先生をした
「…とんだ問題児だな」
「おまえもな!」
腕を組んであぐらをかぐ佐藤。
あ、パンツ見えそう。
「ご両親は?」
「…私は一人暮らしじゃ」
「は!?こんな高そうなマンションに?!」
「ふっ、そうだ。私は人生の勝ち組だからなあ」
「不登校のくせに」
「うっ」
「友達いねえくせに」
「ううっ…」
佐藤は涙目になり顔を俯かせる。
「…聞きたいことは山ほどあるが、単刀直入に言う。明日から学校に来い」
「いやじゃ!なんでじゃ!」
「なんではこっちのセリフだ。なんで来もしないのにこの高校に入学したんだよ。もう2年生だぞ」
「…担任でもないおまえにいう必要ないわ」
「元担任なんだから同じだろ」
「じゃあ、なんで1年の時に来てくれなかったんじゃ!」
「…来てくれなかった?」
「ち、ちがう!今のは言い方まちがえただけじゃ!」
「…ふーん?寂しかったんだろお前」
「寂しいわけあるか!私は勝ち組で幸せな毎日送ってるんじゃ!」
「黙れ引きこもりニート」
「う、うるさい!大体、じゃあ今の担任はなにしてるんじゃ!」
「俺はその担任に言われたから来たんだよ」
「…やっぱりおまえはクソ教師じゃ」
「は?」
「おまえの意思でどうにかしようと思ったことあるんか!言われたから嫌々来て説得できると思ったんか!私はほかの生徒たちと違うんじゃ。特別で、わ」
「べらべら好き勝手言ってんじゃねえよ、クソガキ。なんでただ教師ってだけでお前の面倒見なきゃなんねーんだよ、親と間違えてんじゃねえよ。お前が特別?クラスになじめねえコミュ障が偉そうにモノ言ってんじゃねえよ。」
佐藤は口をぱくぱくさせてこちらを見つめていた。
半泣きだ。というか、泣いている。
罪悪感がないとは言えないけど、間違ったことをしたとは思わなかった。
「…確かに、1年もお前のこと放っておいて好き勝手言われてムカつくだろうけどな。その点は俺も悪かったと思ってる。けどな、自分が学校に行けない理由を人のせいにし続けんのは違うんじゃないか」
ソファに座ってる佐藤の前にしゃがんで、頭を撫でる。
「びびらせて悪かったな。…佐藤が高校生活もバラ色だったら真の勝ち組になれんじゃねえの?」
「!!」
大きく丸い瞳をさらにぱあっと見開く。
「これ、学校からの手紙な。お邪魔しました」
そう言って俺は部屋を後にした。
…なんか教師らしいことをした。しすぎた。すげえ俺のポリシーに反してる気がする。
佐藤の奴、遺書残して自殺とかしねえかな…。
というか、結局不登校の理由が曖昧だな。
そのまま家に直行したかったけど、学校へと戻り残りの雑務を早々に済ませ家路についた。




