頑張った
「お、はやいな、園原先生」
「…鈴木ィ」
職員室の机にぐったりと伏せていると、この疲れの原因の一部である鈴木先生が俺を見下げていた。
「ん?俺先輩だったよな…」
「くそめんどくさい案件押し付けやがって…!」
「あ、ああ!どうだった、佐藤くん」
「それが!佐藤は女だったんすよ!もーほんと疲れました。昨日も鈴木先生先帰ってるし」
「女の子だったのか?!晃ってのになぁ…ごめんな、ほんとありがとな。で、どうだった?」
「…今日来ましたよ」
「ええ!?ほんとに!」
「はい。俺の家の下まで」
「…すごい懐きっぷりじゃん」
のんきに笑う鈴木先生に若干イラッと来た。
「しかも校長の娘らしいっすね」
「そうなのか…、驚きだらけだな」
「疲れました1限代わりに行ってください」
「俺が国語教師ならなあ」
「…よく言うよ」
「まぁまぁ。元気出して。これ、例の品だよ」
真っ黒の本屋の袋を手渡される。中を覗いてみると、AVが4つ。
「お、おぉ?!??!」
「お疲れさま」
ぽん、と肩を叩かれる。天使のようだ。
「あざーっす鈴木先生!!」
「朝から元気ですねえ」
霧島先生がにこやかにやって来た。
鈴木先生にもらった袋をかさかさと自身の身体の後ろへとさりげなく隠した。
「あの、不登校の生徒を園原先生がねー」
「え?!すごいですね!なんて言ったんですか?」
「…なんかあんまり覚えてねえんだよなあ」
「はは、先生らしいといえば先生らしいですけど」
教職員は校門に立ち挨拶しなければならないので、にぎやかに話したまま校門へ向かった。
*
霧島先生のクラスでの1限の授業を終え、気がかりで隣の鈴木先生の教室を覗くと佐藤はメガネをかけ、熱心に本を読んでいた。
「おーい、なにやってんだ」
「?!な、なんで」
「本読んでると友達できねーぞ」
「…いらんわ」
「ったく、ブックカバーなんてしてヤらしいな。なに読んでんだよ」
ひょいっと本を持ち上げる。
「ちょ、やめ、」
「…おにいちゃんのおちんぽ以外いらないもん♡」
「あっ…あああ」
「…こんなんばっか読んでるから緊張したとき下ネタが出るんだろ!」
「う、うっさい…!こんなんてなんじゃ!立派なエロ漫画じゃ!」
「ああ立派なエロ漫画だよ!中二の男子かお前は」
「あんなえろいことしか頭にない能無しどもと一緒にすんな!!」
「お前その言葉まんまブーメランってことに気づこうな」
「命令だ。今日中に1人、友達をつくれ」
「は!?む、むりじゃ!!」
「できたらエロ漫画買ってやる」
「?!」
鈴木先生と同じ方法だ。こいつにこれが効かないわけがない。
「…余裕じゃ。2冊買ってもらうからな!」
「意外と謙虚だな」
がんばれよ、と言い教室を出た。
声のボリュームがまあまあ大きかったため、一部の生徒に佐藤がこんな奴だとバレてしまっていたのは言うまでもない、か。




