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百六十九話


「別に良いぞーただなんとなくどんな味なのか分かった気もするーそのうちユキカズが作ってくれると思ってる」

「……」


 さすがに伝えられないか。

 こんな状況下ではチョコレートを自作するのって相当難しいって事を。

 仮にチョコレートの原料であるカカオに似た植物が何処かに生えていたとして……どう加工すればチョコレートに出来るのか、想定して考えるとなんとなく分かるけど過程が非常に面倒だ。

 上手く作れればココアも一緒に出来るしムーイのミダスの手で再現出来るから無数にお菓子の幅が広がるんだけどな。


 ……そもそもなんで俺はカカオからチョコレートの作り方をなんとなくで出来ると思えるんだろうな?

 やはりコレはアエローから砂糖を精製する方法を教わったのと似たような物なんだろうか?

 もしかしたら何かでチョコレートの代替えを作り出せたりしないだろうか。


「何か植物の種が大量に手に入れば脂分から別の材料を作れるんだけどな」

「なんだ? 他にもあるのかー?」


 チョコレートは難しくてもピーナッツっぽい感じでピーナッツバターが作り出せる。

 そっちは重みのある植物の種があれば……毒じゃない限りは再現出来るだろう。


「こんな感じの種があればそれはそれで別のがな」


 っと、俺は油分の多そうな種を色々とムーイに見せる。


「あ、見た事あるぞ。果物の種にあるぞ」

 ……そういえば果物の種って脂分が多めの種が結構ある。

 ムーイは俺に出会うまで果物とか食べてたんだから当然か。

 聞いて見るもんだな。

 一番向いているのは……オレンジだと酸味が強いか? 試してなかったな。

 出来ればカボチャとかが望ましいけど……。


「ムーイ、こんな感じの植物食べた事はないか?」


 記憶の中のカボチャをムーイに見せる。


「あるぞーポンポン跳ねて来てボーンって爆発するんだぞ」


 ……それはカボチャの形をした魔物じゃないか?


「実が凄く堅くて種ってのも固くてまずいぞ?」

「覚えがあるんだな?」

「うん……それがどうしたんだ?」

「あのなムーイ。この魔物は調理すると甘いお菓子に出来る良い素材だ」

「本当かー!?」


 ムーイが興奮して大声を上げる。


「ああ。実は茹でたり焼けば柔らかくなるし、舌触りが良くなる。種も数を集めて乾燥させれば……色々と使い道があるぞ」

「そっかー知らなかった。あんな固くてまずいのが美味しくなるなんて不思議だぞ。知ってる事って凄く大事なんだな」

「種も再現出来るなら……うん」


 作れる菓子の範囲が広がるぞ。カボチャは万能食材だからな。仮に味が悪くても砂糖を足したりして調整出来れば問題ない。

 俺と出会う前のムーイが知ってて助かった。


「それじゃ今日、ムーイが頑張ったら新しいお菓子を早速作ろうな」

「おーし! やるぞー!」


 ムーイがやる気を見せて腕を上げる。

 日々の楽しみを見いだせるのは良いな。明日も見えない状況でもムーイの元気な態度は癒やされるような気がする。

 そんな訳でターミナルポイントから俺達は移動を再開する。

 目指すはカーラルジュなんだが……あの野郎、何処まで移動をして居やがる。

 時々見つかる足跡を頼りに探しているけど一向に追いつけて居ない。

 なんだかんだ戦闘に時間を掛けてしまっているのが原因か?

 荒野をマントを羽織って巨大な剣を担いで移動する……俺が目を開けていると砂が思いっきり目に入るのでムーイの目線で周辺を確認だ。

 ……なんか荒野を転がる植物、イヴィルタンブルウィードって魔物が群れを成して転がってくる。


「はぁ!」


 バサァっとマントを靡かせてムーイが竜騎兵用のショートソードを片手で薙いで切り裂く。

 巨漢の冒険者って出で立ちでの戦闘だな。

 仕留めた事で経験値が俺に流れ込んでくるのを感じる。


「なあ、ユキカズ。この魔物からお菓子は作れないのかー?」

「種とか少し混じっていたりするけど基本は燃料に使う程度だな」


 それも火種って程度だ。まあイヴィルタンブルウィードはそこそこ太い枝の集合体みたいな魔物だから焚き火に使えるとは思う。


「そっか。弱くて数が出るだけだなー」


 っと無数にこっち目掛けて転がってくるイヴィルタンブルウィード達をムーイはドンドン仕留めて行く。

 この辺りはイヴィルタンブルウィードの生息地域って事なのかな?

