フレンチレストラン
この物語は全て創作です。モデルはありません。
百子の書いた飲食店のどってことないコラムが、ツイッターに出回った。食べログの入稿と変わらないような内容だ。
ケイのファンの間でいつの間にか百子の正体はバレており、つまらない何でも屋って事になっていた。
まぁ、間違いないが。
作家のタマゴだなんて間違っても言ってくれた人は居なかった。
女性誌に載ったそのお店紹介は確かにケイと行った店ではあったが、ケイのマネージャーに友人....と雑多なメンバーで行った地方のフレンチ店だった。
ど田舎なのに、年老いたシェフが素材の優れたものを全国から取り寄せ、一日10組までしかし取らない、予約も取りづらい店って事で食マニアのちょっとした人気だった。
そのコラムは大好評だったが、その店を知ってるものなら一般的な内容だった。
ちょうど、同じ時期にその店がテレビで案内され、タレントのケイさんも先日来て下さいましたと老シェフが和やかに話したところが放送された。
そして、百子がこの店のコラムを書いた事がケイのファンの神経を刺激した。
ある日、百子のところにそのフレンチ店から委託かれた雑誌社から連絡があり、一通の手紙を預かって来たとの事。
『百子の記事が出てからどうやらケイのファンだと言う人がやたら増えた。店もいつもに増して予約で一杯になった。
大変ありがたくて、一度お礼の食事にご招待したいところだが、やけにケイのストーカーっぽいお客が増え、ケイが誰と来たのか記事を書いた百子とは誰なのか良く聞かれる。
勿論余計な話は何もしてないがこのご時勢十分ご注意されますよう、自分の店の紹介をした事で、逆に迷惑をかけてしまったのではないか?落ち着いたら時期を見てぜひ遊びに来て欲しい。その時は個室を準備します』
と言うような労いの言葉を綴った手紙だった。
百子は老人の思いやりに感謝し、丁寧な返事を書き、自分が気に入って使っているものと同じ本のしおりを同封した。
すると、今日手紙の返事を出す人間など珍しいのだろうか?
老シェフはとても百子に感心し、何件か知り合いの店舗、やはり同じようにお得意さん相手にのみ手堅く商売してるような店を紹介して寄越した。
紹介された店舗のコラムをまた書き、またその店から紹介か出てと言うように百子は気づいたらグルメ界でちょっとした有名人になった。
気難しいシェフや親方で有名でなかなか敷居が高い店に愛されるグルメ評論家と言う事らしい。
小さな本になったりもした。
しかし、そうは言ってもそうそう、うまい話ばかりある筈もなく、多少名前の売れて来た百子ではかったが、生活は相変わらず苦しかった。
そして、ケイとの付かず離れずの関係も相変わらずだった。
2ヶ月連絡がないから、もう捨てられたんだなと思っていると、そんな時に必ずケイのスタジオに呼ばれてケイがダンスや歌の練習が終わってからシャワー室で抱かれた。
ふざけて言ってみる。たまにはケイのマンションでこんな事したいなぁ〜っと。
するとケイは大真面目言う。マンションに連れて行って写真を撮られたら危ない目に会うのは百子の方だと言う。だからごめんね!っと。
昔何回か付き合って彼女とは別々の飛行機で海外に行ったのにも関わらず、相手がタレントだったせいもありケイのファンにバレて、彼女が散々かわいそうな目にあったのだ....と。
しかし、そんな事言うと....まるでケイは百子の事、その前の彼女と同格に扱ってるみたいじゃないか?
え?まさかね?
ケイが私の事好きで付き合ってるなんてそんな事無いよね?
レストランのコラムを書いて、物書きとして少しずつ名をはせる百子。これもケイ効果?