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百三十八話


「さて……次はどこへ行くべきか……」


 仮拠点から飛び立ってから何をするかつぶやく。

 現在俺のLvは9になっていた。

 後1Lvほど上げれば進化とやらができるようになるので適度に経験値を稼ぐのが良いか。


「ギイイイ……」


 という感じで飛んでいると……なんだ? なんか光る変な色の煙を纏ったフライアイボールが仲間を引き連れて飛んでいる。

 そのフライアイボールは俺を見つけると思念みたいな物を飛ばしてきた。


〈従え……従え……集合してフライアイレギオンになろう。隊列を組むのだ……〉


 って感じの声というか抗いがたいような兵役経験故の上官の命令のような感覚の声が聞こえてくる。

 フライアイレギオン……確か座学だとフローデスアイレギオンの下位魔物だったか。

 見た目は似てて攻撃パターンも似ている。

 攻撃力とか全体的な能力が低い感じだ。


 ゆらゆらと魅了されたようにフライアイボールたちが光る煙を纏ったフライアイボールの周囲を飛んでいて……たぶん、一定数集めて集合体となろうとしているんだろう。

 で煙を纏ったフライアイボールは俺をご指名していると……集まればより良い狩猟ができるようになる。もう悩む必要はない的な感情というか命令が響いている。


 んー……その集合に所属するって可能性を思案するのだけど……なんかこう……意識まで混ざるって感じになりそうで嫌だな。

 俺が俺じゃなくなるというか異分子が混ざるような……というか煙を纏ったフライアイボールは他のフライアイボールと異なり意識が芽生えていると感じる。


「悪いな。生憎とその提案は受け入れられない」


 俺には帰るべき場所がある訳でその為に自分の体の検証を行っていて、脱出できる場所を探しているんだ。

 こんな所で群れの一員となってフライアイレギオンの一部として一生を過ごす訳にはいかない。

 なので相手には拒絶の意思で返す。


〈逆らうか……ならば……息の根を止めて力を貰うまで!〉


「ギィイイイ!」


 と、煙を纏ったフライアイボールは声を上げて俺に向かって配下にしたフライアイボール共々襲い掛かってきた。

 いう事を聞かなかったら殺すとか物騒だな!

 ヒュンヒュンと俺の逃げ道をふさぐように周囲を飛び回る取り巻きのフライアイボールと俺に突撃してくる煙を纏ったボスフライアイボール……こいつ、他のフライアイボールよりも早くて一回り大きい。

 ガタイが良いから進化しようとしてるって事で良いのか?

 ボスフライアイボールの突撃に合わせて俺は空中旋回をしながら蹴りを入れるが、びくともしないとばかりにボスフライアイボールは俺に突撃してきた。


「うぐ――」


 やっべ、突進をもろに受けて吹っ飛ばされる。

 態勢を崩して俺は墜落し地面に叩きつけられ、どうにか立て直して飛び上がろうとした所で取り巻きのフライアイボール達の無数の突進を受けてしまった。

 くっそ……数で俺をボコボコにして仕留める算段か。

 ならこれでどうだ!

 足はパラボナラビットなので近づいてきたフライアイボールを片っ端から蹴り飛ばしてやった。

 そうしてライラ教官とブルから教わった戦闘時のリズミカルなステップをしながら羽ばたかずに空にいるボスフライアイボールに挑発の目を向ける。


「ギイイイ!」


 想像とは異なる結果にボスフライアイボールが怒りの声を上げると同時に配下に新たな指令を飛ばす。

 フライアイボール達は空から俺を凝視して熱線準備を始める。

 熱線の一斉射撃で俺を焼き焦がそうって作戦か。数も集まって集束したらきつそうだな。

 つまり俺を凝視しているって訳だ。

 同族内ではLvでの取得スキルにある飛行速度アップで早いけど数が多いし劇的な差にはなっていない。

 なら……こっちもやるべき手がある。

 背負っていた青銅の盾を前に掲げてフライアイボール達の一斉射撃に備える。

 もちろん手はフライアイから変えてパラボナラビットの手にしたぞ。


「ギィイイイイイ!」


 盾を持ちながら走るとフライアイボールたちの熱線が追いかけてくる。

 そうして猛攻を仕掛ける全てのフライアイボール達を一方向に集めて……盾で受け止めると収束した熱線で盾が発熱を始める。

 このまま受けていたら青銅の盾はすぐに溶解してしまうだろう。

 だが、これだけ時間を稼げれば十分だ。


「喰らえ!」


 カッと体に力を入れて盾を前に突き飛ばして飛び上がり、俺を熱線で追いかけようとしていたフライアイボール達に……魔眼を放つ。


「「「ギィイイイ……」」」


 カッと俺の魔眼が見開かれ、チャージされた魔眼をそのまま凝視していたフライアイボール達が目を回してバラバラと落下を始めた。

 急いで手をフライアイに戻して配下を失ったボスフライアイボールに逆に突進を仕掛ける。


「ギィイイイ!」


 させるかと魔眼を耐えたボスフライアイボールは俺に熱線を放ってきたので同じく熱線で返す。

 く……魔力の消費が厳しい……このまま近づいて噛みつきあいにするにしても、体格とかの関係で俺が不利か。

 相手も屈服させられないとあきらめてくれればいいのに……俺を殺すまでやめるつもりはないって様子だ。

 これはあれだな。こいつがなんで俺に声を掛けて来たか、考えると察することができる。


 この辺りのフライアイボールの中でこのボスフライアイボールの次に強いのが俺で俺を取り込みたかったって事なんだろう。

 なんか他のフライアイボールとは異なる力を宿した俺って感じでさ……力を奪いたい取り込んで力にしたいみたいな。

 そう考えるとこのボスフライアイボール……藤平は元より神を騙ったアイツみたいで嫌な奴だな。


 かといって今の俺に出来るこいつを倒す手立てはあるのか?

 このままだと配下が回復されてやられるし、接近戦に持ち込もうとしているけど体格的に不利……Lvもたぶんあっちが少し上だ。

 ……あるな。


「スター……ショット」


 人間だった頃に使えて、熱線より威力が低くて使わなかった魔法をボスフライアイボールに向かって熱線によるにらみ合いの合間に意表をつくように足で蹴り上げるように放つ。


「ギィ!?」


 バチっと別角度から放たれたスターショットへとボスフライアイボールが視線を向けた僅かな隙を逃さずそのまま距離を詰めて蹴りで叩きつけを行い、そのまま地面に向かって蹴り込む。


「ギィイイイイ――」


 ズブチュっと嫌な手ごたえと共にボスフライアイボールの眼球を俺は踏み抜いて目をつぶした。

 ビクビクとわずかな痙攣をボスフライアイボールはした後……力が抜けて動かなくなり、俺に経験値が流れ込んだ。


「ふう……」

「ギィイイ」


 ボスフライアイボールの魅了が解けたのか周囲に居たフライアイボール達が我に返るというか意思が希薄になって散開していく。


「悪いな……俺はここで歩みを止めるわけにはいかないんだ」


 足に付いたボスフライアイボールの体液を振り払う。

 共食いになるし食うのはな……目玉もつぶしてしまったのだ水晶体とか素材に使えそうなところは台無しになってしまっている。

 ただ、魔石がこいつの体には精製されていたようなのでそれだけは頂いておこう。

 こうしてフライアイボールの群れとの戦闘を終えて、俺はその場を飛び去った。


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