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百五十三話

「ケーキ! ケーキケーキ! 凄い! すごくおいしそー! ムーイ見てるだけで涎が出てとまらなーい!」


 寝ぼけていたっぽいのに大興奮でムーイは作っているケーキを夢中で見つめている。

 ふふ……こういう所がなんかかわいく見えてくるなぁ。

 作り甲斐のある反応だ。菓子職人たちの気持ちがわからなくもない。

 バルトとかもお菓子が好きだった。

 ……朝からケーキとか重すぎじゃないかと思うけどムーイはこれくらい平気で食う。


「よし完成、後は切り分けてー」


 スッとケーキを切り分けて目でムーイを喜ばせる。

 こういうケーキの断面図って独自の楽しみってのがあるなぁと思える。

 ……肉の断面図じゃないぞ。


「わー!」

「ほら、召し上がれ」

「食べて良いのかー?」

「ああ、その代わり今日も色々と頑張ってもらうからなー」


 ムーイのお陰でサバイバル状況下でも食事には不自由を全くしないし、俺より遥かに強い魔物を相手でも神経を張り巡らせすぎずに済んでいる。

 むしろムーイが居ればこの辺りの魔物は大半が怖くないくらいだ。

 なら俺も相応にムーイには礼をしなくちゃいけない。 

 共生関係ってのとも違うけど、礼には礼で答えないと。

 最初は強引な関係だったけどムーイがただ知らなかったに過ぎなかった訳だし、話をしたらわかってくれて俺に協力してくれている。

 覚えてよかった菓子技能って事なのかなー……。


「うん! オレ、今までよりも張り切る! 頑張るぞー! いただきまーす!」


 ムーイが差し出したケーキを頬張り、さらに顔を綻ばせて全身を使って喜びを表現していた。


「俺も試食に少し食うな。残りはムーイが食って良いぞー」

「うん!」


 そんな訳でダンジョンパームクリームで作ったケーキを試食。

 味は……普通のケーキに比べて重さがやっぱり足りないか? ヘルシーと言えば聞こえは良いかもしれない。

 まあほとんどが植物由来の食材で作ったからなー。

 こんな所だろう。


「ごちそうさまでした! ユキカズ! ちょううまかったぞー! ムーイ全力全快!」


 ムキっとムーイが喜びを体で見せて答える。

 それくらい満足してくれているって事で良いのかね。


「そうかそうか」


 で、俺は昨日の残りであるダンジョンクラブも食べてっと。


「またダンジョンクラブかー? ユキカズ好きなのか?」

「残したら勿体ないから食ってるだけ」


 ムーイの奴、そんなの食うなんて理解できないって顔をしてやがる。直接言わないから良いけど、どうして黙っていられないのか。

 あ……そうだ。ついでに作っていたのもあったんだ。

 ダンジョンパームミルクの脂肪分を取った脱脂乳……いや、この場合はほぼ水と言って良いのか?

 若干風味のある脱脂乳を小麦粉に加えて適度にカニの形に整形してパンにしてやったぜ!


「ムーイはついでにこれでも食ってろ」

「わーなんだこれ? ダンジョンクラブのパン? オレ、こんなの変化させた覚えないぞー? ユキカズ、オレの力使えるのかー?」

「使えないぞ。それは俺がパンを練ってダンジョンクラブの形にして焼いた奴」

「そうなのかー! これもおいしーい! ダンジョンクラブのパンおいしいなー! ユキカズの気持ちわかったー」


 ムーイは納得をしながらムシャムシャとダンジョンクラブパンを食べていた。

 何がわかったんだよ。そのパンにダンジョンクラブの肉は使われてないぞ。

 ともかく、これで少しは静かに飯が食えるな。

 なんて感じで俺の朝食は終わった。

 で、その日探索で……ムーイがダンジョンクラブをそのまま菓子パンに変えてしまったのは蛇足として片付けておくべきことだろうか。

 文字通りダンジョンクラブパンにダンジョンクラブはなってしまった。

 冗談にしか思えない末路の一端に俺が関わってしまった事を、トドメにパンと化したダンジョンクラブを見て手を合わせる他無かった。




 さらに数日後。

 探索範囲を広げる合間に俺のLvがぐんぐんと上昇した。ムーイによるパワーレベリングのおかげだ。

 この前進化したばかりだというのにサーベイランスアイの進化可能Lvにまでサクッと到達したぞ。

 その途中でLvアップで新たに習得した変化項目拡張・目という奴なんだが、これは変化項目拡張という最初習得したけど何が拡張したのかわからなかった項目に関する代物だった。


