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アーティストROKUTOと魔女セレナ  作者: アヤネ
第2章~四ノ原禄人という人物~
6/8

セレナの疑問

ここから第2章です。

 上下左右、暗闇に包まれた空間にセレナはいた。両手を広げると足元に五芒星の魔法陣が現れる。すると、足元からフローリングが現れ、床を構築していく。床が正方形に形作ると今度は白い壁を形成していき、そのまま天井が出来上がる。

「さてと!買い出し行きますか!」

思いっきり背伸びし、出来上がったばかりの部屋から出て、リビングに足を踏み入れる。

今行っていたのは異空間の構築。使っていない物置部屋を自分の部屋へと魔法で再構築したのだ。いわば異空間で構築した見取り図には存在しない部屋。

セレナは紫色のドレスから長袖の上着と膝丈のスカートへと魔法で変えて、買い物の支度を済ませる。外へ出ると、家電屋に置かれているテレビに禄人が映し出されている。

「あいつ、結構有名人なのね」

 そうぼやきながらデパートに足を運ぶ。封印が解かれて一日。居候してもらっている身だ。家事くらいはしてやってもいいとセレナは思っていた。

(早く、この時代や国にも慣れていかないと)

500年たった現代、技術も格段と進歩している。さらにここはフランスではなく日本。言葉は魔法で補ったが、文化の違いが大きすぎるような気がするのだ。

「まあ、今日で情報収集するかな。そういえば、あいつ有名人なのに私なんかを住まわしていいのかしら?」

そんな疑問がよぎりながらも、セレナはデパートへと入っていった。




「ただいまー」

 日が完全に沈み、空が真っ暗になったころに禄人が帰ってきた。セレナは買い物をすました後、掃除や洗濯を済まし、夕飯の支度をしていた。そして、ちょうど禄人が帰ってきたころに出来上がったのだ。

「おかえりー。夕飯で来てるわよ」

セレナは出来上がった夕飯をテーブルに並べ、座布団に座る。その光景を見ている禄人は驚いた表情をしていた。

「どうしたの?そんなに私が料理するのが不思議?」

「いや、そうじゃないんだ。なんか久しぶりだなーと思って」

「何が?」

「こうして、帰ってきたころに夕飯が用意されているのに」

「・・・」

「東京に来て一人暮らししてるから、帰ってきたころに夕飯が用意されてるのなかったからな。ありがとう、セレナ」

笑った顔で礼を言う禄人。すると、セレナの頬が赤くなる。

「・・・さっさと食べなさいよ!冷めちゃうでしょ!!」

「そうだな」

禄人は鞄を床に置き、座布団に座る。

「いただきます!」

「・・・いただきます」

禄人は夕飯を次々に口に入れていく。

「うめえ!!このムニエル!それにスープも!!セレナ、料理上手いんだな」

「あ・・・当たり前でしょ。孤児院に居た頃、家事、洗濯、料理やってたんだから」

「そうか・・・やっぱ仕事の後の手作り飯はうめえなー」

「・・・思ったんだけどさ・・・」

「ん?」

「どうして禄人は歌を歌う仕事をしてるの?禄人ほどの力があれば、退治屋とか退魔師とかあったでしょ?」

 セレナは疑問に思っていた。セレナの封印と解くほどの、そして、魔法も打ち消すほどの霊力を持つ禄人がどうしてアーティストなんかやっているのか。ただでさえ普通の人とは違うのだ。そっちの世界のほうが苦労せずに済んだのではないのだろうか。

「そうだなー。俺にとって妖怪は人間と同じって思っているからな。殺す前提の退治屋とか退魔師はやだなーって思ったんだ」

そう言って、笑って返す禄人。

「呆れた・・・人間と化け物が同じなわけないでしょ」

「同じだよ・・・ただ価値観が違うだけだ」

禄人の顔から笑顔が消え、真っ直ぐとした目でセレナを見つめる。

「・・・同じじゃないよ」

セレナは禄人から目をそらし、食事を続ける。すると、禄人は鞄から小さな紙きれを取り出し、セレナに渡す。

「明日、ライブがあるんだ。これはそのチケット。もし良かったら来てくれないかな?」

「チケット?」

セレナはチケットを手に取る。

「これがあったら入れるから」

そう言うと、禄人は食事を再開した。セレナは暫く渡されたチケットを眺めていた。


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