せっ〇す!!
翌日。
すごくボロくもすごく綺麗なわけでもない、俺の大切な住まいのマンションの玄関から出る。生徒たちは登校時間遅いからいいよなあ。
「おはよう、ございます」
「おーおは…ん?!」
そこにはおろしたてのようなピンとした制服を着てもじもじとしている佐藤がいた。
「え?!は?!なんで?!」
「…学校に来い言うたんは誰じゃ。これで私は真の勝ち組じゃ!」
どうやら最後に言った言葉が効いたらしい。
「いや、まあ、それも驚きなんだが…俺の家、」
「ぱぱに聞いた」
「ぱぱぁ?」
「うちの学校の校長じゃ」
「あ…あぁ…?!」
なるほど…、あのクソ親バカ校長め。
「さっきからみっともない顔ばっかじゃ。はよう行くぞ」
俺の一歩前を歩く佐藤。
昨日おろしていた髪はうしろで高めの位置で縛っている。
ポニーテールってやつか。
それにしても、朝から…その、頭が追い付かないぞ。
一旦整理しようか。
佐藤は校長の娘で、不登校だったはずが、今制服を着て俺の目の前にいて学校に向かっていて、なぜか俺の家の下にいた。
「…昨日はあんなに嫌がってたのに」
「学校行くのも行かんのも私の勝手じゃ!」
「ったく…可愛いとこあるじゃねえか」
ぽんぽん、と頭を撫でると佐藤は変な顔をしたが、次第に照れたように俯いた。
「でもわざわざ俺ん家来たら遠回りだろ」
「ひとり…は、まだ、…私には早かったようじゃ」
「んー、まあそうか。勇気いるもんな」
「そうじゃ!もっと褒めるべきじゃ!頑張ったんじゃ!」
「はいはいえらいえらい」
「なんじゃ!適当じゃ!」
「褒めすぎたらおまえ絶対調子乗るだろ」
「乗らんわ!」
「あ、そうだ。昨日聞き忘れてたんだが、なんで不登校だったんだよ」
「せ、せ、せっくす!せっくすううううううあああああああああ!!!!!!!!!せっくすだああ!せっくすせっくすせくろす!せっくす!えっち!」
「は、は?!ちょ、やめろ!黙れ!」
「ハァ…ハア…」
急に大声で下ネタと言うにも低レベルだが大声で言うと、この辺の住民に聞こえるのも問題だし、なにより周りの高校生やサラリーマンに俺が言わせてるみたいに思われるのもつらすぎる。
「ちょ、落ち着けって」
「んぐ…ま、また…やって、しまった…」
「また?」
「…緊張したら、しもねた、とやら、を言ってしまうんじゃ…」
「あ、アホかお前…もしかして、不登校の理由って…ソレ?」
佐藤は口をきゅっと紡いでコクリと頷いた。
「学校が…近づいてきた、から、もう、無理じゃ…とまらん…おちんちん…!!」
「いや、ばか!ばかか!離れて歩け!俺が言わせてるみたいだ!」
「いやじゃ!離れるなクソ教師!きんたまつぶしまくって10個くらいにしたろか!」
「なんなんだよその脅し!…そうだ、これ食っとけ!」
作業で口さみしい時用の大きめのキャンディーを佐藤の口の中に突っ込む。
「お、おっきいよお…きついよお…、ハア…」
「誤解を招く言い方してんじゃねえ!一旦黙れ!」
なんとか学校に着くと俺は佐藤を教室へ送り職員室へ行った。




