百八話
「狼男に変身するオークだと!? ふざけた力を持ちおって! しねええ!」
「ブル!」
「バウ!」
藤平との戦いを経験しているブルはトーラビッヒの攻撃を武器で弾く様な真似をせずに地面を蹴って横に回り込む形で一回転して斧をぶち当てた。
な、なんだ? なんかバリアみたいな障壁に当たった?
「……蛮族が調子に乗るなぁあああああああ!」
バリアで傷一つ受けてはいないが衝撃でよろめいたトーラビッヒが激昂してブルに向けて剣を乱暴に振り被る。
藤平と同じく技能頼りの剣術なのは一目でわかる。
が、藤平よりも早い!
「バ、バウ!」
「主砲発射!」
バルトのブレスと魔導兵の主砲がここでトーラビッヒ目掛けて飛んで行く。
「ふん!」
トーラビッヒを守るバリアがこの二つを遮る。
お返しとばかりに斬撃をトーラビッヒは俺達に飛ばして来た。
距離があるので横っ跳びで避ける。
「ライラ=エル=ローレシア……貴様はその魔導兵から引き摺り降ろし、十分に屈辱を与えてから殺してやるから覚悟していろ! まずは大事にしている部下共を皆殺しにしてなぁ!」
元より憎むべき相手はライラ教官か。
「逆恨みもここまで来るとはな……呆れて物も言えん」
「させません! その武器は……ユキカズさんや異世界の戦士たちと所縁のある代物、絶対に白状させてみせます!」
「ああ!」
異世界の戦士を想定した操縦訓練をここ最近、ずっとやってきたんだ。
形は違えど実戦で戦える事を証明してみせる!
「トーラビッヒ! お前との因縁もここで終わりにしてやる!」
「ふん。異世界の戦士がなんだというのだ! この力の錆にしてくれるわぁ!」
俺は魔導竜剣を起動させてトーラビッヒの斬撃を弾いて逸らす。
「な、何!?」
く……秒単位でエネルギーが消費されていくな。
けどここで引くわけにはいかない。
「行きます!」
「コラ! な、コントロールがフィリンを優先だと……!?」
ライラ教官とフィリンが乗っている魔導兵がショットストームタイタンボウで矢を射出する。
矢が幾重にも分離してこちらに向けて飛んでくる。
武装は違っても戦い方は分かる。
「はああ!」
ドンとトーラビッヒの攻撃を一回転して尻尾を当てて……フィリンが放った矢の射線上に跳ね飛ばす。
「ぐううううう……」
幾重にも分かれた弾幕とも呼べる矢の雨にトーラビッヒは巻き込まれて被弾したのが目に見える。
「だがこの程度、私の力があれば――」
「おらよっと!」
武器のバリアで効果は薄い様だけど隙が大きく出来たので魔導竜剣で追撃の叩きつけを行う。
バキッと良い感じの手応えが聞こえてきた。
「ぐぬぬぬぬ……はあああ! エイミングアクセルドライバァアアアアアア!」
まるでドリルの様な突きの一撃をトーラビッヒが近くに居る俺目掛けて放ってくる。
「何!?」
「弾けるだけで随分と楽に戦えるように感じるな」
もちろん正面きっての鍔迫り合いをするには魔導竜剣の攻撃力が足りない。
けれど軌道を逸らすだけでも出来るなら十分だ。
バルトの演算による模擬戦闘を繰り返した俺達はトーラビッヒの攻撃に十分対処出来ている。
魔獣兵に乗ったまま戦えている。
元の技能からトーラビッヒの放つ技の軌道が読めるぞ。
どうやらトーラビッヒは小剣系の技能を所持しているみたいだ。
そういやライラ教官との模擬戦で使ってたな。
「なめるなぁああ!」
トーラビッヒが小剣のしなりを利用した不規則な剣技、ウィップスネークに似た技を放ってくる。
龍とも表現できるような長い蛇みたいな力の塊が俺目掛けて放たれる。
「はぁ! 魔導竜剣技・三日月!」
俺はガツンと追尾してくる蛇の胴体に剣技を当てて大きく弾き飛ばした。
「無駄だ! この程度で私の攻撃を止められると思うな!」
そのまま叩きつけるように腕を振り降ろそうとするトーラビッヒの背後に影が掛る。
「何!?」
ギュンと振り返るトーラビッヒの後ろには破壊された基地の残骸である壁が飛んで来ていた。
大きく衝撃が巻き起こる。
もちろんこの残骸を投げつけたのはブルだ。
落ちてた壁を持ちあげて力の限りトーラビッヒに投げつけたのは言うまでも無い。
「無駄だ。この程度で――」
「これも受け取れ!」
ブン! っと持ってきていた竜騎兵用の盾を投げつけてぶつける。
どうせ当たったら一刀両断な訳だし攻撃に使った方が良い。
「足止めにも成らん!」
トーラビッヒは武器を振り降ろし、俺の投げた盾を一刀両断し、そのまま攻撃の手を進めようとしている。
「この程度か!」
サッと視線がブルに向かったのが分かるぞ?