 正確には変化項目拡張はあくまで土台だったというべきか……最初は少しばかり体のパーツを長くしたり短くしたりする程度の事しかできない要素だったようなのだけど、目という項目が追加された訳だ。

 それでどんなことができるようになったかというと体のパーツ……手や足に目を生やすことができるようになった……。

 具体的にはサーベイランスアイの複数ある手の先に目を生やさせたりできる。多少EVO・Pを使うんだけどさ。

 思わず顔を逸らしたくなるスキル取得だ。EVO・Pを無駄に余らせるよりはいいかと使って実験した。


 ただ、効果的な意味で言えばそれなりに優秀か。

 何せ目が増えるわけでその目で放てる熱線がその分増える。あ、体にある目ほどではなく手に合わせたサイズの目だぞ。

 手が五本に増えている訳だから本体の目と合わせて六本の目で熱線を放てる……ムーイの背中から固定砲台としての役目を持てるな。

 ムーイの手が届かない空飛ぶ魔物とかを地面から迎撃するとかは出来るようになったのが収穫か。

 問題はまだムーイなら勝てるけど俺だと厳しい魔物が多い。熱線の威力が上がったからと言って過信は禁物なんだろうな。


 ちなみに熱線のバリエーションも増えて冷凍光線や電撃なんかも出せるようになってきたぞ。ステータスだとすべてが熱線で統一されていてしっかり確認すると放てるという面倒臭さがある。

 後はサーベイランスアイは監視が得意な魔物故か魔物の分析をする力が他の進化した姿よりも高かった。

 おかげでダンジョンクラブとか周辺の魔物で分析が出来そうでできなかった魔物の分析が終わったぞ。


 そんな帰り道でのターミナルポイントで俺はサーベイランスアイの進化項目を確認することにした。

 どんどん進化してムーイにおんぶにだっこの状況から脱却し、こんなサバイバルな状況からブルたちの元へと帰らねばいけない。

 って訳で確認!


 ◆セントリー・サーベイランスアイ

 サーベイランスアイの上位種。より高度な監視と近寄る敵を強力な熱線で仕留める警備の目。強力な魔物の拠点を守護する役目を与えられて配置されたりしている。目以外にも警報音波を発する事が出来る。

 進化条件……Lv20


 ◆アイ・リトルオクトクラーケン

 単眼の多足軟体魔物種。巧みに手を使い壁に張り付き空中を移動する能力を所持する。

 その本質は水中での活動であり、擬態も得意とする魔物。

 進化条件……Lv20 水場での生活 ※水中適応魔物の分析による分析変化


 ◆パラサイト

 他者に寄生する方向で進化した種。

 強力な魔物の体内に潜み住み着き、力を得る。

 進化条件……Lv20 他生命の体内での活動もしくは長時間の吸着した状態を維持


 ◆フロートツリー 進化条件未達成

 サーベイランスアイの亜種。植物の因子を取り込み、根を生やした。

 普段は浮遊しており休憩時や休息時、大地の上で根を伸ばすことでエネルギーを得る。

 進化条件……Lv25


 うーん……なんかこう……色々とコメントに困る進化項目ばかりだぞー。

 まずセントリー・サーベイランスアイは単純なサーベイランスアイの上位種って感じな進化ね。

 なんかボス魔物とかが自らの拠点の入り口とかに配置して警備を任せる感じだろうか。

 単純に能力の上昇は図れるかもしれない。

 こう……魔物を分析する能力自体は高めになるんだしな。より上位の魔物を分析することで進化とは別に体のパーツ部分を強化することができるようになるだろう。

 フライアイデスボール辺りで手とかをソードファルコンなんかに変えるだけでも速度が上がる感じになりそうだし。

 そういう意味では分析特化で進化するのは良いかもしれない。音波攻撃とか出せるようになるみたいだし。

 ただ……強力な魔物の拠点を守護ってさ……。


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イラストの説明
― 新着の感想 ―
[一言] 最終形態がD&Dで有名な色々と危険なモンスターになってしまう気がするのですが。
[気になる点] なんだか、支援系キャラになってきてますね…
2020/08/04 16:00 退会済み
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