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百三十六話


 さて……探索範囲を広げて周辺に何があるのか調べて脱出できそうなところを探さないとな。

 この神の庭園って場所がどういった所なのかよくわからないけど、空が……なんか薄いクリーム色だ。

 しかも浮島とかあるっぽい。

 高高度で飛ぶと餌食になるので今の俺はいけないけど……行く必要があるのかはまだ未知数だな。


 空は良いとして……仮拠点から川のある方面とは反対側へと向かって飛んで行く。

 帰路のオイルタイマーで次の階層を示す機能を確認するとくるくると回ってしまっていて役に立たない。

 ただ、方位磁石機能は辛うじて機能するようなので確認。どうやら川が北で南方向に俺は飛んでいるっぽい。

 確認できる高度で進むのだが相変わらず森林地帯とも密林とも言える木々が続いている。

 時々崖や山があるっぽい。いや……崖と言うより断裂って言うのか? それくらい深くて大きな崖が所々にある。

 それと……洞窟とか……なんかダンジョンっぽいなアレ。


 なんでサバイバル状態でダンジョン攻略なんぞしなきゃいけないんだ。

 フィールドダンジョンとかを利用した移動方法が無いわけじゃないけど……。

 どちらにしても土地勘が全くないし力もない今挑むのは愚策……だよな。

 なんて感じで木々の合間を飛んでいたらいきなり粘着質な糸が俺に向かって飛んできて足を絡めとられた。


「うお!」


 ガクッと地面に不時着、どうにか態勢を立て直して俺に絡みつく糸とその根元に視線を向ける。


「ギ……ギィ……」


 するとそこにはクリムイエローワームという……芋虫っぽくありながら蜘蛛を連想する気色の悪い足を生やした魔物が俺目掛けて口から糸を出して引き寄せようとしている姿が映った。

 大きさは俺より少しだけ大きい。

 このまま引き寄せて俺を糸でぐるぐる巻きにして食おうってのが見え見えだ。


「やられてたまるか! 食らえ!」


 力を込めて熱線を放つ!

 ビッと糸とクリムイエローワームに熱線が命中するが双方焦げただけで大してダメージを受けている様子がない。

 く……火力が足りないって事か。

 ズル……ズルズル……っとクリムイエローワームは俺の反撃を物ともせず引き寄せてくる。

 手馴れた動きに感じた。俺と同種を狩り慣れてるな。

 魔眼を使うかと思ったけどこっちを見てるようで全く見ずにいる。

 もう少し近づいたらさらに糸を噴射して目を抑える魂胆だろう。


「このままやられて……たまるかよ!」


 勢いを付けて背負った盾を全面に出してクリムイエローワームの口目掛けて飛び掛かりながら蹴りを噛ます。

 同時に目に思い切り力を入れながら飛び込む。


「ギ!?」


 ガーンと音を立てて青銅の盾がクリムイエローワームの口に命中して、俺の体当たりでそのままクリムイエローワームが仰け反り咄嗟に俺を凝視している。

 よーし……しっかりと喰らえよ?

 力をためる時間があまりなかったのでそこまで強力な魔眼は使えないが僅かに目を晦ませることは出来るだろう。


「ギ!?」


 魔眼が効果があったのか目を回し始めた。


「何時まで糸を引っ付けているんだよ!」


 羽ばたいたらそのまま叩き落す動作をしそうなので盾を掴んで木の枝目掛けて飛び上がって全体重をかけて釣り上げつつクリムイエローワームの糸をそのまま奴に絡ませるように旋回して縛り上げてやった。

 まだ俺の足に糸が絡みついているけど、それ以上にクリムイエローワームの体に奴自身の糸が絡みついて雁字搦めになってしまっていた。


「ギ! ギィイイ! ギィイイイ!」


 魔眼の混乱から我に返ったクリムイエローワームは自らの糸で雁字搦めになっていることに気づき、ガチガチと牙を鳴らして抵抗しようとしているが自らの糸を振りほどくことができずにいる。


