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百四十七話


「ユキカズ! 次は何をするんだ? もっとおいしいお菓子作る方法無いのか?」

「そうだなー……ミルクがあればもっと作れる料理のレパートリーが増えるとは思うんだが……」


 何分、この拠点にある菓子作りに使う食材は野麦から作った小麦粉に薬草を煮詰めて作った砂糖蜜……それと異世界独自製法で作るマーガリン、後は水……木の実とか色々と具材にはなるけれど乳製品が無い状況では自然と作れる種類は絞られる。


「ミルク! それってどんな食べ物なんだ!?」

「食べ物というか飲み物だな……動物や魔物なんかの乳から絞り出す脂肪分を含めた液体と言うべきなんだが……」


 一応食材としてムーイが覚えれば劣化はするけどムーイの魔力が続く限りは作り出すことができる。

 どこかで確保できれば良いんだけどな。


「そんなのあるのかー?」

「ああ……ただ、ちょっと確保が難しいな。色々と探索している内に見つけられればいいな。あとは卵だな。クリムイエローワームの卵で代用してるけど他にも卵を使えば風味とか味わいが変わる」

「たまご? これ……だよな」


 ムーイが出かけついでに採取したクリムイエローワームの卵を指さして聞いてきたので頷く。


「そっかー菓子って奥が深いんだなー」

「ムーイはこれまで色々と食べて来たけど何が一番好きだ?」

「ユキカズの作った菓子ならどれも好き! その中で一番はー……うー……オレわかんない!」


 どれが一番かって事でムーイが困ったような顔をしている。

 はは……素直でかわいげがあるな。俺を殴ったのは本当に何も知らなかったからなんだって今ならしっかりとわかる。


「ユキカズ! もっとお出かけしよう! 知らない食べ物を見つけたい!」

「ああはいはい。ついでに俺のLv上げも手伝ってくれよ」

「うん!」


 と言う訳で拠点に採取した品々を置いてから俺達は再度出かけることにした。

 ムーイが来たので拠点はしっかりと拡張したぞ。

 食糧庫とかも作ったし二人というか二匹の共同生活はかなり快適化が進んでいる。

 ただ……ベッドを二つにして別々にして寝ようとしたらムーイが俺を抱き枕にするのだけは譲らないので毎晩俺はムーイが寝付くまで抱き枕をしている感じだ。

 さて……現在の俺のステータスを再確認しよう。


 スラッシュウォークアイ・ソルジャー(兎束雪一) Lv14 EVO・P 1253

 所持スキル 熱線 魔眼 飛行 LGB 分析 分析力向上 変身 熱線威力アップ 飛行速度向上 配下視界共有 変化項目拡張

 Lv?になった時……

 進化条件 Lv?? 進化条件不明

 人間 ×不可 ▽所持スキル

 分析▽

 変身▼

 フライアイボール

 リトルフローデスアイ

 ウォークアイ

 肉体

 頭 ビリジアンパラボナラビット

 体 スラッシュウォークアイ

 手 ウォークアイ

 足 スラッシュウォークアイ


 スラッシュウォークアイはウォークアイのLvが15になった時に進化できるようになったので進化した。

 なんか他にもあるっぽいのだけど条件不明って出てこれ以外なかった。

 まあ言うまでもなくムーイがいるおかげで経験値が非常に稼ぎやすくなってね。

 ウォークアイよりも機敏に動けるし瞬発力とか色々な面で多少上だ。

 ムーイと一緒にソードマンティスと戦って勝ったついでに分析が進んで腕を変えた所で進化条件に付随した感じだ。

 特徴として相手の隙を見つけやすくなる能力を持っている。そこを鋭い手で切りつければクリティカルヒットを狙える感じだ。

 最近はムーイに戦って貰ってばかりで俺は後方援護をしてばかりなんだけどさ。


 ただー……進化条件不明って出てそれ以上の進化ができない。いきなり進化の袋小路とか……いや、ウォークアイ系の魔物には上位種が居たはずだから存在はするはずなんだ。

 にも関わらず俺は進化出来る条件を満たしていないって事なんだ。

 だから一度立ち返るって事でフライアイボールになってムーイに引き上げして貰ってリトルフローデスアイへと進化してみた。


