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百五話


「強力な魔物ですね……データはありますが、手こずる相手です」

「バァアアアア!?」


 斬られたオーキッドピッポが魔導兵に向かって頭を向けて噛みつかんとしている。

 避けるために魔導兵がサッと大きく後ろに下がった。

 お? 攻撃チャンス!


「主砲発射、2、1!」


 俺も左側の目を回したオーキッドピッポに向かって竜騎兵用剣で切りつけながら、ライラ教官達の戦うオーキッドピッポが口を開いた瞬間に狙いを定めてブレスをぶち込んでやる。

 カッと光がオーキッドピッポの口の中に入って行ったかと思うと胴体の方でボン! っと大きく爆発が起こり、オーキッドピッポが口から煙を出して悶え始める。


「器用な事を覚えたな。よくあの瞬間に……」

「狙い撃ちが上手ですからね。ユキカズさんと魔獣兵は」

「ふむ……トツカ、私達の相手にばかり意識を向けるのは良いが、自分の相手も迅速に仕留めるんだぞ」

「わかってますって! ブル!」

「ブ!」


 ブルが力溜めを魔獣兵の肩に乗って行っており、俺の掛け声に合わせて岩を投擲する。

 岩は一直線にオーキッドピッポに剛速球となって飛んで行き、ガツンと牙にぶちあたって砕ける。

 お? バキッと牙にヒビが入ったな。


「よっと!」


 牙に当たって意識が向いたオーキッドピッポの首目掛けて一気に跳躍して叩きつける。

 ズビュっと良い手応えがするけど、致命傷には至っていない。

 そのまま距離を取り、一回転して尻尾で顔面を殴打。


「バァ! バアアアア!」


 おおう……噛みつきからの光弾発射してきた。

 噛みつきを避けるのが前提の狙い撃ちだったぞ。

 ビッと翼から熱線が放たれて光弾を迎撃する。


「バァ!?」


 思わぬ攻撃にオーキッドピッポが一瞬止まった。

 隙だらけだ!

 カッとその間抜けに開けた口に向かってブレスを放ってやる。

 魔獣兵の口から放たれたブレスがオーキッドピッポの口に入り、そのまま爆発。

 咄嗟に放ったのとは違って力を入れて放ったので俺達と戦っていたオーキッドピッポはボンと腹部から破裂して絶命した。


「はぁ!」


 で、ほぼ同時でライラ教官がラルオンの魔導兵が持っていた電撃杭射出でオーキッドピッポの眉間を撃ち抜いて仕留めた。

 おお……やっぱり結構威力あるんだな、その武装。


「これで仕留めたか……」

「やりましたね。ブル、助かった」

「ブー!」


 ブルが力拳を作って応じてくれる。


「力溜めからの岩石投げか……大型の魔物相手に白兵では大したダメージにはならんはずなんだが……ブルトクレスが力を溜めて投げればそこそこの威力にはなるか。相変わらずだな」


