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〈6〉石を探せ

 湖に着くと、生徒たちの前に引率の先生たちが立った。

 一年生の担任二人と二年生の担任二人。

 アーディたちの担任ディルク先生と、隣のクラスの美人なエレット先生。


 二年生は割とイカツイ三十代後半くらいの男性教諭、ラハナー先生と、二十代後半らしき眼鏡の女性教諭、モニカ先生だった。

 ラハナー先生がみんなの前で声を張り上げる。鍛えられた体格と肺活量のため、なかなかの声量だった。


「皆、よく聞きなさい。今日はペアを組んでもらった。二人一組で課題に取り組んでもらいたい。まず、二年生。二年生は二人で協力してそれぞれ精霊を呼び出し、後でレポートを提出しなさい」


 ここのように自然豊かな場所であれば精霊は少なからずいる。一年生は精霊を呼び出すような術式はまだ習っていないけれど、二年になったら習うのだろう。


 ちらりと二年生の方へアーディが目を向けるとレノーレがいた。皆同じ体操着だけれど、それでも目立つ。逆に目立たないはずのアーディにレノーレは目ざとく気づき、笑顔で手を振って来た。珍しく髪をひとつのみつ編みにしている。

 そうして、ラハナー先生はコホンとひとつ咳払いをすると続けた。


「一年生は二人一組になってこの湖の中に沈めた青い石を回収しなさい。石は全部で三十個。大体ペアの数ほどにはあるわけだ。けれど、ひとつのペアが何個取ってもいいものとする。よって、もたもたしていたら石は手に入らない。わかったな?」


 サバイバルな内容だった。アーディはヴィルと組んでよかったと思う。こんな内容だったらヴィルは遠慮しては押し戻され、石を手にすることもできなかっただろう。アーディは誰にも遠慮するつもりはない。


「近くにある石は、とある魔術で光るように細工してあります」


 と、エレット先生がその魔術を実演してくれた。陣も割と単調な術式だ。

 手前の湖に青く光るものがあるのが見えた。エレット先生は更なる術式を展開して水に浸かることなくその石を手もとに寄せた。生き物のように自ら飛び出してきた青いガラスのような丸い石を生徒たちに見せると、エレット先生は再びそれを湖の中に放り投げた。

 ディルク先生はにこりと笑って生徒たちに言う。


「他のペアの妨害もしないとね。ただし、肉体を使った妨害は禁止。妨害はすべて水の魔術によって行うこと。それも足止めを目的とせずに相手が気を失うほどのものを仕掛けた場合は失格」


 それを聞いて少し安心した。何せ、その中にヤツが混ざるのだから。 

 石が光る術式は本当に単純なもので、それくらいなら常に発動しておいても負担はないけれど、どうやらあの石はその術式を展開している術者にしか光って見えないようだ。だからどちらか一人が使えばいいというものでもない。


「じゃあ、そういうわけだから開始の合図をしたらスタートだよ。それまでにペアで作戦会議をしておくように」


 一度解散の合図があった。そうしたら、レノーレがすかさずこちらに駆けて来た。


「アーディ」


 と、呼びかけたかと思うと背中から抱きつかれた。周囲がざわざわうるさい。


「レ、レノしゃん。レノしゃんは泳がないのですかにゃー?」


 なんてことをピペルが焦りながら訊ねた。レノーレの水着姿がピペルの楽しみだったのだろう。

 レノーレは軽く小首をかしげた。


「うーん、状況次第ね。一応支度はして来たけど、それどころじゃないかも知れないし」


 二年生は水に浸からなくても課題がこなせる。むしろ、遊んでいる場合ではないのだ。

 ピペルはにゃあぁ、と口惜しそうに鳴いたけれど、望みはきっとまだ捨てていない。

 その時、密着するアーディとレノーレの間にエーベルが割り込んだ。隙間はほぼなかったが、レノーレを引き剥がしてアーディの背中に背中を合わせる。何だこの状況はと思わなくはない。


「二年生がこんなところにいていいのかぁ? それとも落第してアーディと同級生になりたいなんて言わないだろうなぁ?」

「あんたこそ、むちゃくちゃして学園追放されないように――ううん、追放されて早く家に帰った方が学園は平和になるわよね」

「にゃんだぁ? 喧嘩売ってるのか?」

「喧嘩売ってるのはあんたでしょ」


 二人のやり取りに、ヴィルが焦ってまあまあ、と宥めに入る。が、それくらいで二人が引くわけもない。アーディはさっさと二人から離れるとヴィルに目で合図をしてそこから離れた。あの二人に構っていたら作戦会議もへったくれもないのだ。


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