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百六十七話


「進化条件を満たした」

「お! ユキカズ進化するのか?」

「出来るからな」

「あのな。戦って魔物を倒すたびにオレ、体が楽になったからユキカズが強くなったんだって分かってたぞ」


 ああ、その辺りの感覚を俺を通してムーイは感じて居たのか。

 なんて言うか、戦うだけで負担が軽減出来ていたのならそれが良いよな。

 ……思えばムーイと出会ってから俺はムーイに頼りっぱなし過ぎている。自力で強くならなきゃ本当の強さなんて言えない。

 でも、仮初めの強さだったとしてもムーイを生かす事が出来るなら利用してやる。

 じゃなきゃ俺は俺を許せない。

 もしもカーラルジュを倒してもムーイの力を取り戻せなかったとしたら……俺は責任を取ってこのままで居なければいけない。


「それでムーイ、進化はした方が良いよな」

「うん。そうした方が強くなれるってユキカズ言ってた」

「ああそれで……またムーイに聞くんだが、何に進化した方が良いか意見を聞きたい」

「わかったー」

「ただ、先に言って置くがパラサイト・クリサリス系への進化は絶対にしないからな」


 ムーイの信用が辛いというか、絶対に間違っている進化をするのが分かる。ムーイを苗床にして羽化するとか一体何に俺はなるんだよ。

 生かすために寄生しているんだ。ムーイを俺の一部にするために進化してるんじゃない。


「う、うん。わかったぞ」


 という事で俺はムーイに進化先を教えるとムーイも考える。


「なんか難しいなー」

「ああ……竜騎兵とか居たらドラゴンパラサイトってのも手だとは思うのだけどな。竜騎兵のコアって結構便利だったし」


 魔獣兵でバルトと操縦をしていた時の話だけど、俺の浸食を遅らせる効果があったし怪我とかも治療する役割も兼ね備えていた。

 竜騎兵のコアを利用してムーイを生かしたままコックピットで俺がバルトの代わりとばかりに操縦とか出来たら便利だ。


「オレに寄生したまま竜騎兵ってのにユキカズ寄生するのか?」

「そこなんだよなー……さすがに今の俺にそんな器用な真似は出来そうに無い」


 どっちかって事になるからムーイと分離しかねない。

 それこそバルトみたいに最初から研究所とかで眠っている竜騎兵が必要だ。


「ユキカズ、オレに寄生してる……竜騎兵と同じ?」


 うわ、ムーイの奴、感覚が似てるのに気づいた。

 察しが良いな。


「似てるのは間違い無いけどちょっと違うから安心しろ」


 バルトがムーイのポジション兼、俺のポジションで誰かが操縦を担当する感じだからな。

 色々と似てるけど大きく違う。


「そっか、でもオレ、お腹にユキカズ居るの嫌じゃ無いから竜騎兵って奴の気持ちは分かる気がするぞ」


 あんまり良いことじゃないってのに……ムーイの純粋さが俺には辛いな。

 指一本動かすのに誰かの許可がいる状況なんて辛いに決まっている。

 俺はできる限りムーイが前と同じように体を動かせるようにするだけだ。少しでも負担を減らさないと。


「話を戻すぞ。やっぱり単純にギガパラサイトへの進化で良さそうだな」

「うん!」

「問題は……どうも感覚で分かるけど今より体が大きくなりそうなんだ」


 ムーイのお腹に寄生している俺だけどギガパラサイトはメガパラサイトよりも一回り大きくなる気がする。


「じゃあオレも大きくなる?」


 ……ああ、考えて見ればムーイってモチみたいな体してるんだから平気なのか。

 どうもこの辺りの感覚を忘れがちだ。


「どれくらい大きくなるんだ?」

「寄生する相手でサイズが変わるみたいだ。ムーイの場合、一回りくらいで抑えられるはず」

「わかったーじゃあユキカズ進化して良いぞー」


 覚悟は済んだとばかりにムーイが全身の力を抜いている。

 まあ……ギガパラサイトへと進化するで良いよな。俺だけだった時より安易に進化を決断出来ない分、怖い所がある。

 もっと良い選択があるんじゃないかと……。

 ただ、これでもう少し戦いやすくなるなら……。

