百二話
「フィリンも考えていたんだな。俺も最近はね」
「はい……」
フィリンのリプレイデータを確認する。
おお……この魔導兵に搭載してある武装でどうやって挑むのかのシミュレーションが俺とは異なる見解で行われてるな。
俺の場合は武装と魔獣兵のスペックでどうにかしようとしていたけれど、フィリンの場合は周囲の地形とかも利用して戦えないかとか、魔獣兵と一緒だったらとか、シチュエーションの工夫がみられる。
なるほど……むやみやたら直接戦闘をしなくても良いんだよな。
ただ、それでも最終的には異世界の戦士の力を振るう相手との直接戦闘を行っている。
言うまでも無くフィリンは魔法による援護や狙撃……火器管制を担当していて、魔法を増幅させて主砲に込めて放つ戦闘をしている。
「なるほどなるほど……結構参考になるな。ターゲットを狙う際にはこうやるのか」
「ただ……あまり結果は良くなくて……」
ログを見て感心している俺の後ろでフィリンが悔しさから手を握りしめていた。
「悲観する程じゃないよ……元々相手が悪いんだ。ここまで凶悪な力を持った相手に簡単に勝てたらそれこそ世界を平和に出来る。異世界の戦士なんて不要だよ」
そもそも異世界の戦士がなんで呼ばれたのかを考えれば土台無理な戦闘なのは至極当然だ。
銃弾を弾く超人を相手に普通の人間が戦って勝つようなもんだ。
それが出来るなら元から異世界の戦士なんて呼ばずにダンジョンから来る魔物の侵攻を抑え込めば良いだろう。
「俺が藤平に勝てたのだって、同じ異世界の戦士の力を使ったからに過ぎないんだ。ブルは、その父親の力って奴が怪しいし……フィリンにはフィリンが出来る事があるさ」
「でも……それでも私はユキカズさん達の力になりたいです」
「……」
ライラ教官曰くフィリンは頑固な所があるって話だったっけ。
兵士として一緒に死地を乗り越えてきたんだもんね。
置いて行かれるのは嫌なのは分かる。
だけど……この戦いでフィリンを参加させるのは果たして良い事なのか?
相手はとても強靭な武器を振りまわす、異世界の戦士の力を使いこなす相手だ。
こんな相手をまともに相手にするのが最初から間違っている。
で、ライラ教官を差し置いてフィリンは一人努力をしている。
魔獣兵や魔導兵のメンテナンスはラスティが居ない時に行ってくれるだろうし、いろんな調整をしている。
……フィリンはフィリンで出来る事がある。
と言って納得はきっとしない。
こういう時、良い人間はどんな行動をすれば良いのだろうか?
無理をするなと突き放す? それとも協力して強くなれる様に後押しをする?
……どっちも間違っていないと思う。
ブルがもしも会話が出来たらどうフィリンに接するだろうか?
俺の想像するブルは……フィリンを応援している。
なら俺は俺の信じる善人であるブルに合わせよう。
「しっかりとラスティが居ない状況で出来る事を前提にお願いするよ?」
「ユキカズさん?」
「俺も手伝うよ。バルト、フィリンと模擬訓練とか出来ないか?」
「ギャウ!」
俺の問いにバルトが魔導兵のコアと通信をしてから頷く。
するとドシンドシンと魔獣兵が格納庫にやってきた。
遠隔操縦機能があるのかよ。
で、魔獣兵は魔導兵の隣に腰かけてコックピットを開いて、魔導兵に接続されているケーブルを突きさした。
「あ……シミュレーションを一緒に出来るようになっています」
「じゃあフィリン、一緒に模擬訓練をするか」
「はい」
フィリンの練習に俺も付き合うと決めた。
なので俺はバルトと一緒に魔獣兵に乗り込んでシミュレーションを開始させる。
「じゃあ始めますね」
「ああ、難易度は高め……相手は藤平からやって行こう」
そうしてシミュレーションモードを起動させる。
出現した藤平を相手に俺とフィリンはあれこれと知恵を巡らせながら戦略を練る。
フィリンは操縦がかなり上手で近接から狙撃、高速移動と割となんでも出来る。
