早春?
中学生ラストかな?
全日本空手道全国大会。格好いいよね。僕も都道府県代表ですよ。道着には地元の名前が刺繍してある。負ける事なんて考えて無かった。親たちは騒ぎ先生は気合い入りまくり。僕も精一杯の気合いで戦いの場へ。ってあら、相手ほんとに中学生?ローランドゴリラじゃん。強烈な目付きで睨んでるよ。超ヤンキーじゃん。なんかデケェし。中学生でも体重別にしてくれよ、殺されちゃうよ、マジで。ヤクザゴリラ対中途半端な僕。結果はわかるよね。
東京から帰ってさ、学校に行くともうその噂が教室に広がってるのね。「あいつ空手で全国一回戦負けだってさ。ダセー」とか言われてさ。落ち込むってば、やめてくれよ。空手の先生や親たちにもがっかりさせたのに。身長160台で極道ゴリラに勝てるわけねぇよ。お前ら何もわかってないくせに。
泣きたかったけど、泣けないんですよね。キャラじゃないし。「いやー、全国は広いわ」なんて言ってさ。ヘラヘラ笑うのが精一杯。本当は一番悔しいんは僕だぜ?つーか僕が空手やってたなんてお前ら知らなかったろ。誰にも言わなかったんだから。担任教師が「あいつは今、全国大会で戦ってる」なんて言いふらしやがったからバレたんじゃねぇか。俺は職員室行って先生にしがみつき、思いっきり泣いたよ。悔しくてどうしたらいいかわからんくって。先生に殴られた。「負けて知るものってあるんじゃないか?」ってね。その時はわかんなかったけど、今じゃわかるよ、先生。
夕方、バスケ部の活動に出るのがイヤで校舎の影で1人で座ってた。なんもやる気がしなくって。親もがっかりさせたから家にも帰りたくない。しばらく親と話するのイヤだったし。んならね、僕の大好きな子がそこに来たんですよ。なぜかわからないけど。校舎の影に。
「すごいよねー。全国?じゃ地元で一番やん?」
って話しかけてきた。「え・・?まぁそうだけど」みたいな会話。でも僕はたまらなかった。嬉しさと恥ずかしさ。なんかそこに座ってウジウジしてる自分がまた嫌いになった。もちろん今まで会話はしたことがあるけど、二人っきりってのは無かった気がする。ヤバイよ、これ。
なんか色々話し込んだ。たわいもない会話だったような気がするけどね。覚えてないわ。覚えてるのは、バスケ部の仲間がその子に僕を元気づけてくれって頼んだこと。そしてそれを快く了承してくれたその子。そんなことは後から知るのだが、その時はすごく輝いて見たね。マジ天使。絶対僕をバカにしない、素晴らしい女性。泣きそうになったけど、頑張って耐えたよ、僕。
ってかなんでやねん、みんな知ってるの?僕がその子好きだって事。