表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/394

百五十話

 って感じで拠点へと戻った。俺の目のおかげで拠点内も明るい。

 ……俺が見ている範囲だけだけどさ。

 一応明りとして壁に松明とかを灯したりもできるようにしているんだけどさ。

 魔物となって夜目が利くのでそこまで不便には思ってなかったけど、ムーイの目はそこまで暗い所は見えないっぽい。

 その代わり、どこにあるのかわからないけど鼻は利くらしい。

 かまど……もう台所になりつつある所まで来た所で俺はムーイの背から降りて早速菓子作りをすることにした。

 正直……俺は普通にジャイアントクラブの肉を焼いて飯にしても良いのだけどムーイが甘いものを要求する。ので作る。

 取引って訳じゃないけど要望に応えないと何時、戦ってあげないと言われるか分かったもんじゃない。


「そのダンジョンパームでミルク作るのかー?」

「ああ、まずはミルクを作ってそれをムーイが覚えることで色々と作れる菓子の種類が増える。味が落ちると言ってもしっかりと覚えてくれよ」


 ココナッツミルクって日本に居た頃の食材の知識と異世界に来て菓子職人に教わって習得した技能と勘から俺はダンジョンパームから如何にココナッツミルクが作れるかを勘で作り出すことにする。

 試行錯誤を本来しなきゃいけないのだけど勘でそれっぽい物へと近づけることは出来るだろう。

 まず熟して硬くなったダンジョンパームのくぼみに熱線を当てて穴を開けて中の水分を容器に移す。


「なんかすごく楽しみだなー」

「実のところ、勘で作ってるから失敗したらごめんな」

「別にいい。そうなったらユキカズに別のお菓子作って貰う」

「分かってる。失敗しないように努めるさ」


 そうして水を出し切った所でスラッシュウォークアイに変身して手を鋭い刃物に変えガツっとダンジョンパームの実の切れ目に刃を入れて何度もカンカンと鉈で割るようにして分割する。

 ちょっと硬かったな。

 中身の果肉である白い部分を削り取り鍋に移していく。

 あとは……たぶん、これに水を加えて……ゴリゴリと若干つぶすようにしながらマメに混ぜ込んでいく。

 出来る限り実から脂肪分を水の中に出させないといけない……気がする。

 グリグリグリと手が疲れるけど、この作業もそう何度もする訳じゃないんだから集中力が続く限り行う。

 そうしてしっかりと混ぜ込んだ水をよく洗った布の上に流し込みながら鍋に絞り入れていく。

 これは……根気と力があれば十分だな。


「ムーイ、頼んだ。しっかりと絞り出してくれ」

「良いのかー?」

「ああ、破かないように注意しながらやってくれよ」


 本当はもう少しキメが細かい布とかでやりたかったのだけど限られた物資の中で行う精製作業なので妥協する他無い。

 怪力のムーイによってギュウウウ……っと信じられない位圧縮された撹拌したダンジョンパームの果肉入りの水は絞り上げられ鍋にしっかりと滴って行った。

 さて……確認。鑑定を使って出来上がった液体を見るぞ。


 ダンジョンパームミルク

 品質 新鮮 味普通 脂肪分多め

 毒物 無し

 効果 渇き回復 疲労回復(微)