問題は相手が異世界の戦士と言うぶっ壊れた性能を持った化け物であると言う点だろう。
二人掛かりでも人間相手に戦うのに苦労する。
戦車で歩兵を相手にしたら本来は簡単に倒せるだろうと思ったが、地雷やRPGの登場で戦車の時代は終わったと言う話を異世界召喚される前に読んだ本で見たのを思い出す。
もちろん迎撃装置等の導入で戦車でも勝てる様にもなるのだが、ここは技術とのいたちごっこだと記されていた。
どこぞのアニメの粒子でもこの世界にあれば異世界の戦士に勝てるかもしれないが、そんな代物があったら最初から異世界の戦士はいらない。
それでも諦める訳にはいかない。
俺はフィリンと一緒にシミュレーションを重ねる。
シミュレーションなんだ。幾らでもやられて問題は無い。
実戦でしっかりと戦えて生き残れれば良い。
ただ、それだけを意識する。
「ユキカズさんは目が非常に良いので主砲を正確に素早く当てられるので、撃つ事をやめずに攻撃を繰り返すのが良いかと思います」
「ああ。バルトも操縦訓練をしている内に提唱するようになってきたな」
魔獣兵は思ったよりも武装が多い。
特に翼が放つ特殊兵装は応用の幅が非常に多い。
「狙撃と近接、それと回避を同時に出来れば……あとは私も合わせて……」
なんてしている内に仮想敵の藤平が第二形態になって範囲攻撃を放つようになってきた。
バックステップをしながら飛びかかってくる藤平に回転叩き落としを当てて翼の武装で射抜く。
それに合わせてフィリンが突撃杭を藤平の居る場所に突き刺してぶち抜く。
が……それでも藤平は倒れずに土煙から突撃してくる……のを尻尾ではたき落とす……事が出来ずに吹き飛ばされる。
くっそ……こんなのを相手にとか、藤平じゃないがチート能力者をどう倒せば良いのかと知恵を巡らせるしかないぞ。
しかも生半可な方法じゃ無理だ。
もちろんバルトは倒す方法を計算して提案してくれるのだけど、それは……何と言うか前提が酷い物が多い。
大型の魔導兵器……大砲を事前に設置しておいて異世界の戦士をそこに誘導、俺達が足止めして主砲を異世界の戦士に当てるとか……罠に掛けねば現状では敵わないとの分析を出している。
しかもここまで準備して成功するのが1割とか表示されていた。
どんな化け物だよ。
もちろん、俺も異世界の戦士としての力を解放すれば魔獣兵に乗ったままでも倒す事は出来るそうだが、それでは元も子もない。
ただ、バルトや魔導兵のコア、基地の分析装置に記録されている異世界の戦士達の戦い様を分析したモノの範囲で作りだされる異世界の戦士たちには俺もフィリンも対応できるようになってきた。
もはや感覚で行くしかないだろう。
「これで……トドメ!」
こちらの武装を国が用意したとある最も強力な武器がある事を前提に、フル稼働をした事を前提に飛び回る様に使ってどうにか異世界の戦士を一人倒す事に成功した。
勝利と言う文字が表示される。
「やりましたね!」
「ああ……ただ、これで満足したらいけないな。もっと難易度を引き上げて行って確実に勝てるように練習あるのみだ」
提案……データ収集のために貴殿の戦闘シミュレーションを望む。
「は?」
「どうかしました?」
「バルトが俺の戦闘シミュレーションデータを欲するって言ってる。それは既にやっている奴だろ?」
否……これから行われるのは貴殿が必要に応じて使わねばならない事態を想定した物でもある。
普段のバルトってギャウギャウ言うだけなのにコアに乗って居る時は割と堅苦しい文字を表示させるよな。
「必要に応じて……?」
白兵戦のシミュレーションを開始します。
所有武器、技能は異世界の戦士としての貴殿を参照……。
フッと白兵戦の模擬戦闘状態にモードが移行し、魔獣兵に乗っているはずなのに意識だけ戦闘フィールドに放り込まれる。
手には異世界の戦士が所持するあの棒。
目の前に出てきたのは魔獣兵とフィリンが操縦する魔導兵だ。





