百三十七話
ビリジアンパラボナラビットとバイオレッドアンコモンドッグと数匹交戦して勝利した俺はターミナルポイントに到着。
周囲を警戒……特にビリジアンワイルドタイガーが厄介だ。
縄張りなのか餌場なのか知らないが間違いなく近くにいる。
現状確認できるポイントはここしか見えないので隙を伺ってやるしかない。
ターミナルポイントにアクセスっと。
フライアイボール・ソルジャー(兎束雪一) Lv6 EVO・P 301
所持スキル 熱線 魔眼 飛行 LGB 分析 変身 熱線威力アップ
Lv7になった時……飛行速度向上
進化条件 Lv10
人間 ×不可 ▽所持スキル
分析▽
変身▽
肉体
体 フライアイ
手 フライアイ
足 フライアイ
お……多少戦っていたお陰でLvが6に上がってる。
熱線の威力が上がったのか。
確かに途中で攻撃の効きが良くなったような気はしていたが、Lvアップだけが原因じゃなかったか。
EVO・Pも増えているって事はどうやら経験値とは別に入る項目みたいだ。魔物を倒して得られるとみて良い……のか?
それとも体を動かしていると溜まるのか……もう少し検証が必要だ。
で……分析はっと。増えている奴だけで良いか。
▽
バイオレッドアンコモンドッグ・87% ビリジアンパラボナラビット・100% クリムイエローワーム・5%
お? ビリジアンパラボナラビットが100%だ。
となると何か変化があるのかな?
変身とかできるようになるかと思ったけど……ここは弄れる訳じゃないな。
肉体を確認っと。
ビリジアンパラボナラビット 100P
おお……分析が終わったおかげかハテナが無くなってポイント消費ができるようになっている。
ちょっと勿体ないけどやってみよう。
俺は体をビリジアンパラボナラビットにするように意識して弄ってみた。
すると……体の異変というか疼く感覚と共にブワッと体に毛皮が生えた。
ペタペタと羽と足、舌で体に触って確かめる。
……何だろう。スキンって感じとしか言いようがない微妙な感じだ。
もっと大きな変化はないのか!
今度は体ではなく手のビリジアンパラボナラビットを意識する。
……部位毎に別でポイント消費するっぽい。
うへぇ……こっちも100Pだ。
き、気にせずチェック!
すると羽がニュニュっとウサギの手に代わる。
「おお……こっちはスキンじゃないのかって……」
羽ばたきができるか試してみると物の見事に飛べない。
しかも今の俺ってすごく奇怪な姿をしてないか?
ビリジアンパラボナラビットみたいな毛皮と手が生えた目玉の化け物だ。
見る人が見るとヒェ……とか言いそう。
……動きの関係で手はフライアイの方が良いかもしれない。
ウサギの手ってものを掴みづらいし……まあ壁を手で掘るのには向いているかもしれない。拠点の拡張用にしよう。
で……念には念をって事で足。
ニュッと足が少し伸びてウサギっぽい感じの足になった。
ピョンピョンと足の感覚を確かめる。
ふむ……これは、なかなか悪くないかもしれない。
フライアイの足って物を掴むのには向いているけど蹴りとかかなり弱い。
若干羽ばたくときの速度に影響は出るけど木とか地面とか足場にして跳ねる事や蹴る事の意義は見いだせる。
うん。足はそこまで問題なく使えそう。
検証でEVO・Pを殆ど使ってしまったけれど気にしない。検証が大事なんだし。
しかし……全部使ったらビリジアンパラボナラビットになるのかと思ったけど……フライアイにビリジアンパラボナラビット要素を追加した感じになるのか。
飛べなくなるから手はフライアイにしておくのが無難だな。
……しかし、不気味な姿になってしまっているんだろうなー……とは手足だけでわかる。
「ガァアアア!」
おっと、時間をかけ過ぎた。急いで離脱だ! っと地面を蹴って飛び上がる。
全部フライアイだった時より高く早く跳躍して羽ばたけたので少しは強くなったんだろう。
と言う訳で確認を終えて俺は再度拠点に戻り、その日は完全に休息を取る事にしたのだった。
目下、進化条件って奴が気になるからLv10になることを優先しよう。
休息を終えた後は拠点の拡張を行う。
手をパラボナラビットに変えて掘削を行うとかなり便利だ。
足でやるより遥かにやりやすくて助かるな。
とはいえ長くやっていると手が痛くなってくる。そこは回復魔法で応急手当をして作業を続けた。
訓練校時代に習った塹壕作りの経験が役立つぜ!