 よし、しっかりと果肉の脂肪分を出すことができたようだ。


「おーし完成! ミルクだ!」

「出来上がったのかー?」

「ああ、ムーイ。口に合わないかもしれないけどしっかりと試飲してくれ。まずはこれが基礎になるから」

「わ、わかった」


 恐る恐ると言った様子でムーイが出来上がったダンジョンパームミルクを試飲する。


「んむ……なんか、舌にこびり付くドロッとした……飲み物だなユキカズ。お菓子じゃないぞユキカズーこれがミルクなのか?」

「正確にはダンジョンパームミルク……俺の知る所だとココナッツミルクだ」


 ミルク……牛乳って飲みやすく加工されているし、生クリームなんて直接飲んだらドロッとしてて美味くなんかない。


「良いから覚えてくれ、そこが始まりなんだ」

「うー……わかった。もう大丈夫覚えた。ゲフ……」


 口に合わないと言った様子でムーイがダンジョンパームミルクから口を離した。

 俺も飲んでみるのだが……まあ、美味くはない。後味が若干軽めって所だ。


「うー……」


 ムーイが騙されたって顔をしているので機嫌取りに飲みやすく加工するとしよう。


「んじゃ、まずは飲みやすいダンジョンパームミルクにするから待ってろよ」

「うん」

「とは言っても蜜と水を適度に加えて冷やすだけなんだけどなー」


 ササっと目分量で飲みやすいだろうって感じで適当に菓子職人から教わった勘で材料を混ぜる。


 ダンジョンパームミルク

 品質 新鮮 美味 のど越しさわやか

 毒物 無し

 効果 渇き回復 疲労回復(微) 魔力回復(微) 精神安定(弱)


 おや? ちょっと加工しただけで随分と改善がみられるなー。

 なんて思いながら細工を終えたダンジョンパームミルクをムーイに差し出す。


「ユキカズ、信じて大丈夫なのかー?」

「大丈夫だから飲んでみろ」


 俺の言葉に恐る恐ると言った様子でムーイは出来上がったダンジョンパームミルクを口に付ける。

 すると何度か瞬きしたかと思ったらグビグビと飲み始めてしまった。

 やがて……。


「プハー! ユキカズ! これ甘くて凄くおいしい! 飲んだ後に喉がスッとしてさっぱりするぞー! 美味しかった! これがミルクで作れる菓子……なのかー?」

「違う違う。手始めにムーイに飲んでもらっただけ。じゃあ最初に作った奴を模したのをムーイが水を変質させて作ってくれ」

「そっか! わかったー! さすがユキカズ、これなら安心出来るぞー」


 って感じでムーイは飲ませたダンジョンパームミルクを水を変化させて作り出す。

 試しに試飲……確かに味が落ちるというか薄いなぁ……。

 とはいえ、何度も作るよりもムーイに変化させてもらった方が楽なのでやってもらうけどさ。

 少し煮て煮詰めりゃ薄さも誤魔化せるしこの薄さは作る菓子に丁度良い。


「じゃあ手始めに作るのはフレンチトーストで良いな」


 飛空挺の提供メニューにもあったシンプルな料理だ。

 手始めに作るにはこれで良いだろう。

 クリムイエローワームの卵を割って水を変化させたダンジョンパームミルクを投入。

 蜜を入れてしっかりと混ぜて液を作り、甘い香りのする干した薬草……アエロー投入、作り置きしていたパンを切り分けて液に浸す。

 本当は分厚くするのが良いのだろうけど今回はこんなもんで良いだろう。

 それを鍋に詰めて火でしっかりと火を通して……完成!


「出来た! 名付けてダンジョンフレンチトーストだ!」


 ダンジョンフレンチトースト

 品質 新鮮 美味 濃密

 毒物 美味による中毒性あり

 効果 空腹解消 魔力一時増加(弱) 集中力一時増加(弱)


 中毒性ありって……まあ出来上がる菓子には結構付きやすい奴だから大丈夫だろう。

 ムーイが食べた蒸しパンもそうだったし。


「ほら、ムーイ。今日の晩飯だぞ」


 皿に盛ってムーイに差し出すとムーイが目をキラキラさせていた。


「いただきまーす! んー! あまーい! ユキカズ! 美味しいぞー! あのミルクとパンがこんなになるなんてムーイ驚きー! ユキカズの菓子はすごく不思議だぞー!」


 ムシャムシャとムーイは夢中になって出来上がったフレンチトーストを食べ続けている。

 もっと量を作らないとムーイは満足させられないかなー……。


「ムーイーもっと作るなら材料を用意してくれよー」

「んー! わかったー! ユキカズおねがーい! もっと食べたいー」


 って感じでムーイが満足するまで俺はフレンチトーストを焼いて作ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
イラストの説明
― 新着の感想 ―
[一言] 中毒があるってもはや一種の麻薬じゃね?
[一言] ついに毒物扱いに…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