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「そしてこのお茶を淹れてくれたのが、メグ」


レイちゃんが私の紹介までしてくれると、レ―ディアスさんは次に、私に視線を投げた。そして微笑と共に軽く会釈をしてくれた。こっちが緊張して、思わずポッと頬を染めてしまった。美形な上に礼儀正しいのに、レイちゃんは何かが気に入らないらしく、その姿勢を崩さない。何か思うところがあるのだろう。

まぁ、初対面であんなことを言われたら、当然か。私も気を引き締めなくては。


「で?その騎士団長様が何の用なの?」

「それが今回、今になって貴方達を探しあてた理由があります。この世界では、皆が魔力を持ちます。魔力といっても、微々たる魔力の香りを放つだけで、何の能力も発揮しない場合がほとんどです」

「わしの若い頃はの~、魔力で火打石を一度だけ作れた。それも1ヵ月かかってのぅ」


空気を読めない村長の、若い頃の武勇伝はまず、スルーしちゃっていいかな。

これさえなければ、いい人なんだけどなー。


「わがガスケード国の王子は、巨大な魔力の持ち主です。まさに突然変異と呼べるでしょう。そしてその王族の力は、子孫にも遺伝する場合が多いのです」


王子様?そんな雲の上の人の話を急にされても意味がわからない。


「それが私とメグに、どう関係するの?」

「私達は、ずっと探していたのです」


ああ、レイちゃん。レイちゃんと離れ離れになってしまうのだろうか。私の心臓が早鐘をうち、嫌な予感がして冷や汗が流れる。

離さないで、レイちゃんは私の大事な親友で、家族なの……!!

役立たずの私とは違って、魔力の力も絶大なの。その力で王子に対抗だって出来るかもしれない。

でも、連れて行かないで……!!


ああ、緊張から心臓がどくどくいっている。そんな状態のまま、どこか死刑宣告を受ける覚悟でレ―ディアスさんの言葉を待った。

やがて口を開いた彼の言葉は――


「そしてやっと見つけました。――魔力がゼロの女性を」

「え?」

「魔力が尋常じゃない程大きい王子の血と、凡人の血を混ぜるために」


その瞬間、彼は私を見た。予想の斜め上をいく答えを聞いて、喉から変な声が出た。


「……は?」


キラキラと眩しいばかりの眼差しをレ―ディアスさんから受け、私はまたもや間抜けな声を上げた。


「わしが作った火打石は、コップ一杯の水をお湯に変えただけで、ただの石に戻ってのう」


ちょっと村長、頼むから黙って!そんな昔話はあとにして!!


「ええっと、ですね……」


私はレ―ディアスさんの言葉を胸で反芻する。この場にいる人物で、一番凡人と言えば私しかいない。魔力が使えるレイちゃんは凡人であるはずがない。村長は……まあ、この話からは除外しておく。

しかし、彼が言った台詞は、何それ―!!足して2で割りゃ、平均みたいな考え―!!

けどそれって、つまり……


「わ、私には関係ないと思うのですが……」


びくびくしながら尋ねると、レ―ディアスさんはにっこりと微笑んだ。


「魔力、ゼロですよね?メグさん」


――それは、眩しくて一瞬目がくらむほどの、実にいい笑顔だった。


「ちょっと待ったー!!」


呆気にとられている私の横で、叫んだのはレイちゃん。素早い反応は、さすがだわ。


「何それ、何それ!!?今、何て言った?この国の王子だか、なんだかよく知らないけど、魔力が巨大すぎる?だから魔力ゼロのメグと結婚したい?何それ?冗談じゃない理由よ!!」


頭に血が上ったレイちゃんは、一気にまくしたてた。


「そこに愛もなければ、本人が迎えにくる訳でもない。そんなんで、許されると思ってる?そんなの、まるっきり子孫を残す、道具としか見てないじゃない!!」

「ですが、王子の血を混ぜねば、暴走し、国が破滅するかもしれません」

「それなら独身主義を貫け!!」


レイちゃんは騎士団長相手だというのに、遠慮がない。とても頼りになれけれど、不敬罪に問われないのか、ちょっとビクビクしてしまう。


「残念ながら王家の血筋を途絶えさせる訳にはいきません。それにまだ、メグさんで決まった訳ではありません。魔力の微少な令嬢を集めている最中ですので」

「じゃあ、わざわざメグを探し当てなくても良かったじゃない。王都に帰って、『そんな女性はいませんでした』って報告すれば、済む話じゃないの?」


レイちゃんの鋭い指摘に、レ―ディアスさんが、困ったように眉根を寄せた。


「先程も言いましたが、異世界人は報告義務があります。しかし、私は初めて見たのです。魔力ゼロだという人間を」

「……そうですか」


どこか珍しいものを見るようだけど、私はこれが至って普通だから。そもそも魔力が強いかなんて、わからないし。

そういえば、レイちゃんが前に言ってた。『魔力って匂いがするんだよ。力が強ければそれだけ香りも強い』

魔力の匂いってなに?口で説明するものではなく、感覚だと言われてしまえば、私にはもうお手上げ。未知の世界。


「レイさん、次に質問しますが、どうしてあなたの魔力は……」

「知らない。この世界に来て、いつの間にか使えるようになっていた」

「いつの間にか……」


質問した彼は言葉を失くし、何かを考え込んでいた。


「そもそも、あなたの魔力は膨大です。そのレベルでは、王都で保護されるほどでしょう。力を制御できずに、己の力を見失い、暴走した挙句、周囲を巻き込み死に至る例も過去にあったそうなので」

「大丈夫だって。そんなにたいしたことじゃない」

「……いや、ここまで膨大な魔力を持つとは」


そう呟いたレ―ディアスさんに、レイちゃんは怪しむ眼差しを向けた。


「で?単刀直入に聞くけど、私達をどうする気?!」

「一緒に王都へ……」

「それは無理、断わるわ」


レイちゃんが彼の誘いを断った、というよりぶった切った。


「私達、何もわからない世界に二人っきりで迷い込み、畑を耕し、村人たちとコミュニケーションを取りながら、必死にここまできたの。三年間、この地で生きて行こうと必死に頑張った。この暮らしをあっさり捨てて王都に行き、メグが幸せになる保証なんて、どこにもない。田舎者が何しにきたのと、虐められて泣かされてホームシックになって、泣く未来が視えているわ」


やっぱり、レイちゃんはすごい。こんな時、レイちゃんは自分の考えをズケズケといえる。

私の考えを代弁してくれる彼女は私にとって眩しい存在で、とても頼もしい親友だ。


「そうですか……」

「ええ、そうよ!」


レ―ディアスさんはそんなレイちゃんの勢いに圧倒されたのか、うつむいた。美麗な顔に陰が落ちる。

少しの沈黙のあと、深いため息をついて顔を上げた。


「支度金として、1000ペニー用意しておりましたが――残念です」

「あ、やっぱり行きます」


その瞬間、私はガクッと肩を落とした。


美人で強気で優しくて、言いたい事は遠慮なく言うレイちゃん。


……けど、お金に弱いのがたまにきず。

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