 解析は数回凝視するだけで終わった。

 そんな感じで進んでいくと……。


「ヴウウウ……」


 今度はデザードブレードコヨ-テというサーベルウルフの亜種みたいな魔物が見慣れぬ獲物がやってきたとばかりに群れでくる。

 ……単純に強さはサーベルウルフよりも上だろうな。

 見るだけでなんとなく分かる。


「ワオーーーン!」

「ヴァフ……」


 けんかっ早いというか群れで行けば勝てると思って居る動きで襲いかかってくるな。


「よっと! ふん!」


 流れるようにムーイが竜騎兵用のショートソードで殴りかかって叩きつけ、衝撃波を発生させる。


「ユキカズから教わった技ー!」


 からのアクセルエアをムーイはデザードブレードコヨーテに向かってぶちかました。


「キャン!? ヴウウウ!」


 あ、思ったよりタフだった様で仕留めきれずに受け身を取られて噛みつかれてしまう。


「ふん!」


 ただムーイの体は柔軟というか人間みたいに血が出るような構造をして居ないモチみたいな性質のある体付きをして居るので噛みつき程度では効果が無い。

 俺の部分に食いつかれたら痛いんだけどな。

 そこに届くほどの攻撃をデザードブレードコヨーテは出来ず、ムーイは手を伸ばして力を込めながら剣の峰で殴りつけた。


「ギャーー」


 手痛い反撃を受け、デザードブレードコヨーテの一匹が絶命。


「ヴウウウウ……」


 まだ戦意を喪失してないデザードブレードコヨーテのリーダーらしき奴がうなり声を上げて仲間に攻撃命令をした。


「こいつが頭ー!」


 ブン! っとムーイが竜騎兵用の剣を力の限り投げつける。

 回転しながら竜騎兵用の剣はデザードブレードコヨーテのリーダー目掛けて素早く飛んで行って……。


「ギャーー」


 縦一線とばかりに……一刀両断してしまった。


「キャンキャンキャン!」


 リーダーが絶命した事で群れが戦いて逃げ出す。

 格下の雑魚魔物って感覚だな。

 手に入る経験値はそこそこ入ったか……ビリジアンワイルドタイガーよりちょっと弱い数で襲いかかってくる魔物って分析だ。

 一応それなりに強くはあるけど今のムーイなら勝てない相手じゃ無い。


「やったぞユキカズ!」

「ああ」

「なんか前よりももっと力が出せるようになったぞーそれなのに剣を振っても疲れた感じがしない」


 うん。確認した感じだとムーイの体を動かすエネルギー消費が大分抑えられて、その分出力が大きく出せる様になった。

 前よりも明確に力が振るえる様になったのは間違い無い。


「これも前よりユキカズが強くなったお陰だな!」

「ムーイが頑張ってくれているからだよ」


 今でも俺はムーイに……文字通り寄生している奴でしか無い。


「えへへ……」


 なんて勝利の余韻に浸っている所に……ゴゴゴと砂地地響きが足下を通じて感じる。


「何か大物が来たな」


 目を開いて周辺を確認する。

 すると砂から少しばかり……背びれのような物が出ていてこっちに向かって近づいてくる大型の魔物、サンドキラーシャークという魔物が現われる。


「シャアアアア!」


 デザードブレードコヨーテの死体に向かって砂の中から口を出して襲いかかって砂の中に潜ってしまった。

 血の匂いに誘われてきたか。

 砂の中に居るサメとか……座学で覚えがあるぞ。

 結構強力な魔物で竜騎兵で戦う事を推奨される魔物だ。

 まあ、ムーイと一緒だとそう言った魔物を相手に戦う事が多いんだけどな。


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