「さて……」


 熱線を重点的に糸に当てて……ぶちっと時間を掛けて焼き切ることに成功した。

 30秒も放たないと焼き切れなかったぞ……厄介極まりない。


「後はお前だけだ……」

「ギ! ギィイ! ギイイイ!」


 動けないというのにまだ抵抗する……いや、格下の獲物に負けたと言った認識なのか知らないがクリムイエローワームが威嚇の声を上げている。

 野生の魔物の闘志ってすごいな。自分がやられるって時でも構わず敵意を全開で出している。


「悪いが仕留めさせてもらう。簡単に仕留められなくて悪いな」


 熱線を出来る限りの力を込めて長時間……クリムイエローワームの眉間目掛けて長時間照射をして焼き仕留める。

 やがてビクビクっと……ワームは絶命し、俺に経験値が流れ込んだ。


「ふう……常に死闘じゃないか……」


 今回もどうにか勝てたけど……今の所、勝てる相手を探して戦った方が良いかもしれないな。

 まだクリムイエローワームを相手に短時間での決着は出来そうにない。

 ちょっと遠征しただけでこれか……何に勝てるか、どんな魔物がいるのかをしっかりと判断せねばいけない。

 兵役時の座学や書物で読んだ知識なんかで魔物の生態とか姿、弱点や戦い方なんかはわかる。

 けれど今の俺は人間ではない訳で、ここからさらにフライアイボールとしての戦い方を考えなくちゃいけないのか……。

 とりあえず素材って訳じゃないけど糸を熱線で軽く炙って粘着質な所を除去して持ち帰ろう。

 肉は……まだ良いな。さすがに虫肉を食うほどの状況じゃない。

 とにかく……熱線を大幅に放った所為で魔力を消費してしまった。

 一旦拠点に戻って魔力の回復を図ろう。

 と言う訳で拠点に帰還。


「ふう……」


 完全な安全地帯って訳じゃないけど心なしか安心してしまう。

 戦闘による擦り傷に応急手当を行った……魔力は消費しているけど体はそこまで疲労していない。

 ……とりあえず拠点の拡張を少し行っておくか。


 と、魔力回復をさせている間に拠点の壁をさらに広げる。お? 土じゃなく粘土層がわずかにこの拠点の壁の一部から出てきた……かまど等を組んでツボ……水瓶とかコップを作るのに良さそうだ。

 人間だった頃に取得した鑑定がこんな所で役に立つとは……粘土層の区別が所持スキル無しだと怪しかったから助かった。

 そうこうしているうちに日が傾いて来た……しかも喉も乾いてきてしまったぞ。

 川に行って……周囲を警戒しつつ水を口に含んで飲む。


 ……水面に映るは目玉の魔物と化した己か……。

 気にしても始まらない。

 ただ、水を確保するのにも脅威となる魔物に警戒しなきゃいけない。

 かなり厄介な状況だ……せめて水筒辺りは作るべきか……。

 近くの葉っぱを切って折り紙の要領で簡易水筒を作成して持ち帰る。

 零さないようにしないといけないけどこれで少しは……ね。

 ちなみに川にホバリングはおすすめできない。


 水中に魔物の名前が見え隠れしているんだ。

 深い所を水面すれすれで飛んだら狙われるだろう。

 はぁ……フライアイボールって魔物の弱さに泣ける。

 ジェリーとかそれ以下の魔物よりは……マシなんだろうけど。

 飛ぶ事と熱線と魔眼に力を入れ過ぎて癖が強い体ってのが原因かもしれない。


 なんて思いながら拠点に一旦戻って零さないように水筒を固定しておく。

 雨とか降った際に雨水を確保できるようにもしておくべきだろうか……湿度を利用して少しでも川辺に行かない手段を模索するのも良いな。


 ……まあ、注意しておけば良いだけか。

 さて、少し休憩して魔力も回復してきたし今まで移動した範囲で勝てそうな魔物を見繕って経験値を稼ぎに行こう。

 と……俺は戦闘力を上げるのとターミナルポイントを目指して拠点から羽ばたいて移動をしたのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] >水中に魔物の名前が見え隠れしているんだ。 >深い所を水面すれすれで飛んだら狙われるだろう。 これはつまり、釣りができるということですな!
2020/05/26 16:54 退会済み
管理
[良い点] 別の物語みたいになってきたけど、 これはこれで面白いです。 むしろ前エピソードのボス戦のあたりより、ワクワクしてきました [気になる点] この先に神獣の謎が!?
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