孤独
この物語は全て創作です。モデルはありません。
ジュンの結婚が発表された。
ドラマでダブル主演を務めた相手。
ジュンはKPoP出身の中でも、俳優としても大成功した1人だ。
憂いががかった、韓国人にも中国人にも日本人にも受ける静かな顔立ち。適度な身長。
WO3の中でもどちらかと言うと踊り担当なので、2人のメインボーカルの子達のほうが、目立つ。
なので30代ぐらいまでの比較的若いファンは2人に集中したが、年配の、しかも強烈なオバペン達はジュンに集中した。
そのオバペン達の大絶賛をもってして、悲しいけどおめでとう、こんなお似合いなカップル見たこと無いわ!ってなツイッターが集中した相手が、ジュンの婚約者だった。
お似合いなのは顔だけでは無い。
ジュンも父親が商社務めで世界中を飛び回っているバリバリのエリートだが、ジュンの相手は三代続いた大病院の経営者の令嬢だった。
女子大生の時に【素敵な貴女】と言うお嬢様を取材したコーナーに選ばれ、その時の審査員の1人の映画監督の目に留まったラッキーガールでもあった。
ジュンも、高校生の時に街を歩いていた時に今の事務所にスカウトされて、入社テストも何もなくそのまま芸能人になった。
2人は同い年。年恰好やビジュアルだけでなく、育った環境や経済観念、何から何までお似合いの2人だった。
百子はそのニュースを、新しく購入した、念願のマンションで、1人寂しくパソコンで見た。
ジュンの出たドラマは全部見たし、全部買ってある。ドラマどころかジュンが出たアルバムのDVDもCDも、写真集も雑誌も何もかもだ。
でも笑っているジュンの顔もあの腕も胸も、もう百子のものでは無いのだ。
いや、考えて見れば百子のものになった事など一度も無かった。
ジュンはアイドルなのだ、スターなのだ。
百子が一時期現地妻であっても、ジュンにしたらそんな女はアジアのあちこちにいたに違いない。
百子はジュンと婚約者の並んだ幸せそうな画像を見て、自分との関係をネットに暴露したい衝動に駆られた。
もしくはいつものように、内容を小説にして上げるか?事細かく。2人にしかわからない話をたっぷり盛り込んで?
泣いて酒を飲みながら、百子は自分を嘲笑った。
百子には分かっていた。ジュンを蔑める事だけは自分には出来ないって事を。
百子39歳。売れっ子小説家。恋人はその時だけの相手がいつも代わる代わるにちらほら。本当に愛してる男も愛してくれてる男もいない。
億ションを現金で買った。多少の有名人になった。戸川のような古い知り合いや、お取り巻きの仲間や友達もちらほら。
これでいいと思っていた。女1人生きていくのかなり上等じゃん?って。
しかし....
百子は、ジュンが本当に本当に人の物になってしまうと分かった瞬間、この世の中で誰からも置いてけぼりを食らった孤独なって人間だと感じた。
怖くなった。
私は1人。
ジュンの結婚が決まり、本当の別れを実感する百子。1人ぼっちの現実が百子を苦しめます。