プロローグ
「――見つけた」
突如、低音の声が周囲に響いた。
ハッと我に返って振り返れば、そこにいたのは、優しく微笑む男性だった。
その眼差しは私と、隣に並ぶ親友のレイちゃんに向けられていた。
見つめられたら、思わずうっとりしてしまいそうな、そんな誰もが見惚れるほどの容姿をしている男性。
身なりのいい騎士を思わせる服装に、一瞬目を奪われるぐらいの整った顔立ち。
遠目でもわかる金の髪は光を浴びて輝き、グリーンの瞳はやや色素が薄い。
どこか中性的で優しげな雰囲気を持つ男性が目を細め、私達を見つめて微笑む。
「――探しましたよ」
彼の声は低く、だけど重くて力強い、そしてよく響く声だ。
彼の呟いた言葉を聞いた私は、思わず身震いをする。
隣で呆けているレイちゃんの手を強く握ると、私はその手を力任せに引っ張った。
「ちょ?ちょっと、メグ!?」
慌てるレイちゃんの意見も聞かず、私達の後方に建つ家の中へと入る。
正確にいえば、レイちゃんを急いで押し込めたのだ。でもきっと、こんなことをしても無駄。隠せるはずがない。私の本能はそう悟っている。
だけど今はあの男性の視界に、レイちゃんを入れたくないと思ったのだ。
「どうしたのよ、メグ?」
訳がわからない様子で私の顔をのぞき込むレイちゃんを尻目に、私は扉に寄りかかる。
あの男性はいったい、どこから来たのだろう。
ふと疑問に思うけれど、本当は解っている。知ってて気づかない振りをしていたいのだ。だけど男性の姿を前にすれば、もう認めざるを得ない。
――レイちゃんを連れに来たのでしょう?
ついに来てしまったのだ。私が恐れていた、この日が。
この平穏な日々が壊れてしまう予感がして、私の体が震えた。
これまでの楽しい日々から、これから起こると予想される波乱を覚悟して、私は目をギュッと瞑った。