あれ?
ブラックジャック!
目が覚めた。まだ全身麻酔は効いたまま。なんか体に管を突っ込まれてるのだけは覚えてる。麻酔で頭がボーッとしてる。ふと気付くとそこには母親が。「目が覚めたか?ところでこの子誰?紹介してよ」と母親。母親の横にはあの子が立っていた。でもまだ麻酔が効きまくってる僕。何を言ったか全く覚えてないし、起きたことすらわかってない。あ、そや。手術したんだった。そんなことを考えてるうちに、僕はもう一度麻酔の眠りについた。
再び目を覚ました。いったい今何時?手術はどうだったの?うーん。ふと気付くとそこにはまだ母親がいた。「あらおはよう。しかし麻酔ってすごいね。アンタ凄い喋ってたよ」え?覚えてないぞ。母親によると、麻酔が効いてる状態で一度目が覚めた時、僕は母にあの子の自慢をしまっくてたそうだ。
婚約解消のこと、あの子の存在。「死ぬほど好きやねん。オカン、いろいろごめんな」そう言って寝たらしい。んであの子には「俺は歩けるぞ!大好きや!」と言ってたそうだ。コラコラ、麻酔は自白剤じゃねぇぞ。むちゃくちゃしやがるな、まったく。母親とあの子は麻酔ボケしてる僕に色々質問したらしい。酷いよね。ずるいよ。あの子はもう帰っていなかったが、母親に「あんたしっかりしなさいよ。今度はね」と言われた。オカン、ありがとう。色々悪かったね。
そして僕はその日の内に再び歩けるようになった。まだ痛みはあったけど、手術は完璧だったそうだ。マジ?先生ブラックジャックかよ!その日の内に歩けるなんて!「鍛えようによってはバスケもサッカーもできるよ」だってさ。おいおいそんなことどうでもいいって。デートできるじゃん!僕生まれ変われるよ。全てリセット。ここからスタート。中途半端はもういらない。僕は中途半端な僕と愛用の車いすセナ号に別れを告げた。
そして地獄のリハビリ。相変わらずあの子はよく来てくれる。「なぁなぁ、もう一回麻酔しないの?」だってさ。もっと聞きたいことがあるらしい。ってだから自白剤じゃないっての。麻酔なんか使わなくても何回でも言えるって、「好き」ぐらい。聞かれなくても言い続けてやるって。僕はモリモリ食べて、ガンガン鍛えた。病室に飾ってあるサッカーのユニフォーム。もう一度袖をとおせるんですよ。そしてあの子の写真。もう過去は振り切った。僕には彼女がいる。
相変わらず友達とかは中々来てくれなかった。だって遠いからね。逃げるように入院したから。婚約者を裏切ったことで僕地元じゃ悪人だし。でもね、あの子が来てくれるだけで幸せだった。来ない日なんてもうたまらなく寂しかった。部屋に飾ってあるあの子の写真だけを見てニコニコしてた。おいおい、ハマりすぎ?看護師さんに「好きでたまらないんですね」なんて言われてさ。「じゃこれはいらないね」ってエロ本捨てられた。それとこれとは話が違うけどね。うん、彼女が好きなんです。それだけは恥ずかしげもなく堂々と言い張った。ウザイよね、こういう奴。
運命の出会いってみんな口にするよね。それって何?僕にはわからない。女の人の気持ちは相変わらずわからない。運命ってなんだ?以前の婚約者と彼女が同じ誕生日だったこととか?僕と彼女の誕生日が10日違いで生まれた病院が一緒だった事とか?何でも運命ってまとめてしまってたけど、そんなことで運命って片付けられないよね。でもそのときは本気でこの出会いは運命の出会いだ、なんて思ってた。
そんな時病院に思わぬ人がお見舞いに来てくれた。なんでやねん、なんで知ってるの?
続けちゃいます