 ああ、変身で前段階に退化して進化しなおすことは可能みたいなんだ。

 相応に能力値が下がるみたいなんだけどさ。

 フライアイボールよりさらに小型化した体躯になってしまったが熱線の威力は上がった感じだった。

 ムーイの肩に小鳥みたいに乗っかったのが印象的だな。俺自身が偵察担当の使い魔みたいになってしまったような感覚だ。


「ユキカズ、今回はどんな姿になるんだ?」

「リトルフローデスアイの進化条件を満たすつもりだぞ」


 菓子作りをする上でウォークアイ系の姿が便利だったので拠点にいる時はこの姿になっているに過ぎない。

 なので今回は進化条件を満たすためリトルフローデスアイの姿に変身する。


 リトルフローデスアイ・ソルジャー(兎束雪一) Lv15 EVO・P 1253

 所持スキル 熱線 魔眼 飛行 LGB 分析 分析力向上 変身 熱線威力アップ 飛行速度向上 配下視界共有 変化項目拡張

 Lv?になった時……

 進化条件 Lv18

 人間 ×不可 ▽所持スキル

 分析▽

 変身▼

 フライアイボール

 リトルフローデスアイ

 ウォークアイ

 スラッシュウォークアイ

 肉体

 体 リトルフローデスアイ

 手 リトルフローデスアイ

 足 リトルフローデスアイ


 分析で色々と魔物のパーツ変化を手に入れてはいるのだけど格上の魔物が多い手前……そこまでバリエーションが増えていない。

 俺自身がもう少し強くなれば使える魔物の力が出せるようになるかもしれない。


「わかった。魔物を探すんだな。ミルクはどんな魔物が落とすんだ?」

「哺乳類……鳥じゃなく鱗がある訳じゃなく毛が生えた魔物の中型以上の子供がいるメス個体だな……えーっとゴート系とかブルファイト系が居ればもしかしたら手に入るかもって所だけど」

「ブルファイトってユキカズがよく話す奴か?」

「そいつはブル! 確かに似てるけど違う! ブルの名前はブルトクレスって言うんだ」


 夜、就寝前にムーイが話をしてくれというから色々と話をしている内にブルの話もしていた。

 確かにブルファイトという牛型の獰猛な魔物の名前を言ったけどそこからブルを連想するとか……雄々しいって所は似てるか。


「そうだった。じゃあミルクの為に探すー」

「見つかれば良いけど……探索範囲で見つけたことは無いから期待し過ぎるなよー」

「わかってるーけど見つけたい」


 という訳で俺達は魔物を探しながら周辺探索を行う。

 ムーイが居れば大抵どうにかなるからなーむしろムーイが強すぎて俺の分析の%の上昇が足りないというか……まあ、ムーイも俺が逃げたりしないのをしっかりとわかってくれてきてるし、俺自身が強くなれば分析する魔物も増えて行くだろう。

 ギリギリの戦いで分析を徐々にしていくのでは無く、安全な状態で分析する方が楽なのは至極当然だ。

 って感じで歩いていくと……リードグレイジャイアントクラブという薄い灰色の4メートル以上あるカニが俺たちを見つけて近寄ってくる。


「出て来たなー! ユキカズ! オレ行ってくるー!」

「おう! 俺も熱線と魔眼で援護するから無茶するなよ!」

「とーぜん! 行くぞー!」


 ブンブンと手を振りかぶりながらリードグレイジャイアントクラブ目掛けてムーイは突撃して殴りかかる。

 ちなみにムーイと俺は疑似組手をしているぞ。

 菓子が焼きあがる前の運動としてゆっくりと体の型を覚える意味でやっている。

 なんでゆっくりかって? ムーイ相手に組手なんてできるわけねえだろ。怪力で動きも早くて教えるとかの次元じゃねえよ!

 なんて内心ツッコミを入れながら俺は魔眼をけん制にリードグレイジャイアントクラブに向かって放って混乱させる。

 フライアイボール相手の戦闘はしてて効果は耐えきれるくらいの耐久性を持ってはいるのだろうが俺はフライアイボールではなくリトルフローデスアイなので多少は効果がある。

 めまいを引き起こしたのか若干リードグレイジャイアントクラブの動きが鈍った。


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