4話 少女の忠誠
あの不思議な夢から目が覚めると、ふと頭のとこに柔らかい感触を感じた。気になって視線を向けると女の子が膝枕をしてくれていた。
「ごめん!」
俺は慌てて起き上がり、女の子になぜか謝ってしまった。
「いえ、お気になさらないでください。」
「2回も命を救って頂いて本当にありがとうございます。」
と女の子は膝枕に関して気にしたそぶりを見せずに、命を救ってくれたことに対し頭を下げた。
「私をあなたの奴隷にしてください。」
そして頬を赤く染めながら、女の子はそんなこと言い出した。
「...............」
聞き間違えだろうか?俺はすぐに返事を返すことができなかった。
「その右腕.......私のせいですよね.......?」
女の子は俺の右腕を見つめながら、申し訳なさそうに聞いてきた。
俺はあの時この子を救うために右腕を失った。
だが、あれは自分の意思で右腕を捧げてこの子を助けたのだ。
断じてこの子のせいではない。
それに目の前で誰かが死ぬくらいなら右腕の1本くらい安いものだと思う。
自分の腕1本で人の命が救えるのだから。
医者を目指していた俺からしたらこんな魅力的な能力はない。それに医者を目指していた頃、勉強すればするほど絶望していたのを覚えている。
人の命を救うとはそれほど難しく、大変なことだからだ。
「気にする必要はないよ。君が無事でよかった。」
俺は笑いながら、女の子にそういった。
「ですが、それでは私の気が収まりません。失った右手の代わりと言ってはなんですが、私を使ってください!なんでもします。お願いします。それにどうやったのかわかりませんが奴隷という身分からも解放していたいて......うぅ」
女の子は泣き出してしまった。女の子の首のところに目を向けると確かにあの時あったはずの刻印が消えていた。
どうやら女の子の傷を治した時、刻印も傷の一部だと断されたみたいだ。
確かに元々刻印なんてものは体に刻まれてないし、納得である。
それよりも、泣き出した女の子をなんとかしなければ.....
「わ、わかったから泣かないでほしい。せっかくの可愛い顔が台無しだよ。」
「そんな可愛いだなんて.....それじゃ、私をあなたの奴隷にしてくださるのですね!ありがとうございます!精一杯頑張ります!」
俺の言葉を聞いた女の子は泣き止んでくれたが、とんでもないことを言い出した。
人を助けて、その人を奴隷にする。
どこの鬼畜だ。
そんな危ない奴に俺はなりたくない。
「さすがに奴隷はちょっと....そうだ!実は俺は遠くから来たんだけど、ちょっとここら辺は詳しくなくてよかったら色々教えてくれないかな?」
「...わかりました。奴隷になりたければ忠誠を示せということですね。」
....あれ、俺そんなこと言ってないよね!?
「ごめん...もっかい言ってくれる?」
「今日からあなたの右腕の代わりとして精一杯仕えますので何でもおっしゃってください!」
「うーーーーーーーむ。」もう奴隷じゃなければなんでもいいか....俺は妥協することにした。
「あ、うんよろしくね。えと....」
そーいえば、自己紹介をしていないことに今更気づいた。
「俺の名前は小鳥遊英二。英二とでも呼んでくれ。それで君の名前なんだけど...どうすればいい?」
奴隷紋が刻まれていた頃彼女は俺に名前を失ったと言っていた。
「はい。英二様。売られる前の私には名前がありましたが、先ほどもおっしゃいましたが奴隷になった時に以前の名前は失われてしまいましたので。英二様から新たに名前をいただけると嬉しいです。」
それは名付けをしろってことだよな?
「んーわかった、それじゃエリンで。」
人に名前をつけるのは生まれて初めてだったが、何となくこの子の雰囲気が幼馴染のえっちゃんに似ていたため1文字とって、エリンに決めた。
すると、名前をつけた途端に”エリン”の体が光の粒子に包まれた。
そして数秒後10歳くらいの見た目だった女の子が15歳くらいにまで成長していた....え、どゆこと!?
「はい!素敵な名前をありがとうございます!!なんだか力も体の底から湧いてきます!」
実は、この時俺は知らなかったがこの世界では人に新たな名前をつけるとき名付ける人の魔力量によって名付けられる側の能力が決まるのである。
例えば人間族では生まれたばかりの赤子にその国の王様が名前をつければ王子になる素質を得、農民が名付けをすれば田畑を耕す素質を得るのである。
ただし、素質を得るだけで必ずしもなれるというわけではない。
たいていの王様は側室を持つのでそのせいで生まれてくる子供達同士で争うのだが...それはまた別の話。
俺は異世界から来たということになってるので俺自身感じることができないがこの世界では上位の位置に入るほどの魔力を持っているらしい。
そのおかげかエリンはとんでもない成長をしたのだ。
それを知るきっかけとなったのが、名前を与えた直後に草むらから狼が数匹飛び出してきたのだが、数秒もかからずにエリンが瞬殺したのである。
飛びかかってきた狼の隣に俺の目では負えない速度で移動し、気付いたら狼が倒れていた。
「これからは私、”エリン”があなたの右腕となりあなたの剣になる所存です」
ピンク色の長い髪を風に揺らしながらエリンは俺の目の前で跪いた。
こんにちわ!風になりたいです!
小説書くのって難しいですね....人の小説読んでるとどんどん妄想が膨らむのにいざ自分で書くと全く思い浮かばない苦笑
これからも頑張りますので傷だらけの英雄をどうぞ宜しくお願いします!