百四十九話
フローデスアイは言うまでもなく単純にリトルフローデスアイの大人というかサイズが大きくなる感じだな。
特にこれと言った代わり映えの無い上位進化って感じ。
一体どこまで空飛ぶ目玉は成長していくのか……だな。これが最上位とは出てないけど……うーむ。
無難なのはこれって感じにも思える。
で、次がサーベイランスアイ。
ウォークアイとも異なる壁や天井にくっ付く……って確認すると肉体の部分が体、手、手、手、手、手って……手が五本に増えるって事なのか?
まあ……フライアイとかの手に変えれば飛ぶとかできそうだけど……ものすごく奇妙な進化をするのは間違いない。
あれだ……フライアイの進化で足を司るウォークアイへの進化が出たから上位種のリトルフローデスアイの進化は手ってか?
なんか劣化しているようにも見えるぞ。
魔物図鑑とかで見たような覚えがあるけどかなり曖昧だ。あんまり強い魔物じゃなかったはずだけど……。
で、なんの魔物になるのかすらわからない進化先が一つにゲイザーね。
ムーイにお願いして強引にLv50までパワーレベリングしてもらうって事も今では現実的だけど卓越した魔眼の条件を満たせていない。
自然と二種に限られる……んー無難に行くならフローデスアイだよな。単純に成長するって感じだし。
ただ、ふと気づいたんだけどサーベイランスアイって壁や天井に引っ付いて監視をする……しっかりとした土台で凝視する魔物って事だ。
「なあムーイ」
「なんだ?」
「俺がムーイに引っ付いたままで戦うことは出来るか?」
「試してみないとわからないぞ。でもなんか楽しそうだな!」
リトルフローデスアイに変身中、ムーイの肩に乗っているときに足の力が頼りなくて載り辛く感じていた。
羽ばたくことにそこまで疲れは感じないけど、移動時の体力消耗を抑えられるならサーベイランスアイに試しに進化しても良いかもしれない。
また袋小路になった時はムーイにお願いしてリトルフローデスアイをやり直してフローデスアイに進化すれば良い……はず。
地道だけど進化を埋めていくのは悪い手じゃない。
「じゃあムーイのリクエストと進化の種類を増やすために進化するぞー」
「おー」
と言う訳で俺はサーベイランスアイに進化してみる。
直後ニュッと羽だった手と足が伸びてグニャっとした……タコの手に近い感じになってしまった。
骨が無くなるのかよ! 思わず体が地面にぶつかってゴロンと転がってしまった。
「うぐ」
「ユ、ユキカズ大丈夫かー?」
ムーイが俺の体を抱き上げる。
「あ、ああ……今までと異なる姿に変わったから感覚が変わって驚いただけだ。ちょっと俺の体を持ったままで頼む」
「おう」
ムーイに抱きかかえられたまま俺は手を意識して動かす。
んー……感覚で言えば手足とあんまり違いは……無いのか?
「ユキカズユキカズ、背中になんかあるな」
「そういわれても……」
動かせる手で背中を弄って確認……ん、なんか大きな吸盤みたいな感じか? 専用部位みたいな感じで。
「ちょっと俺の背中を地面に付けさせてくれ」
「わかったぞ」
俺の頼みを聞いてムーイが寝かせるように俺を地面に置いてくれる。
なんだろう……上下の感覚が変だな。魔物になってしまって空を飛んだり色々と出来るようになったけど一際違和感がある。
思えばフライアイボールって最初から飛べるから割と便利な魔物だよなー。
背中の吸盤っぽい部分に力を入れて首を座らせる感じで周囲を見渡す。
で、吸盤に力を入れるとしっかりと物を掴む感覚がした。
手をヒラヒラ動かして海に生える海藻……なんちゃって!
