いけど食べる事は……一応出来るって奴を毟って手に持つ。


「柄の部分をクッキーに」

「うん」


 俺の言うとおりにムーイはキノコの柄の部分をクッキーに変えて止める。


「傘の部分をキャラメルに、本当はチョコレートにするのが良いんだけどな」

「こうか?」


 こうしてキノコは傘の部分がキャラメルになってお菓子として完成した。


「それで完成だ。俺が元々居た世界だとこんなお菓子で親しまれているぞ。タケノコとどっちが美味しいかを競っている」


 俺は記憶にあるキノコを模したお菓子を映像として照射してムーイに見せる。


「……」


 なんかムーイが黙って映像を見つめて居る。


「これってお菓子で良いのかー? なんか実感わかないぞー」

「疑問に思うな。そんな事を言ったらキャラメルやチョコレートは溶かして固めるだけの物ばかりになるぞ?」

「うーん……?」


 納得しかねるって様子でムーイは出来上がったキャラメルキノコをボリボリと食べ始めた。

 なんか不満そうだ。


「結果的にこの形になるのは良いけどユキカズ、ちゃんと作って欲しいぞー」

「そうか」


 仕組み的にはチョコレートコーティングしたビスケットな料理は多いから、チョコをキャラメルに代用したお菓子は無数に作れる。

 ポッ○ーや○ッポとか。キャラメルコーティングしたポテトチップスとか。

 手抜きじゃ無くムーイの納得するお菓子を作って行かないとムーイのやる気は維持できないよな。


「しばらくは色々とカボチャとキャラメル料理を作って行こう」

「おー!」


 っと、俺達はその日も無事終える事が出来たのだった。




 そんな感じで荒野砂漠を数日ほど進んで行くと……。


「ユキカズーアレなんだー?」


 ムーイの指さした先を確認すると……川が見えるのだがその近くに人工物、村らしき建築物が遠目で確認出来る。


「村?」


 え? ここって魔物しかいない場所じゃなかったのか?

 どうやら人が居るって事のようだ。


「あれは村か?」

「村ってアレだろ? ユキカズが元々居た場所にあった人が居る所だろー?」

「そうなるな。この世界にも村ってあったんだな」

「みたいだな。オレも初めて見るぞーユキカズ、どうするー?」


 うーん……今の俺やムーイってどう控えめに見ても化け物だよな。

 ただ、それでも人里って所に興味が無いわけでは無い。そもそも迷宮と同じく廃墟みたいな場所である可能性はある。


「今の俺達が下手に見つかったら襲われる可能性が高いな。できる限り注意しながら近づこう」

「おー」


 という訳で村らしき場所へと近づいた。

 こういう時、目が良いのは助かるな。

 ムーイの腹の目を開いて望遠モードで恐る恐る村の様子を確認。仮に人間がいたら解析……出来たら良いな。

 完全解析が出来たら俺、もしくはムーイを不自然じゃ無い範囲で姿を近づければ村に入れるかも知れない。

 廃墟じゃない事を祈るばかりだけど……と確認して、俺は眉を寄せる事になってしまった。


「……ムーイ、村に入るのに村人を警戒しなくて良さそうだぞ」

「ん? なんでだ?」

「それはな……」


 俺は望遠で見えた物をムーイに伝えると、ムーイは眉を寄せて事情を察した。


「……」


 村の入り口のアーチが果物に変質した代物が破壊されていたのだ。

 俺達は村へと足を踏み入れた。

 そこは……悲惨な爪痕が残されて居た。

 住民らしき亡骸が放置され、背中には無残な爪痕が残されて居る。

 肉を貪られ、事切れた亡骸、切り裂かれたまま虚空を見つめる瞳……槍や剣、服などを着用している事から知能のある者たちなのは分かる。


「ギュアアア!」


 荒野砂漠で俺達を上空から狙っていたミディアムパープルコンドルが死肉を貪っていて、俺達の接近に威嚇してくる。


「!!」


 ムーイが地面を蹴って、ミディアムパープルコンドルへと竜騎兵用の剣で横に薙いで切りつけて二羽ほど仕留める。


「ギュアアアア!?」


 敵わないと察したのかミディアムパープルコンドルの群れが空を飛んで距離を取り、隙を伺っている。

 村の中は……転がっている亡骸を確認すると冷たくなっていて若干腐敗臭が漂っている。

 食べ残しの肉がある……って所で啄んで居たのか……。

 周辺には時々、変質した代物も転がっており……犯人が誰であるのかは俺達はすぐに分かった。


「ユキカズ……もしかして……ここ」

「ああ……間違い無くこの村はカーラルジュが滅ぼしたんだろうな」

「ーー!!! う……」


 ムーイの精神に引き摺られて体に激しい嘔吐感が巻き起こり、ムーイはアーチの影に嘔吐した。


「オレが……オレがアイツにやられたから、この村はこんな事に……」

「……」


 これは、俺達だけの問題って事じゃ無くなった。

 ムーイが力の源を奪われてしまったからこそ、この村はこんな被害にあったとも言える。

 アーチが変質しているのは元より、村のあちこちにムーイだったら出来る被害痕がある。

 負けたからこそ起こる責任……か。

 俺達の責任と言えば責任とも言えるが、元々負けた所為で命は無かったんだから無いとも言える。


「ユキカズ」


 ムーイがふるふると拳を今までに無いくらい強く握りしめる。


「ああ」


 絶対にカーラルジュに追いついて力の源を奪い返し、こんな事をしでかした責任を取らせないとな。

 もはや俺達だけの問題では無くなった。

 決意を固めて俺達は改めて住民らしき人たちを確認する。


「人……だとは思うけど俺の居た国じゃ見ない人種だな……」


 なんて言うんだろう? フクロウに似た人種って言うのか。

 空を飛べるのかまではよく分からないけど、この村の人はフクロウに似た人種で建物は石造り。

 文明レベルは……イメージだと銃器の無い中東って感じかな? こう……シルクロード的な。

 凄くふわっとした感覚でしかないけど、剣と魔法の中世時代の中東みたいな……。

 なんて思いながら村の広場に行くと……砕けた水晶とターミナルポイントがあった。


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