そんな訳で仮拠点は小さなくぼみから奥がやや深い穴と呼べる感じにバージョンアップができたぞ。
当然のことながら空気が入れ替わるように工夫しないと窒息してしまうからもう一つ穴を作った。
これで空気の通り道ができた。
後は寝床は奥の方に作って……なんて感じでコツコツと作業を行いつつ魔力が回復したら探索を繰り返して帰りにターミナルポイントでチェックを行った所、判明したことを整理しよう。
EVO・Pはやはりというか基本的には経験値と一緒に入る要素っぽく、部位を変化させるときに使うで良さそうだ。
例外として分析……まだ解析済みじゃない魔物を遠目で凝視していると徐々に入って行くのも判明している。
やはりというか見るって事が大事なんだろう。
次に分析……これも当然ながら魔物を見続けるか戦闘をすることで%が増加していき、100%になるとEVO・Pを消費して体の部位を任意で変化させれるようになる。
ただ問題として明らかに俺よりも強い魔物の分析……遠目での観察を続けても全然%が増えない。
ビリジアンワイルドタイガーを遠目でずーっと観察し続けてどれだけ分析が進むかと検証したのだけど1時間ほど遠目で観察した所で1%という所だった。
ソードファルコンとかも格上で、動きが速いからあんまり観察できなかったけどやはり%の増加が少ない。
やはりというか格上だからだろう……分析が終われば手をソードファルコンに変えて速度アップとかできそうだというのに。
逆にバイオレッドアンコモンドッグは格下だからか大した時間、遠目で観察して無くても%が増加して100%になったぞ。
体の部分をバイオレッドアンコモンドッグにした所、嗅覚と噛む力が増加したような気がしたかな。
EVO・Pは150P消費だったっけ。
後はジェリーを川辺で発見、凝視したらすぐに分析が終わった。
EVO・Pの消費は50と少なめだったのだけど変化した所で視力が極端に落ちて目がグニグニしてしまっていた。
どうやら体がジェリー状態になり形を保ちづらくなってしまっていたというか……全体のバランス的に非常に厳しく、しかも耐久性や体力の維持などが難しそうなので元に戻した。
使い道があるか不明って感じだ。
後は俺以外のフライアイボールとまたも遭遇して観察したのだが、どうも俺以外のフライアイボールは意識が希薄というか定められた行動ルーチンで動いているような感じっぽい。
なんというか自我って奴が無く死骸や弱い獲物を見つけたら群がって狩りをして、周囲を探索して……仲間内で視界を共有して生活している……そんな感じというのか。
同族って扱いだからあまりこちらに興味を持ってないようだけど、仲間って認識はしてくれていない。
そんな距離感だな。
後はそうだな……フライアイボールはこの辺りの生息魔物の中では捕食対象って認識なのかとにかくよく狙われて奇襲を受ける。
どんだけだよって位、俺も周囲の探索を行っている最中に奇襲を受けた事か。
主にバイオレッドアンコモンドッグにだけどさ。
ただ、俺の恰好が他のフライアイボールとやや異なる足をしている所為か返り討ちにしている内にあんまり狙われなくはなってきたけど……単純にバイオレッドアンコモンドッグが減っただけかもしれない。