「何やってんだユキカズ」
「ん、体の変化に対する実験。後はー」
吸盤がどこまで延長できるかだな。
正直手は強い力は出せないっぽい。かなり極端な体をしている。
ただ、こんなんじゃまともに動けない。何かしらの手段があるはずだ。
で、吸盤と体がどこまで曲がるかを確認すると180度までは曲げられるっぽい。
これならムーイの背中辺りに引っ付いて前を見ることも出来る。
曲げられるギリギリだから筋がピーンとしそうだけど、背面のチェックも出来るから常時である必要はない。
後はこの手に関してだけど、自分を支えて移動するのはちょっと面倒っぽいなぁ。吸盤の部分で跳ねた方がまだ移動は早そう。
でも手が多い分複数の作業が同時に出来そう。
骨が無いから同じところに固定するのが大変だけど。
何か手を変化出来るかな?
とりあえずステータスを再確認。
サーベイランスアイ・ソルジャー(兎束雪一) Lv1 EVO・P 2157
所持スキル 熱線 魔眼 飛行 LGB 分析 分析力向上+ 変身 熱線威力アップ 飛行速度向上 配下視界共有 変化項目拡張
固有能力 吸盤 監視 鑑定精度向上 長距離視認 飛行能力減退
Lv10になった時……変化項目拡張・目
進化条件 Lv20
人間 ×不可 ▽所持スキル
分析▽
変身▼
フライアイボール
リトルフローデスアイ
ウォークアイ
スラッシュウォークアイ
肉体
体 サーベイランスアイ
手 サーベイランスアイ
手 サーベイランスアイ
手 サーベイランスアイ
手 サーベイランスアイ
手 サーベイランスアイ
固有能力という項目が出ている。基本的にはプラスなんだけど飛行能力減退というマイナスまであるのか。
手の単体能力がリトルフローデスアイ並みに低いな……しかも骨が無い。
試しに手を別の手に変えた所、羽に変える以外だと骨の無い皮が付くだけのスキン状態となってしまった。
一応性能は変化しているのだけど基本的にはサーベイランスアイの手をベースにした代物となってしまっている。
想像通りものすごく癖が強い進化だぞー。
「よし、確認完了っと」
「終わったのか?」
「ああせっかくだからムーイ、お前の背中に引っ付いていくからそのまま帰ろう」
「ん? わかった」
ムーイが背中を向けたのでその背中に向けて吸盤を向けて飛びつく。
ぎゅっとムーイの背中を掴むわけだけど……ムーイ自体が餅のようなマシュマロみたいな体つきなのでちょっと掴みづらい肌触りだ。
しっかりとつかめているか不安になる。
「ムーイ、掴んだけど大丈夫か?」
「大丈夫だぞーふふ、なんかユキカズに触れて不思議な感じだな」
くすぐったいのかムーイが笑っている。
まあ、ムーイは強いから俺の吸盤に吸い付かれてもなんともないか。
吸盤の角度を変えて……ムーイの背中から前を見れるように体を固定、手を二本ムーイの肩に軽く添える。
肩車っぽいけど微妙に違うスタイルになってしまった。
「よーしユキカズ、行くぞー」
「お、おう……っと、日が暮れて来た。進化で出来るようになった熱線もやってみるぞ」
サーベラインスアイに進化したことで熱線の種類が増えた。
熱線は照射が出来るようになった。それとリトルフローデスアイよりもさらに力を貯めて熱線が放てるようになった気がする。
それくらい力が込められる。
さて……試しにムーイの肩に乗ったまま前方に照射を行う。
「おー! 明るくなったぞ! 見やすくなった!」
暗くなってきた帰り道が俺の放った熱線で日の光のような明るさを取り戻した。
のしのしとムーイが地味に早い歩調で走って行く。
乗り物酔いとかになりそうな怖さがあるな……生憎俺の三半規管で乗り物酔いはしないみたいだけどさ。
「暗い道が明るいーどんどん前に行けるーユキカズ、あそこを見てー」
「はいはい」
なんともない所をムーイが指さすので合わせてやる。
……ぶっちゃけ俺、ただの懐中電灯ポジションじゃないか?
松明よりは明るく出来るはずだけど……深く考えない方がよさそう。
ちなみに俺の視界はサーモグラフィーも完備で、周囲の温度の変化すらも見えるようになっている。
まあ意識しないとサーモグラフィーにはならないが。
便利だとは思うけど直接の強さには関わっていないのがなんとも悲しい所だ。





