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望まれぬ英雄 ~虫も殺せない僕が魔王になった理由(わけ)~  作者: 牧田紗矢乃
〈Prologue〉

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1/53

還らぬ者たち

 人間と魔族は、生まれたときから相容れぬ運命にあった。


 魔族の力は人間をたやすく破壊してしまう。

 凶悪な姿は見る者の恐怖心を掻き立て、異形を排除するための暴動を起こさせた。


 醜悪な外見とは裏腹に穏やかな心を持っていた魔族は、困惑しながらも安住の地を求めて人間の棲み家から遠ざかっていった。

 そして、束の間の平和が保たれた。


 しかし。

 互いに大きな天敵もなく過ごしていれば同胞なかまの数も増える。

 新たな土地を求めて居住地を拡大していけば、自然と両者の生活圏が重複しはじめた。


 人間と魔族が暮らす大陸自体の面積は変わらないのだから、当然のことだ。

 両者が接触する地域では小さないさかいが頻繁に起こるようになり、それは次第に激しくなっていった。


 純粋な戦闘能力では、魔族の方が圧倒的に勝る。

 戦い方も知らない田舎の農民たちは、次々に住む土地を追われていった。




 人間側は魔族の王と話し合い、どうにか折り合いをつけようと試みた。

 しかし、王は遠く「世界の果て」と呼ばれる荒れ地に身を潜め、接触すら拒む。

 人間側の話に聞く耳を持たず、固い籠城の姿勢を見せる魔王の前で交渉は決裂したも同然だった。


 そして、一人の主導者の元、魔族討伐のための特殊部隊が創られた。

 選び出されたのは、十人の武術に長けた屈強な男たちだった。

 持てる限りの技術を集結した武器や防具を与え、魔王を討伐するために必要な戦力を整えた。




 意気揚々と出陣していった彼らは、手始めに魔族と人間の居住地の境界を攻めた。


 技巧を凝らした装備の甲斐もあり、一人の死者も出さない大勝利で凱旋を果たす。

 勢いをそのままに、奪われた集落を一つ二つと取り戻していった。


 はじめは困難だと思われた魔族への応戦が可能であるとわかり、人々の表情にも明るさが戻り始めた。


 部隊の人員は次第に増えていき、ついに百を数えるまでになった。

 これだけの人材が揃えば、魔王であってもたやすく討ち取ることができるだろう。


 盛大な声援を受け、討伐部隊は旅に出た。

 立ち寄った都市では彼らを丁重にもてなし、これまでの武勇を讃えた。

 誰しもが彼らの勝利を信じて疑わなかった。




 町に立ち寄るたびに手紙を送ってよこしていた彼らとの連絡が途絶えて、半年の月日が流れた。

 討伐隊の姿が最後に見送られてから半年以上が経ったのだ。


「世界の果て」までどれほどの時間を要するのか、正確に把握している者はいない。

 それでも、あまりにも長すぎるように思われた。




 ――無理はせず、身の危険を感じた時には退くように。


 そう告げて送り出した部隊からの生存の知らせは、何年待てども届きはしなかった。

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