 俺はギガパラサイトへの進化を行う。

 ググググ……っと体が膨れ上がる感覚がして、ムーイと繋がっている部分がさらに大きくエネルギーを循環させ始める。

 本来はエネルギーを搾取する部分なんだけど、ここから俺はムーイの体を循環させてエネルギーを与えている。


「う……」


 俺の膨張に合わせてムーイの体も大きくなった。



 ギガパラサイト(兎束雪一) Lv1 EVO・P 29542

 所持スキル 属性熱線 魔眼 収束魔眼 飛行 LGB 分析 分析力向上++ 変身 熱線威力アップ 飛行速度向上 配下視界共有 変化項目拡張 接続再生(中) 毒液 迷宮種・ムーフリスの因子

 固有能力 寄生 同化&分離 宿主経験値&Lv強奪 魔力吸引 生命力吸収 肉体干渉 感覚・思考制御 宿主改造 配下生成 浸食捕食 強酸噴射

 Lv20になった時……因子採取 固有能力・宿主凶暴化指示

 進化条件 Lv50

 人間 ×不可 ▽所持スキル

 分析▽

 変身▽


 肉体

 体 ギガパラサイト

 手 ギガパラサイト

 宿主 迷宮種ムーフリス 瀕死


 宿主 迷宮種ムーフリス Lv?

 所持スキル ミダスの手 スイートグロウ 剛力 頑丈 言語理解 衝撃吸収 ??? 世界の断片× ??? ???…



 うん。単純に一回り能力が上がった感じだ。今までよりも出力が上がってエネルギー操作を一気に行えば一撃の威力はかなり上がるんじゃ無いだろうか。


「だ、大丈夫か? ムーイ」

「うん。前より楽になったぞユキカズ。めまいはしないし元気になったのが分かる!」

「そうか……それは良かった」


 今は俺とムーイが両方食事をしていたのでエネルギーに関しては問題ない。

 出力がどれだけ上がって、燃費がどれだけ悪くなったか……だな。

 ……そこはまあ、色々と誤魔化して行けば良いか。

 もっとムーイの力を、全盛期の頃に近づけ……超えて行かなきゃ行けない。

 さて、進化して感覚の調整をもう少ししないとな……進化直後が調整が必要なんだし。


「じゃあムーイが寝ている間に色々と調整と改造をしておくから、そろそろ休んでくれ」

「うん。ユキカズ、寝るまでの間……ユキカズの話をして……」

「ああ……じゃあムーイ、しっかりと目を閉じてくれよ」

「うん」


 ムーイが目を閉じたので体を操りムーイの視界に俺の知る記憶を映し出す。

 前に見せた記憶映像の照射をムーイの視界にだけ見せるような形だ。

 一文一句全部思い出せる訳じゃないけれど、頭で描いた記憶をムーイにそれとなく見せる形だ。

 寄生したからか、声もなんとなくでムーイに聞かせられる。


「今回は作り話を大分混ぜてるけど事実もあるから楽しんでくれ」

「うん。あ、ユキカズがカードで遊んでるー」


 今回は訓練校時代に先輩兵士を相手に遊んだカードゲームなんかのやりとりをちょっと事実とは異なる感じで遊んでいるようにしている。

 負けたり勝ったり、賭ける代物の規模を大きくして負けたら仲間……ブルとフィリンが借金のカタに取られてしまうようにして見せた。

 かなり失礼なギャンブルだけど、作り話なんだからこれくらいは良いだろう。

 ちなみにカードゲームは再現してムーイと時々遊んでる。寄生した影響でムーイの視界にカードを映す形で遊ぶ事も出来る。

 問題は……次に来るカードとか俺が操作しているので筒抜けなんだけどさ。

 俺の手の平で勝ったり負けたりするのがムーイは楽しいらしい。ゲームとかのゲーム機側ってこんな感覚なのかも知れない。


「すー……すー……」


 やがてムーイは瞼の裏で映し出される映像を楽しんでいる内に寝息を立て始めた。

 その寝顔は……俺からすると少しだけ怖い。

 俺が寄生することでムーイは命を繋いだけれど、本当に命を繋いだのか……俺には確信が持てない。

 もしかしたら俺は……ムーイの体をいたずらに好き勝手使っているだけなのでは無いか?

 本当のムーイはやっぱり死んでいて、今のムーイは俺が考えたムーイかも知れない。


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