 道中でも何度かやった戦法だ。

 何だかんだ魔獣兵での戦いを俺達はしっかりと習得出来ている。

 成長を感じるぞ。


「問題は主砲を二発使った事だが大丈夫なのか?」

「あ、はい。今回の獲物を摂取すれば多少は補充できますね。魔石を摂取する程じゃないですね」

「ギャウギャウ」


 バルトが肯定だと鳴く。


「後、上位竜騎兵用魔導竜剣の使い方にも慣れて置け、いざという時に不慣れでは話にならん」

「一応移動中のシミュレーションで何度も練習はしましたよ。かなり強力な武装で驚く程です」

「まあ……それのエネルギー無限使用の超小型化兵器が異世界の戦士に支給された品であると推測されているのでな」

「バルトの剣モードとも違うんですよね?」

「ギャウ」


 バルトが俺の問いに肯定の文字を出してくる。

 同時に推奨武装とまで魔導竜剣を指定していた。


「主砲が回復するまでに使用できるエネルギー範囲で実戦で使え、わかったな?」

「はい。ライラ上官」


 ちなみにイエス・サーみたいな感じの言い方をしてる。

 異世界での言い方だな。


「さて……まだ戦える程度の相手な階層で助かるが……」


 ライラ教官の言いたい事は分かる。

 まだ16階層なのだ。

 この程度で苦戦しては話にならない場所が目的地である。

 20階にある基地がどうなっているのかもそうだが、仮にそこに無事到着し何事も無かった場合、異世界の戦士達のいるそれ以降の階層に行かねばならない事態もあり得る。


 ……本来は竜騎兵も魔導兵も、魔獣兵も強い兵器なんだろう。

 けれど……出てくる魔物の強さから考えると、少し心もとなくなってしまうんだと言う不安がある。

 異世界の戦士に持たされる武器がどれだけ強力なのか……より強力な武器が欲しくなってしまうなぁ。

 ダンジョン故に道中で良い武器などが見つかれば良いのだけどなぁ。


 などと思いながらオーキッドピッポから魔石を採取し、牙等の武器に使えそうな代物を採取した。


「ダンジョンなんで、道中で宝等が見つかる可能性もありますよね。先を急ぐ意味で相変わらず無視しますか?」


 低階層ではあまり良い物が出ないとかなり無視して進んで来ている。


「いや……そろそろ有用な品が見つかる可能性も増えてくる。白兵戦をしなければならない状況もあるので宝箱等は見つけたら調べるぞ」


 と言う訳でライラ教官の指示の元、先へと進んだのだが……。


 シルバービッグミミック


「……」


 どん! っと竜騎兵が通れる大型通路の端に大きな宝箱が置いてあって、その上にデカデカと名前が出ていた。


「ふむ……宝箱だな。何か使える武装などが入っていると良いが、まずは……」

「シルバービッグミミックだそうですよ」

「一目でわかるって凄いですね」

「ブー」


 ブルが匂いを嗅ぐように鳴いた。

 ただ、よくわからなかったっぽい。


「……貴様の能力、本気で便利だな。一発で分かるのか?」

「ええ、それでどうします? 嘘だと思うのならどうぞ」


 隠すつもりなさすぎると逆に呆れる。

 頭隠して尻隠さずなんてもんじゃない。隠れてすらいないんだよ。

 もしかしたらと思ったけれど、これが現実に存在するんだな。


「貴様の中で私は無能な上司とでも思っているのか? フジダイラ戦で傍観していたからとバカにするんじゃないぞ」

「別にバカにはしてませんよ。心外だなー」

「どうだかな……」


 ライラ教官の俺への信用がなんか低い。

 そんなにも普段の俺の態度が不真面目に思われているのか?

 不真面目なのはアサモルトだろ。あのアザラシ……今頃日光浴とかして寝てそう。


「丁度良い。ミミックは魔物の中でも耐久性と攻撃力、敏捷性等で周囲の魔物の中では頭一つ抜ける性質を持つと同時に倒した際に得られる魔石等の純度が高い。それでなくても良い道具等を内蔵している」


 そう言った話を座学や本で読んだ。

 空箱じゃないミミックとの戦闘か。


「でだ。ミミックは宝箱に近づいて開けようとする者に襲い掛かる習性があってな。しかしミミックとわかっているならこっちが先手を取れる。手短に仕留めるためにトツカ、魔導竜剣を実戦で使ってみろ」

「承知しました」


 サッと装備していた竜騎兵用の剣を収めて魔導竜剣を引き抜いて機動シークエンスを作動させる。

 形状は持ち手の部分がサーベルみたいな感じで柄が大きく手を守る形で……大きな宝石みたいな物が埋め込まれた代物だ。

 竜騎兵の核にも見えなくもない。その上に金属のプレートが付けてあって……装飾品の多い剣にも見える。

 ちなみにコレも国が迷宮から見つけた遺物を修繕した代物なんだとか。

 解析は済んでいるけれど再現は中々難しいそうだ。


「発動ワード……願うは戦いの終焉、長き平和也」

「ギャウ」


 カッと魔導竜剣が俺の発動ワードと魔獣兵の回路を通じて起動し始める。


<発動ワード認証完了、所持者認証…………トツカ=ユキカズ伍長と確認……登録コア、バルト=ズィーベンフィア……ライブラリー認証完了……国の使用許可受諾>


 ピピピっと操縦画面に文字が表示されて行く。

 本来は使用するのに国の許可をターミナル経由で得ないと行けないのだけど出発前にセレナ様や王様がしてくれたので使うのは簡単になっている。

 刀身が光り輝き始める。


<魔導竜剣起動完了>


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 装備品の認証を戦闘時に行うのはどうなの? 毎回認証が必要なのか? とっさの時に一々認証なんて隙になるやろ そもそも装備を渡されたときに認証し、いつでも使えるように試用することはせんのか…
[一言] ミミック「プルプル、ぼくは悪い宝箱じゃないよ」(開けろ…さっさと開けろよ…)
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