エピローグ&プロローグ
死を免れた禄人は、セレナの魔法“瞬間移動魔法”によって自宅に戻り、ベッドの上に倒れていた。傷が治っても失った血は戻っていない。だからなのか、体が重く、立つのもままならない。一方、セレナは
「台所借りるわ」
と言い、どこからともなく現れたアタッシュケースを手にし、台所に向かっていった。
(さてと・・・)
禄人は周りを見渡す。
(広くはないけど、狭くもないよな)
「出来たわよ」
セレナは湯気が立っているコップを持って部屋に入ると、禄人の隣に座る。そのコップを禄人に渡し、
「飲みなさい」
と言った。しかし、コップの中に入っているのは濃い赤色をした液体。飲む気が起きず、顔色を悪くする。
「私が作った増血剤よ。飲んだらすぐに血が増えて良くなるわよ」
「・・・・」
禄人は覚悟を決めて、赤い液体を一気に飲み干す。すると体にのしかかっていた重さがなくなった。
「すげー」
「魔女はそこら辺にいる魔法使いと違って薬が作れるの。魔法と薬、この両方を兼ね備えて初めて魔女と呼べるのよ」
「そっか・・・ありがとう、セレナ」
「・・・・・それじゃあ、私行くわ」
セレナは立ち上がる。
「どこに行くんだ?」
「さあ・・・どこだろうね。そこら辺をフラフラしてるわ。出会えてよかったわ」
禄人を背に歩き出そうとする。しかし、
「待てよ」
禄人の声によって足が止まった。
「だったらここにいたらどうだ」
「え?!」
予想外の言葉に慌てて振り向く。
「本気で言ってるの?魔女を家に住まわせるなんて、正気じゃないわ」
「・・・それじゃあ、こう言えばいいか?」
禄人は考えていた。セレナの事情を知ったその時から。この時代、彼女の居場所はない。それに、彼女を知っている者もいない。ならば、自分が面倒を見ようと。それが、偶然でも封印を解いた責任。そして
(お前を・・・一人にしてはいけねえからな)
その思いがセレナを家に住まわせるという考えに至ったのだ。だが、今のセレナに優しい言葉は逆効果だ。
「お前を一人にしたら何するか分からない。だから、自分の目に見えるところに置いておきたい。これじゃダメか?」
「・・・確かに・・・あんたなら私を倒せる力を持ってる・・・だけど・・・それだったらさっさと私を倒せばいいじゃない?」
「あー・・・それはだな・・・」
(やべ・・・そこは全然考えてなかった・・・やっぱり、こういう駆け引き苦手だ)
思わず目をそらす禄人。対して、セレナは笑みを浮かべる。
「まあいいわ、どうしてもここに居てほしいって言うのなら居てもいいけど」
「ああ、どうしてもだ」
真っ直ぐな目で見つめられたセレナは、思わず面を食らう。
「あんた・・・本当に馬鹿ね・・・いいわ、乗ってあげる」
こうして、アーティストROKUTOと魔女セレナの奇妙な生活が始まったのであった。
いかがでしたでしょうか?これで第1章は終わりです。読みづらいとかなかったでしょうか?多くの人に読んで貰えたら幸いです。