大方俺を魔獣兵ごと一刀両断した後、ブルに攻撃をするつもりなんだろう。
「そんな訳無いだろ?」
ボン! っと振り被った体勢のまま魔獣兵の口を開けてブレスを放って命中させる。
避ける暇も無いから当てるのは簡単だったな。
「ぐあああああ!」
さすがに固い守りもここまでの連続攻撃を受けたら突破出来た。
トーラビッヒが被弾して煙が発生する中を吹き飛ばされて行く。
おっと……受け身を取られたか。
「単独で出てきたのが運の尽きだったな、トーラビッヒ。それとも自分一人で十分だとかうぬぼれていたのか?」
激昂させる事を前提に挑発を行う。
言っちゃ悪いが単独で出て来てくれたのは幸いだな。
トーラビッヒの背後にいる連中に舐められているのかもしれないな。
「おのれぇえええええええええ!」
とはいえ無駄にタフだな……魔導竜剣を維持するエネルギーもバカに出来ない。
このまま長期戦闘になった場合、先にばてるのはこっちだって言うのは分かる。
ジェネラルバリスタは効果的とは言い難いしなー……。
トーラビッヒの周囲に赤いオーラみたいな力が集まって行く。
な、なんだ?
直後……シュンと何かが飛んでくる。魔導竜剣で弾いて逸らすが数が多い!
く……早過ぎる! 避けきれない! 翼を守るために攻撃を左腕で守る。
同時に魔獣兵の左腕が切り裂かれる。
左腕部大破!
ターゲット速度上昇。
「ふははは! バラバラにしてその無様な機体から引き摺りだしてくれるわ!」
やっぱり体躯が大きい魔獣兵じゃトーラビッヒの猛攻を捌ききるのは難しいか。
トーラビッヒの放った蛇の様な刀身がグネグネと高速で動いていたのだと察した。
厄介極まりないが……所詮はトーラビッヒとでも言うのだろうな。
俺達とバルトが異世界の戦士を想定した強さより低い。
「うぐ!?」
となれば……俺に意識を向けていたトーラビッヒに大きな砲弾が着弾する。
「余所見はいけないぞ、トーラビッヒ。お前は一人、出来る限界があるって事だ。数の恐ろしさを知れ!」
魔導兵に搭載された砲弾がトーラビッヒに当たったのだ。
距離が離れているのに良く当てる。
フィリンの腕前が格段に上がっているのが分かるね。
こっちの左腕を切断した程度で勝ったつもりになるとか呆れて物も言えない。
魔導兵はオーバーブーストを作動させて機敏に動き回るトーラビッヒへとターゲットを常時向けている。
俺に攻撃を当ててヘラヘラしてたら格好の的だってな。
本来は武器の障壁で弾くなり速度で振り切る等を行わねばならない所なのだろうが、俺達……バルトは元よりラルオンの魔導兵だったコアは学習している。
もしもの事態に備えて武装にも色々と細工を施してあって早さ重視の改造をしてあるのだ。
相応に命中精度は高い。
その分、割を食って威力が多少下がっているらしいけどさ。
当てる事が何よりも大事なのだ。
幾ら凶悪な力を持ったものであろうとも数をもって連携する相手には屈する事だってありえる。
俺の世界でもそこは変わらない。
数を蹂躙出来る程の力があったとしても……トーラビッヒ一人では既に異世界の戦士を想定した訓練をしている俺達に後れを取るのだろう。





