チャンス
この物語は全て創作です。モデルはありません。
チャンスは意外に早くやって来た。
ケイが、映画に出ることになった。主役では無いが、第2の主役的大切な役だ。
お約束、ヒロインが主役とケイの間で恋に悩み、気づいたら可愛い顔で誠実な雰囲気のケイにすっかり騙されていたと言う在り来たりの内容であったが、ケイの演技が思いがげず好評だったのだ。
ケイは、女性誌のグラビアを飾ったり、今、旬の人と言うタイトルの特集を組まれたりした。
そして、ケイが本と言うか、エッセイを出す事になり、ケイが書けるはずは無く、当然のように白羽の矢が当たったのが百子だった。
ケイに適当に喋らせて、実際は百子が書く。そして適当なタイトルでケイの名前で出版する。
百子は自分に賭けをした。
もし、この本がそこそこ売れたら自分は世に出るチャンスがまだある。
しかし、売れなかったら、もう書く仕事は諦めて、ケイともきっちり別れてうるさい実家に戻って、両親の勧めるように大人しくお見合いして結婚しようと。
そして....
そのエッセイは売れた。重版になり、落ち着くと続編も出る事になった。
今やケイはただの落ち目のタレントのみならず、演技もそこそこ上手くて物書きが出来るタレントとして世間的に第2次人気ブームが起こりつつあった。
そーなるとケイとケイの事務所はますます百子をゴーストライターとして離さなくなった。
百子はある程度の収入が入るようになった。
しかし、不思議だが、百子は生活が安定して来ると、もっとケイを食い物にしてやりたいと言うような欲がむくむくと湧いて来たのだ。
それまでは、ケイの役に立ったり、ケイが世の中からチヤホヤされて喜んでくれて、ケイの気の向いた時に抱いてくれればそれで十分だったのに。
百子の中で何か得体の知れない不気味な物が育ちつつあった。
そしてそれは、人は【野心】と呼ぶ。
人は野心に目覚めると、どんな手でも使って這い上がろとする。特に凡人は。
百子は芸能事務所の情報操作と言うものに乗っかる事にした。
危ない橋だったが上手くいけば世間的に名前が売れる....
ケイのゴーストライターで収入を手にするようになった百子。しかしこのままでは終わりそうもありませんね?